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X ーthe another storyー

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第二十二話 姉妹その十一

「それは」
「そうね、ご両親も声をかけてくれるわね」
「お家の中では。皆私に声をかけてくれるわ」
「貴女は無機質でも意地悪も悪戯もしないし聞いたら答えてくれるからよ」
 颯姫はそうした人間だからだというのだ。
「話しかけもするのよ」
「それで私は孤独でないの」
「姉さんよりはね、姉さんはずっと家族といっても」
「私とは違ったの」
「周りからかしづかれるばかりで」
 そうした状況でというのだ。
「あのお務めをしてきたのよ」
「夢見、そして贄ですね」
 哪吒が言ってきた。
「そうですね」
「ええ、よく帝王は一人だというけれど」
「あの方もですか」
「そうよ、一人だったのよ」
「そうだったのですか」
「颯姫が孤独とは私は思わないけれど」
「思ってくれてもいいわ」
 これが颯姫の返事だった。
「何とも思っていないから」
「それはまたね」
「私が孤独でないから」
「思えるのよ、それに貴女は今ここにいるでしょ」
「地の龍の中に」
「そうであるだけにね」
「孤独でないのね、私は」
 庚に顔を向けて彼女に問うた。
「そうなのね」
「そうよ、姉さんはかしづかれるだけでいつも周りに特別に思われて」
「あの人だけなの」
「一人だけだから」
 それでというのだ。
「孤独をね」
「いつも感じている」
「それは辛いことよ」
「何かです」 
 哪吒は考える顔で述べた。
「孤独がどれだけ辛いかは」
「貴方はわからないのね」
「どうも。僕は今は」
「こうして私達といてね」
「お家に帰ればお祖父様がおられて」
「学校でもよね」
「クラスの皆がいてくれて」
 それでというのだ。
「全くです」
「孤独でないわね」
「はい」
 庚に答えた。
「全く」
「寂しい、孤独と感じて」
 庚はさらに言った。
「それがずっと続くことはね」
「辛いのね」
「地獄にいるということよ」
「孤独という名の地獄に」
「誰にも。私にもね」
 後半の言葉は少し自嘲気味に言った、だが。
 庚はその言葉を今いる誰にも聞こえないまでに小さな声で話した。そのうえでこう言ったのだった。
「どうにも出来なかったわ」
「あの人については」
「そうよ、私は貴方達を孤独にするつもりはないから」 
 地の龍の者達に話した。
「安心してね」
「それは有り難いことです、ではです」
 遊人も言ってきた。 
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