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神々の塔

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第二十話 蛇の神々その七

「そこにはよおさん生きものがおってな」
「妖怪もやな」
「多いな」
「ああ、山の妖怪はな」
 芥川も話した、彼等のことを。
「山姥とかな」
「人の妖怪もおってな」
「鬼熊とかうわばみとかな」
「獣の妖怪もおるな」
「ほんま多い、そして」
「山の神様もおってな」
「そしてな」 
 そのうえでといううのだ。
「そうした神様は零落した妖怪がおってもな」
「おかしないな」
「起きた世界でもな」
「そして神様と妖怪の差があまりない国やから」
「そうした山の神様とな」
「妖怪がやな」
「おるかもな、しかし」
 トウェインは芥川に考える顔でこうも言った。
「山の奥深くやから」
「そうした神様には滅多に会わんな」
「起きた世界やとな」
「そうなるな」
「ああ、それで山の奥で鳥居とか神棚見付けたら」
「そこからは行かん」
「それでええやろ」
 こう言うのだった。
「わかりやすいと言えばな」
「わかりやすいな」
「触らぬ神にたたりなしってな」
 今度はこの言葉を出した。
「日本では言うな」
「ああ、特に荒ぶる神はな」
「そやな、神様と妖怪の違いが曖昧で」
 そうした国でというのだ。
「人を襲う神様もおる」
「そのことも理解して」
「近寄らんことやろ」
「自分からはやな」
「それがええやろ、ただ起きた世界の日本で危ない獣ってな」
「熊位やな」
 芥川はきっぱりと言い切った。
「その熊もな」
「ツキノワグマやな」
「熊の中では小さくてな」
「大人しいな」
「ヒグマと比べるとな」 
 北海道にいるこの熊と、というのだ。
「そうや」
「そやな」
「狼は人襲わんしな」
 ニホンオオカミはというのだ。
「他はもうな」
「猛獣の類おらんな」
「日本はな」
「山の神様はそこにおる獣の姿になる」
「その山を司るだけにな」
 己が神である山を司るだけにだ、だからこそその山にいる獣の姿になるのだ。その他の獣になることはない。
「そうなるな」
「ほな熊がおったら」
「熊の身体になる、しかし」
 芥川は言った。
「そやけどな」
「虎にはならん」
「日本に虎はおらん」
「豹もおらんな」
「そやからな」
「熊か狼か」
「そうした獣になるが」
 それでもとだ、芥川はトウェインに応えて話した。 
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