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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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狩猟豹の頭

 
前書き
現在の大魔闘演武一応プランが二つあるけどどっちにしてもハチャメチャ時間がかかるのだけはわかる← 

 
「どうします?」
「そうね」
「うーん」

早速この競技への参加者を決めるためにと集まった俺たちだったけど、誰が出るか頭を悩ませる。それには大きな理由があった。

「前回の参加者が決まってからルールを説明されるのもあれですけど・・・」
「ルールがわかるとそれはそれで難しいですね」

競技名から出場する人を決めた前回とは異なり、今回はすでにルールがわかっているため選出は楽かと思ったけど、条件はどこも同じ。そうなるとどのチームももっともこの競技に最適だと思われる人が出てくるのが予想されるため、下手な人選をすると最下位スタートなんてことになりかねない。

「さて、誰が出るのが適任だと思う?」

俺たちの隣ではエルザさんたちも同様に悩んでいた・・・と思ったんだけど、それはたった一人の言葉で消し去られる。

「俺だ!!俺に行かせろ!!」

そう言って名乗りを上げているのはナツさん。彼の性格からしてこう言うのはいつものことだが、今回に関しては状況が違う。

「ナツならいいかもしれねぇな」
「あぁ。根性だけは一丁前だしな」
「根性だけだと!?」
「やんのかコラ!!」

競技前なのに掴みあっているナツさんとガジルさんをエルザさんが引き離す。確かに今回の生存(サバイバル)ならナツさんは適任なのかもしれない。バトルという面から見ても、耐久力という面から見ても。

「よし、任せるぞ、ナツ」
「おう。任せておけって」
妖精の尻尾(フェアリーテイル)からナツ!!』

ナツさんの名前がコールされた途端、会場が熱気に包まれる。イシュガルでもっとも有名な滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)と呼ばれているくらいだし、知らない人はいない彼が参加するとなれば沸くのも当然か。

「ヒック。一番最初に名乗り出てやろうと思ってたのに、先を越されちまったぜ」

その直後、予想外の人物が前に出てきて俺たちは目を見開いた。瓢箪を片手に顔を赤くしながら、フラフラとした足取りで前へと出てくるのは猟犬が誇る絶対的なエース。

『バッカスです!!四つ首の猟犬(クワトロケルベロス)からはバッカス!!』

初手からエースを投入してきた猟犬に会場はさらに沸き上がる。そしてこれにはまだ選手を決めれていないチームは焦りを感じていた。

「ナツとバッカスか」
「いきなり飛ばすね」
「これは様子見とはいかなくなったかもね」

青い天馬(ブルーペガサス)のレンさんたちも誰が出るのか決めかねている様子。無理もない、この二人じゃ下手な人選をすると序盤で勝負が決まりかねないのだから。

「俺が行きます」

顔を見合わせどうするか話し合っている天馬。そんな中手を上げたのは飛び抜けて背の高い青年だった。

「いきなりお前を出すのか」
「でも、仕方ないよ」
「そうね。タクトなら間違いないわ」
「愛のある戦いを期待してますわ」
青い天馬(ブルーペガサス)からはタクト!!』

これまたエース格の登場に沸き上がっていた会場が一転、ざわつきへと変化する。出場回数に制限がある今回、それなのにどこも惜しげもなく戦力を投下してくるということがどれだけこの初戦が大事なのかを物語っていた。

「それなら俺が・・・」
「待って」

ここまで戦力が出てくるとうちも誰を出すか迷ってしまうが、ここは俺が出た方がいいと思い手を挙げようとしたが、ミラさんに制止される。

「私が出るわ」
「え?」
「ミラさんが?」

まさかのミラさんが自分から名乗りを上げたことに驚きを隠せない。そんな俺たちの様子を見て、彼女は続ける。

「出られる回数に限りがあるから、シリルをこんなに早く出すのは勿体ないわ。それに・・・」
「それに?」

普段からは想像もできないほどの真剣な表情。しかし、その直後に見せた彼女の表情は真逆だった。

「私、こう見えて元S級魔導士だから」

まるで少女のような可憐な笑みでいたずらっぽくそう言った彼女に顔が熱くなる。それは俺だけではないようで、ルーシィさんとジュビアさんも赤くなっていた。

「・・・シリル、あとでお説教ね」
「えぇ!?」

しかし後ろからの死刑宣告にその感情は消し飛んでしまった。ウェンディ俺に対して厳しすぎない!?あと顔がめっちゃ怖いんですけど!?

