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イベリス

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第百二話 終わりゆく夏その十一

「確かにね」
「人生終わりでしょ」
「ええ、ああはなりたくないわ」
 咲は心から言った。
「どれだけ心が貧しいか」
「お金あることに越したことはないわ」
 愛はこのことをこの世の真理として語った、貨幣経済が定着している社会ならばこう考えることは普通である。
「けれどそれでもね」
「心が貧しいと」
「いつも誰かを憎んで嫌って」
「不平不満ばかりで」
「それを周りに青って」
 そうしてというのだ。
「暴力でどうにかするって考える」
「心が貧しいわね」
「それで理想がそんなものよ」
「ソ連とか北朝鮮ね」
「それじゃあもうね」
「人生終わりね」
「そう、幾らお金があったり頭がよくても」
 学生運動にしても一流と言われる大学に入っていた者が多かった、東大もである。
「ああなったらね」
「人生終わりね」
「そう、何といっても心がね」
「豊かでないとね」
「人生は駄目よ」
「そういうことね」
「そのうえでこうしたところに住めたら」
 また高級住宅街のうちの一つを見て話した。
「いいけれどね」
「そうよね、まあ私はこうしたお家はいいと思っても」
「それでもなの、咲ちゃんは」
「普通に暮らせたら」
 それならというのだ。
「それでね」
「いいのね」
「満足よ」
 愛に笑顔で話した。
「普通に夏涼しくてあったかくて」
「それでなの」
「漫画やラノベ読めてゲームやネット出来たら」
「充分ね」
「ええ」
 そうだというのだ。
「本当にね」
「今だと普通ね」
「夏涼しいも?」
「まあ扇風機あって窓網戸にしたら」 
 ガラスの窓を開けてというのだ。
「そうしたらね」
「夏も涼しいのね」
「実際そうでしょ」
「そうよね」
 咲もそれはと頷いた。
「うちクーラーが標準だけれど」
「扇風機でも涼しいでしょ」
「ええ」
 咲は愛に頷いて応えた。
「充分ね」
「沖縄とかなら兎も角ね」
「東京なら」
「もう扇風機があって」
「窓を網戸にしたら」
「それでね」
「充分ね」
 そうだというのだ。 
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