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男らしくとはどういうことか

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第二章

「男らしいな」
「どのお仕事も女の人もいるけれどね」
「ああ、けれどな」
「自衛官の人達は男らしいって思ったのね」
「誰かを守って助けることがな」
 そうした行いそしてそれをさせる気構えがというのだ。
「男らしいっていうんだな」
「そうね」 
 母も否定しなかった。
「それを言ったらお父さんもよ」
「父ちゃん線路の修理やってるな」
「線路を修理しても電車使う人を守って助けてるでしょ」
「そうだよな」
「それならね」
「同じか。父ちゃんも男らしいか」
 奈良はこのことにも気づいた。
「そうなんだな」
「そうよ。男らしいっていうのは」
 その言葉が意味するものはというのだ。
「誰かを守る、助けることよ」
「そういうことか」
「喧嘩が強い、力があるとかはね」
「男らしいんじゃないな」
「そうよ、だからね」
 それでというのだ。
「あんたもね」
「そうした人にならないと駄目だな」
「お父さんや他の人みたいにね」
「自衛隊や警察の人みたいな」
「そうした男らしい人になってね」
「そうなるよ」
 奈良は母に決意の言葉を告げた、そうしてだった。
 実際にそうなる様に努力していった、高校大学と進み自衛隊に入隊した、そしてこの組織で人を助け守る為に働いた。
 そして実家に帰った時にOLになっていた妹に言われた。
「平穏先生いたでしょ」
「あのお前男かとか言って生徒を殴ったりしてた先生だな」
 奈良も覚えていた。
「あの人か」
「あの人その言葉と暴力が問題になって」
 そしてというのだ。
「懲戒免職になったわよ」
「当然だな、暴力なんて論外だろ」
 奈良はここまで聞いて言った。
「まして男かとかな」
「性差別よね」
「差別なんて論外だからな」
「そうよね」
「自分より体格も立場もない生徒に暴力振るってな」
 即ち反撃出来ない相手に対してだ。
「男か女かとか言うのが男らしいか」
「違うわね」
「ああ、そんな筈ないからな」
「それで問題になってね」
「クビか」
「そうなったわ」
「自業自得だよ、何勘違いしてるんだ」
 奈良はその教師についてはこう言って終わった、そして妹と両親に自衛隊の話をした。そこには確かな男らしさがあった。


男らしくとはどういうことか   完


                    2023・6・21 
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