『フェアリーガールズからはミラ!!』
「いや呼び方!?」

妖精の尻尾(うち)が二チーム出てるからということなんだろうけど、その呼ばれ方は勘弁してほしい。主に俺が参加する時だけど。

「わぁ!!ミラさん出るならソフィアも出る!!」
「いいのか?一人しかいないぞ?」
「いい!!誰も出ない競技に出るよりいい!!」
人魚の踵(マーメイドヒール)からはソフィア!!』

ミラさんが出てきたことで手を挙げたのはソフィア。どう見ても下心しかなさそうな彼女だけど、うちのチームがある限り女性が誰も出ない競技はないんだよなぁ、いや俺が出た場合はその限りではないけど。

「こりゃあ純粋なバトル競技になっちまうか?」
「そう記憶しておいた方がいいかもしれないね」

いまだに選出ができていない剣咬の虎(セイバートゥース)。グラシアンさんとルーファスさんはそんな話をしていたけど、その考えを否定するものがいた。

「いや、この競技なら俺がいい」

そう言ったのはローグさん。普段自分から名乗りを挙げることがない彼がそんなことを言い出したことで剣咬の虎(セイバートゥース)の皆さんは顔を見合せた後、その理由を問いかけていた。

「何か策があるのか?」
「策というよりも、俺の魔法なら・・・」
「「「「「あ!!」」」」」

その一言で全てを理解した様子の皆さん。何が彼が見出だした攻略法なのかわからず耳を澄ませていると、彼らはそれに気付かず話し始めた。

「ローグなら影になれる」
「影になれば大概の攻撃は当たらんなぁ」
「それにその状態は手がついているとは言えません」
「つまり最短で120秒を消化できるというわけだね」
「そうだ」

どのギルドもナツさんとバッカスさんに連れて力のある魔導士を投下する中、彼らだけはこの競技を頭脳で戦おうとしているらしい。

剣咬の虎(セイバートゥース)からはローグ!!』
「どうする?リオン」
「どこも初戦から本気だな」
「オオーン」
「うちも飛ばさないとダメかもしれないですね!!」

選手を決めかねている蛇姫の鱗(ラミアスケイル)。いや、彼らが決めかねているというよりも、リオンさんが何かを考えすぎているようにも見える。

「俺が行こうか?リオンくん」
「・・・いや」

ようやく考えが纏まったのか、リオンさんはある人物の方へと視線を向ける。

「行けるか?トビー」
「オオーン?」

選ばれたのはまさかのトビーさん。この人選は予期していなかったけど、それはレオンたちも同じようだ。

「どういうこと?リオンくん」
「トビーなら攻略できる何かがあるの?」
「そんなわけないであります!!」
「サクラふざけんなよ!!」
「キレんなよ」

サクラの物言いはいつものことだからいいとして、リオンさんは何かをトビーさんに見出だしたわけではない様子。彼は横目であるギルドを見ていた。

「気付かなかったか?」
「何が?」
「あいつら・・・この選手選出が始まってから一度も話し合いをしていないんだ」
「「「「「え?」」」」」

リオンさんが言っているのはどうやら狩猟豹の頭(チーターヘッド)のことらしい。言われてみるまで気が付かなかったけど、彼らはこちらの参加者のことを見ているだけで、ギルドの仲間同士で話し合っている気配がまるでない。

