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日光にあたることも大事

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第一章

               日光にあたることも大事
 小説家で実家で暮らしている佐賀武蔵にだ、母の寿々子はいつも言っていた。
「いい?晴れたらよ」
「外に出ろっていうんだな」
「そうよ」
 その丸い顔で言うのだった、目も丸く黒髪をおかっぱにしていて唇は小さい。背は一五一位で年齢を感じさせないスタイルである。
「しっかりとね」
「それで散歩しろっていうんだな」
「晴れていたらね」
「運動なら毎日してるのに」
 佐賀は母に憮然として返すのが常だった。
「それでもかよ」
「ジムでよね」
「泳いでな」
「あのね、室内でのスポーツもいいけれど」
 母はそんな息子に言うのだった。
「しっかりとよ」
「外に出てだよな」
「お日様の光にあたらないとね」
 そうしなければというのだ。
「駄目なのよ」
「そうだよな」
「それはそれで栄養になるし」
「ビタミンD貰えてな」 
 日光を浴びることによってだ。
「骨にもいいよな」
「それによ」
 母はさらに言うのだった。
「気持ちとしてもよ」
「明るくなるんだよな」
「鬱病になっても」
 それでもというのだ。
「お日様の光にあたるとよ」
「かなりいいよな」
「このこともあるし」
「晴れていたらか」
「お外に出てよ」
 そうしてというのだ。
「日の光に当たりなさい」
「俺はずっと部屋の中で仕事する仕事だからな」
 佐賀は自分で言った、細面で小さな目と唇である、黒髪はややぼさぼさとしていて一七二位の身体で水泳をしているだけあって引き締まっている。
「運動はしていてもか」
「お日様の光もよ」
「あたるべきなんだな」
「そうよ、身体にとっても心にとってもね」
「俺の作品基本明るいけれどな」
 そうした作風だがというのだ。
「やっぱり暗い場面も書いたりするしな」
「そんな時ずっと日の光浴びてないとよ」
 そうした状況ならというのだ。
「そのまま落ち込んでね」
「鬱にもなるか」
「そうならなくて気が滅入るでしょ」
「そういえば雨が多い時そんな場面書いてそうなったよ」
 佐賀もそうなったことを話した。
「実際にな」
「そうならない為にもね」
「ちゃんとか」
「そうよ、晴れていたらよ」
「日の光浴びるべきか」
「いいわね」
「仕方ないな」
 多少嫌々ながらもだ。
 佐賀は母に言われて晴れるとそうしていた、そして。
 身体も心も健康的に仕事をしていった、その彼を見てだった。結婚して独立している姉の熊本有紀母親そっくりの彼女は実家に夫と息子を連れて帰って来た時に言った。
「小説家にしては日焼けしてるわね」
「それで健康的だよな」
「ええ」
 そうした外見だというのだ。
「実際そうでしょ」
「お母さんにいつも火の光にあたれって言われてるからな」
「お父さんには言われないわね」
「お父さん仕事で日中家にいないからな」
 それでというのだ。
「言うのはお母さんだよ」
「そうなのね」
「いや、俺はさ」
 佐賀は姉に言った。 
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