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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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本番の始まり

<バラモス城>

「あ、あの…リュカさんは何故嬉しそうじゃ無いんですか?」
喜び騒ぐアルル達を余所に、リュカは周囲を見渡し渋い顔をしている。
大好きなリュカとも喜びを分かち合いたいハツキは、リュカの不審な態度を疑問に思い尋ねる。

「リュカさん…何か問題でも?」
「ん!?……うん……ちょっと……」
リュカの歯切れの悪い返答に、騒いでいたアルル達も静まり注目する。
「ど、どんな問題があるんですか!?バ、バラモスは倒したんですよ!そうやって私達を脅かして楽しんでるんでしょ!」
喜びに水を差すリュカの態度が気に入らず、つい声を荒げてしまうアルル…

「アルル達は妙だと思わないのかい?」
ヒステリックに大声を出すアルルを気にすることなく、リュカは自分が感じている疑問を口にする。
「妙って…何がですか?」
「気配だよ、気配!ティミーは感じないのか?」
リュカの言葉にティミーもアルルも今一ピンときてない様子。

「お父さん、もっとハッキリ言った方が良いと思います」
「はぁ…周囲の気配を探ってみろ!殺気だった気配があるだろう!」
「そりゃありますよ!この城には大量のモンスターが蔓延ってたじゃないですか!忘れたんですか!?」
リュカの言いたい事が妹には分かっていて、自分には見当も付かない事に苛つきを感じ、思わず怒鳴ってしまうティミー。
「おかしいだろ…諸悪の根元であるバラモスを倒したのに、未だにモンスターが凶暴化したままって!」

「「「「……………」」」」
やっとリュカの言わんとする事が理解出来たアルル達…
しかしそれがどういう事なのかまでは思考が達しない様子だ。

「え~と…つまりバラモスは死んでないって事?」
「な、何言ってんのハツキ!バラモスは死んだじゃない!見たでしょ、ヤツが死ぬ所を!私達はバラモスを倒したのよ!」
ハツキの言葉に取り乱したアルル…
「落ち着いてアルル。バラモスは死んだよ!この城から漂っていた禍々しいバラモスの邪気は、完全に消え去っている!」
ティミーはアルルを抱き締め、優しい声で落ち着かせる。

「アルルさん…お父さんはバラモスが生きていると言っているワケではありません。バラモスが諸悪の根元では無いのでは?…と言ってます!」
「そ、それって…今までの事が無駄だったって事!?」
「そ、そうは言って無い………」
アルルは金切り声を上げながら状況を説明しようとしたマリーに突っかかる。
やっと終わり、平穏な生活に戻れると思った矢先のこの状況…
彼女は些か取り乱している。

すると…
「アルル…」
ティミーが優しくアルルを抱き締め呟く。
「落ち着いてアルル。君のしてきた事は無駄なんかじゃないよ」
「で、でも!…バラモスを倒したのに、全然平和にならないじゃない!どうしてよ!幼い頃からバラモスを倒す為に努力してきたのよ!世界を平和にしたくて、同い年の女の子と遊ぶのも我慢して…なのに…」
ティミーに抱かれながらも混乱は収まらず、彼女の瞳からは大粒の涙がこぼれ落ちる。

「アルル…君は間違っている!」
そんなアルルを見てリュカは、優しく慰めず厳しい声で叱咤する。
「バラモスを倒す事=(イコール)平和の訪れ…と考えていたのだろうが、それが間違いなんだよ!きっと何処か別の所に、バラモスより上の存在が居て、そいつが原因で世界が混乱に貶められたんだ。バラモスはそれを管理していた三下に過ぎないって事だ!」
「バラモスより上の存在って誰よ!?何処に居るのよそいつは!?」
アルルはぬか喜びの怒りをリュカにぶつけるかの様に、睨みながら大声を発している。

「知るかよ、そんな事!!」
「な!?む、無責任野郎が……」
リュカのぞんざいな答えに殺しそうな勢いで暴れ出す。
ティミーに抱き押さえられて無ければ、間違いなく斬りかかっていただろう。

「ア、アルル…お願いだから落ち着いて!き、君は…アリアハンを出た時から、バラモスの居所を知っていたのか?」
「……………いえ…カンダタに教えてもらうまで、知らなかったわ………」
何とかアルルを落ち着かせようとしているティミーから、これまでの事に関する質問を受け静かになる…

「じゃぁ…次なる敵も、世界を旅しながら見つければ良いじゃないか。居場所さえ分かれば、アルルの実力なら簡単に倒せるよ…きっと…」
『きっと』と付けてしまうのがティミーの正直すぎる欠点だろう…
「う、うん………でも…今度は名前も分からないんだよ…どうやって探せば…」
彼氏に優しく宥められ、静かになるアルル…
だが、前途の困難さにまた泣き出してしまう。


「じゃぁさ…取り敢えず此処を出て、ラーミアに乗って世界を見回ろうよ!…町や村だけじゃ無く、それ以外の森や山なども見回ってさ、モンスター達の現状を確認して考えようよ」
何時もの様な優しい声で提案するリュカ。
誰からも反対意見は上がらない…
この提案以外に何も思い付かないから…

アルルも泣きながら同意する。
ティミーに抱き締められてなければ、もっと醜態を晒していただろう。
彼女もそれが分かるから、更に強く抱き付くのだ。
彼が居て良かった…
そう思い、一層の愛がアルルを支配する。
既にティミー無しでは生きて行けなくなっているのだ。



 
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