「あいつらは何かある・・・それが何かはわからないが」

そう言ったリオンさんの目は険しいものになっていた。それを受け、トビーさんもまた彼の提案を受け入れているようだった。

















第三者side

蛇姫の鱗(ラミアスケイル)からはトビー!!』

残る参加者はあと一人。その選出を行うギルドはここでようやく口を開いた。

「狙いはナツとタクトね」
「下手な奴が出てこなくてよかったな」
「予定通り任せるぞ、シルフェ」
「あぁ」
狩猟豹の頭(チーターヘッド)からはシルフェ』

現れたのはかなり細身の人物。その男の視線は一人の人物へと注がれていた。

「ん?」

その視線に気が付いたナツは彼の方を見る。ナツの瞳に映るその男はどこか笑っているように見えた。

「あいつ・・・やっぱりどこかで・・・」

















ここは会場が見渡せる観客席。その中でも彼がいるその場所は、いわゆるVIP席と呼ばれる限られた者しか入れないところとなっている。

「いよいよ始まるなぁ」

参加者以外の魔導士がそれぞれの控え場所へと移動していくのを待っている会場。まもなく始まる競技を最前列で見ているその男の笑みは他の者とそれとは一線を引いていた。

「ゴッド大丈夫なのか?こんなことをして」

彼のその後ろから現れた茶色に近い金色の髪をした男。その問いを受けた青年はニヤリと笑みを浮かべる。

「何度だって言ってやる。これは必要悪さ」
「それが本当に大丈夫なのかと聞いておるのだ、オイ」

苛立っている様子の背の低い腰の曲がっている老人。彼らの後ろにいる吸血鬼のような格好の男と木のような姿をしている老人も不安さを隠しきれずにいた。

「まぁ・・・ミスれば大変なことになるだろうな」
「だったら・・・」

スキンヘッドのアゴヒゲを蓄えた男も不安さを隠しきれずにいると、それを赤色の髪の青年は手で制した。

「いざとなれば俺が全ての責任を負ってやる。オメェらは黙って見てろ」

そういったカミューニの目は真剣そのものだった。彼の目に映るのは桜髪の青年と誰よりも背の高い美青年。

「まずはナツとタクトだ。しっかりやれよ」

ニヤリと笑みを浮かべ仮面の男へと視線を向けるカミューニ。その後ろにいる男たちは不安と緊張からか準備された飲み物にも手をつけず、ただ静かに見守ることしかできなかった。


















シリルside

それぞれの控え場所へとやってきた俺たち。それを確認するとチャパティさんがアナウンスを行う。

『準備が整いましたのでこれより大魔闘演武一日目競技パート・生存(サバイバル)を開始します!!』

その言葉と共に上空へと映し出されるタイマー。さらには参加者全員の頭の上にも数字が表示され、銅鑼が叩かれると同時にその両方がカウントダウンを開始する。

「始まった」
「どう動くのかしら」

カナさんとルーシィさんがそう言いながら全員の動きを確認する。ただ、最初は様子見だからなのか、誰にも動きは見られない。

「先手必勝!!」

そう思っていた。ただ、開始わずか数秒で炎を手に纏ったドラゴンが特効を開始する。

「火竜の翼撃!!」

ドラゴンの翼に見立てた炎がすぐそばにいたトビーさんとバッカスさんへと迫る。

「オオーン!!」

あまりの不意打ちに完全に警戒を怠っていたトビーさんはそれを食らって地面へと倒れる。それにより彼のタイマーは一時的に停止していた。

「おお、いい炎だな」

そんな彼とは正反対に華麗なステップで炎を開始したのは酔いの鷹の異名を持つ男。その際に手が地面についたことで若干カウントに遅れが出たものの、許容範囲だろう。

『ナツだぁ!!まず仕掛けていったのは妖精の尻尾(フェアリーテイル)のナツ・ドラグニル!!』

いきなり盛り上げてくれる彼の行動に観客たちも沸き上がっている。それを聞いて彼は呑気に手を挙げて答えていたが、その後ろから不自然な影が近づいていることに気が付いていない。

