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死んだと聞いても何も

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第一章

                死んだと聞いても何も
 ふとだ、国崎家の息子である洋介は家の中で父に言った。
「あの連中どうなったんだ?」
「誰だ、あの連中って」
「ふわりの前の飼い主共だよ」
「ああ、あの馬鹿共か」
 父の文太は嫌そうに応えた。
「禁治産者になってそれからは酒浸りのか」
「あの連中だよ」
「ずっとあの家にいるぞ」
 文太は素っ気なく言った。
「どうも今もな」
「酒浸りでか」
「二人でまともに家事もしないで家も荒れ放題でな」 
 そうした状況でというのだ。
「もうな」
「ゾンビみたいになってるんだよな」
「外見もそうらしいな」
「そうなんだな」
「もうどうでもいいだろ」
 父は息子に言った。
「ふわりも娘さん達も引き離したしな」
「親権放棄させてな」
「そうなったからな」
 だからだというのだ。
「もうな」
「ゾンビみたいになってか」
「それでな」
 そのうえでというのだ。
「あそこでな」
「いるだけか」
「仕事も出来なくなったし誰からも相手にされなくなったんだ」
 ふわりの前の飼い主達はというのだ。
「禁治産者になって縁切りもされてな」
「それで行いがご近所にも知れ渡ってか」
「そうなってな」
「もう誰からも相手にされないでか」
「そのまま死ぬだろうな」
「恰好悪いもんだな」
 洋介は父の話をここまで聞いて冷めた顔と声で言った。
「それはまた」
「あの連中には相応しいだろ」
「ああ」 
 そう言われても否定しなかった。 
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