「影竜の斬撃!!」
「おわっ!!」

無防備になっていたナツさんにローグさんは躊躇いもなく攻撃を仕掛ける。それによりバランスが崩れかけた彼だったが、なんとか踏み留まっていた。

「やるな、ローグ」
「お前が油断しすぎなだけだ」

序盤は何も動きがないものだと思っていたけど、ナツさんが仕掛けたことにより目まぐるしく展開が動いてくる。そしてそれに便乗して動いた少女が一人。

「ミラさ~ん!!」
「キャッ!!」

自身も動くべきか迷っていたミラさんだったけど、そんな彼女の背後から近付いたソフィアはミラさんのふくよかなそれを鷲掴みにしている。それを見ていた観客たちはこれまでにない大歓声を送っていた。

「うわぁ、すご~い」
「このっ・・・」

以前よりもさらに大きくなっているように感じる彼女のそれをまさぐり感嘆の声を漏らしていた少女。そんな彼女に肘打ちを放ったミラさんだったが、ソフィアは咄嗟に彼女の胸から手を離しその腕の上を飛び越える。

「ミラさんすごいです!!カグラさんの次くらいに柔らかいです!!」
「ど・・・どうも」

顔を赤くして胸元を隠しているミラさん。ソフィアの発言に激おこな女性の声が聞こえてきたけど、俺たちは知らないフリをしておこう。あとで大変なことになるのはソフィアなんだし。

「お前痛いんだよ!!」
「おっと」

女性同士のじゃれ合いの最中、ナツさんたちもさらに熱を帯びた戦いをしていた。トビーさんも怒りの反撃を行うが交わされ、バッカスさんとタクトさんも互いに体勢を崩すべく次々に攻撃を繰り出している。

「カッカッカッ!!今の俺は無敵だぁ!!」

そんな中、ナツさんは次々に放たれる攻撃を回避しながらも相手に攻撃を加えダウンを取る無双状態。現時点でいまだに体勢を崩しておらず、タイマーのロスが一切なかった。

「くっ・・・」
「オオーン・・・」

戦略的に勝利を取ろうとしていたはずのローグさんも熱くなっていたのかタイマーに遅れが出ている。トビーさんなんかこのままいけば最下位になりかねないほどの差を付けられていた。

音楽魔法(ミュージックマジック)・・・運命!!」
「ぐおっ!!」

そしてこちらも流れを掴んだものがいた。力の源である酒瓶を手元から落としているバッカスさんはそれが気になっているのか、動きにいつものキレがない。それを生かしてタクトさんが次々に攻撃を仕掛け、彼のタイマーとの差を付けていた。

「現時点での一位はナツとソフィア。時点にミラか」
「ミラさん!!頑張って!!」
「ソフィアを倒してください!!」

ナツさんは力業で、ソフィアは自慢の柔軟性でいまだにタイムロスがない。ミラさんもほとんどロスはないけど、ソフィアに一太刀を入れるのは相性的に難しいか?

「このまま俺の勝ちだな!!」
「そいつはどうかな」
「!!」

このままナツさんとソフィアが逃げ切るかと思われたその時、突然嵐のような突風が巻き起こった。

「「どわああああああ!!」」
「「「うわああああああ!!」」」
「「きゃああああああ!!」」

離れたところにいる俺たちにも襲いかかるほどの風。それを放った黒いローブに身を包んだ仮面の男は、壁に叩きつけられているナツさんを見据えている。

「この程度か、ハエめ」
「てめぇ・・・」

ここまで順調にカウントを減らしていたナツさんだったがここに来てそれが止まる。しかしすぐさま立ち上がった彼は、その攻撃を放った人物へと視線を向けていた。

「あの人・・・」
「ん?どうしたの?ウェンディ」
「ううん。何でもない」

ナツさんが対峙している人を見て何かを感じた様子のウェンディ。ただ、それを話してはくれなかったため何なのかはわからなかったけど。

「フンッ」

ナツさんの残りタイムは60秒を切っている。対してこの人もここまで全く戦いに参戦してこなかったからか同じタイムでのカウントダウンとなっている。残り時間が少ないから、男はすぐさま攻撃を行った。

「燃えろぉ!!」

巻き上がる竜巻に対して炎で対抗するナツさん。ただ相性が悪いのか、シルフェが放った風がナツさんを襲った。

「うわあああああああ!!」
「「ナツさん!!」」

見たこともないほどの威力の風により打ち上げられた彼は地面に叩きつけられる。すぐさま起き上がろうとしたナツさんだったけど、ダメージが大きいのか膝をついたまま立ち上がれない。

「何今の風!?」
「ウェンディ・・・いや、ラミアのシェリアよりも強力な風だ」
「二人のは天空魔法ですけどね」

タイマーが止まっているナツさんに対し狩猟豹の頭(チーターヘッド)のシルフェカウントダウンはみるみる減っていく。このままだとあいつが一位通過になる。

「面白ぇ魔法使うじゃん、お前」

ただ、それを阻止しようと動いたのはバッカスさんだった。彼もシルフェの攻撃の巻き沿いを食らった際に自身の酒瓶を取ることに成功したらしく、先程よりも動きが不規則で次が予測できない。

「おおら!!」
「くっ」

それに反応しきれず拳を受けたシルフェは手を付く。そのおかげでわずかな時間ではあるが彼のカウントを止めることができた。

「お前には用はない」
「あん?」

すぐに立ち上がると思われたシルフェ。しかし彼はなぜかなかなか立ち上がらない。そのためカウントが一向に減らないが、彼には焦りは一切見られなかった。

「消えろ」

素早く手を動かし魔法陣を書き上げたシルフェ。すると彼の脚に風が纏わりつき、それをバッカスさんの腹部目掛けて放つ。

「見えてーーー」

しかしバッカスさんの動きは早い。すぐさま対応してそれを受け止めようとした。だが、それ以上に彼の蹴りが早く、バッカスさんの腹部に突き刺さる。

「ごはっ」

口から血を吐き出し倒れ込むバッカスさん。しかし彼のすぐ後ろから今度は長身を生かしたリーチのある青年が飛びかかる。

「そこ!!」

全体重を乗せた攻撃を放った直後に正面から突っ込まれたことでタクトさんの拳は見事に決まった。ただ、タイミングを合わせるためか魔法を使っていなかったため、決定打にはなりえない。

「炎竜王の・・・」
「!!」

しかしそれで十分だった。後ろから襲いかかるのは炎の竜。彼は全身ボロボロの状態にも関わらず、自身の全力を打ち出すべく渾身の一撃を放とうと飛びかかる。

「崩拳!!」

真上から振り下ろされる拳。完全に攻撃の対象にされているシルフェはそれに気が付き振り向いた。

「?」

食らえばひとたまりもないほどの威力が込められているのが遠目から見てもわかる。それを目の前で見ている彼もわかっているはずなのに、彼の口元は緩んでいた。

「見えるな、限界が」

ボソリと何かを呟いた彼は向かってくるナツさんにあろうことか自身も飛びかかる。しかし先に動き出していたナツさんの方が有利なはず。これは判断ミスだとその場にいた全員が思ったことだろう。

翠緑迅(エメラ・バラム)

誰にも聞こえないほどの小さな声。いや、聞かれないようにしているのかと思われるそれで何かを呟いた直後、両手の人差し指と中指を立て、それを重ね合わせてナツさんへと向ける。

「!!」

ナツさんの拳がシルフェの頬を捉える直前、強烈な爆発音と突風が彼を包み込んだ。

「なっ・・・」
「ナツ!!」

身を乗り出し彼の名前を叫ぶルーシィさん。煙が晴れて姿を見せた二人は互いに膝をついていた。

「お前・・・やっぱり・・・」
「悪いな・・・」

双方ともにボロボロの身体。しばらくしてそのうちの一人がゆっくりと立ち上がった。

「俺の勝ちだ」

そう言って相手を見下ろしておるのはシルフェ。何かに気付いたナツさんだったがそれを確認することもできず、彼は白目を向きながらその場に倒れ込んだ。





 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
安定のカマセ役にされる原作主人公のナツですが、まぁそんな日もあります←いつもだろ
次もこの競技が続きます。この競技中にもう一つやらなければならないことがあるので。 
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