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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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大会に向けて

 
前書き
本当はシリルにラッキースケベ乱発させてやろうかと思いましたが、大会中にちょっとしたハーレムタイムが発生するから今はいいやと投げやりになった件について。 

 
妖精の尻尾(フェアリーテイル)が大魔闘演武の知らせを聞いたその頃、他のギルドでも同様に盛り上がりを見せていた。

「早速リベンジの機会が来るとはな」
「今年もウェンディを戦えたらいいなぁ」

ここは蛇姫の鱗(ラミアスケイル)。そこではオーバからの通達を受けたリオンとシェリアはすでにやる気満々といった表情を見せている。

「ジュラさんも出れればよかったのに」
「評議院のこともありますからそれは・・・」

聖十大魔道で評議院が構成されているため、そこに行っているジュラは現在蛇姫の鱗(ラミアスケイル)に籍を置いていない。そのため彼らは多少の戦力ダウンに見舞われているが、誰一人としてそれを気にしているものはいなかった。

「ラウは今年も応援するよ!!」
「オオーン!!任せておけよ!!」
「キレんなよ」

全員が気合い十分で息巻いている魔導士たち。特に氷を扱う二人の魔導士の気合いの入り方は他の者たちと一線を引いていた。

「待っていろ、グレイ」
「今回こそは決着を付けてやるぜ、シリル」

互いにライバルと認めた相手がいる彼らはその人物と戦えることを信じて疑わない。そして相手も同じ気持ちでいるということも彼らは確信しており、いつでも戦えるように準備を始めるのだった。

















戦いたい相手がいる魔導士。それは決して彼らだけではない。

「今年こそはやりたいねぇ、ラクサスと」

同じ雷の魔導士としてその高い実力を保有する人物を思い浮かべ不敵な笑みを浮かべるオルガ。その後ろにいる黒髪の青年もまた、ある人物との再戦を願っていた。

「ガジル・・・」
「前回のリベンジがありすぎるからなぁ、全員倒してやるぜ」

静かに闘志を燃やす影の竜とは異なり、幻竜は燃えに燃えていた。それだけ彼は倒すべき相手が・・・戦いたい相手が多くおり、それら全てを蹴散らそうと考えている様子だ。

「腕がなるのぅ」
「あの時のことはしかと記憶している」
「私も・・・今回こそはお役に立ってみせます」

ミネルバ、ルーファス、ユキノの三人もこの大会にかける想いが大きいらしい。そんな中、誰よりも気合いが入っている人物がいた。

「今回こそはナツさんとやるんだ!!そして勝つ!!」

憧れの存在である滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)のことを考えて感情が抑えられなくなっている白き竜。しかし、そんな彼のことを他の面々は哀れな目で見ていた。

「スティング、お前はこの大会には出れないぞ?」
「はぁ!?なんで!?」

大会規定であるマスターの参加不可により出場資格が最初からないスティング。そんなことなど知りもしなかった彼はいきなり地獄の底に落とされたかのようにショックを受けていた。























「やったぁ!!また女の子とイチャイチャ祭りじゃん!!」

大魔闘演武の開催を聞いて一人走り回って大喜びしている銀髪の少女。そんな彼女の隣にいた黒髪の剣士はタイミング良く脚を出し、ソフィアはそれに躓いて転んでいた。

「落ち着け、全くお前は・・・」
「そんなこと言ってぇ」
「カグラもエルザに会えるのが楽しみな癖に」
「なっ////そ・・・そんなことは・・・」

平静を装っていたカグラだったが、エルザの名前が出た途端にあわてふためき顔を赤くする。その姿を見て人魚の踵(マーメイドヒール)の魔導士たちはさらに茶化していた。

「誰もソフィアのこと心配してくれないんだ・・・」

そんな中、カグラに足をかけられて転倒していたソフィアは誰からも手を差し出してもらえなかったことに不貞腐れ、頬を膨らませていた。


















その頃、青い天馬(ブルーペガサス)では一人の男の予想外の宣言によりざわついていた。

「え!?一夜さん出ないんですか!?」

青い天馬(ブルーペガサス)のエースである一夜。そんな彼が今回の大魔闘演武に参加しないと言うのだ。それを聞いた面々は驚きを隠せなかった。

「メェーン。今回はみんなに任せようと思う。もちろん、もしもの時はリザーブ枠として参加しよう」

その言葉に不安に包まれていたメンバーたちが沸き上がる。それだけ彼がギルドの精神的支柱であることを物語っていた。

「頼むぞ、タクト」
「はい!!一夜さん!!」

ギルドが彼の一言で沸き立つ中、一夜は自身がもっとも期待を寄せている青年へと声をかける。それを受けた彼ももちろん一夜のことを尊敬しているため、その表情は明るいものへとなっていた。
































シリルside

マスターから大魔闘演武の知らせを受けた俺たちは、今回も修行のためにとあの場所へと来ていた。

「海だぁ!!」
「燃えてきたぁ!!」

視界一面に広がる青い海に広い砂浜。俺たちは今回も合宿をするためにとアカネビーチへとやってきていた。

「よっしゃあ!!泳ぎまくってやるぜ!!」
「勝負だ!!ナツ!!」
「望むところだ!!」

先頭を行くナツさんとグレイさんは全力疾走で海へと走り出す。その様子を見ていた黒髪の青年は、冷たい視線を送っていた。

「修行はどうしたんだ?」
「いや・・・今日一日くらいなら・・・」

前回の合宿の時は俺たちとは別行動を取っていたガジルさんだったけど、今回はこちらで一緒にトレーニングをすることにしたらしい。理由はもちろんレビィさんがいるから!!だと思って茶化したら強烈な右ストレートを受けたため頬が赤くなっているのは内緒です。

「あぁ。こういうのはメリハリが大切だからな。よく遊び、よく食べ、よく眠る」
「肝心の修行はどうしたんだ?」
「それがエルザさんだからね~」
「あい」

以前にも聞いたことがあるような発言を既に海の中へとダイブしているエルザさんが言う。それに冷静な突っ込みを入れるリリーだが、後ろで返事をする二匹もすでに浮き輪を携え遊ぶ気満々だ。

「でも一日くらいならいいんじゃない?」
「私も!!明日から頑張れば大丈夫だよ!!」
「そう言って失敗したのが前回だけどね」

すっかり大きくなったお腹を支えながらやってきたレビィさんと彼女の言葉に同意するルーシィさん。そんな中シャルルだけは一人不安そうな顔をしていた。

「大丈夫だよ、シャルル」
「そうそう。今回はあの時みたいにブランクがあるわけでもないし」
「そう言う問題じゃないのよね・・・」

前回の大魔闘演武に向けた修行の際は星霊王のせいで全く修行をすることができずに大会本番を向かえてしまった。ウルティアさんのおかげで魔力を限界まで高めて臨むことはできたけど、もう第二魔法源(セカンドオリジン)による成長はできないことを彼女は伝えたいのだろうけど、さすがにあんなことには二度とならないと思うので問題ないだろう。

「と!!言うわけで!!」

今日は息抜きということで早速海に繰り出そうとした。そんな俺に後ろからガジルさんが声をかけてくる。

「おい、ガキ」
「なんですか?」
「まさか呑気に遊ぶ訳じゃねぇだろうな?」

何やら凄んでいるガジルさんだけど、まさしくそのつもりなのでそれを言い当てたくらいでなんなのだろうかと思っていたところ、彼は自身の腕を鉄へと変えて俺をさらに鋭くなった目で睨んできていた。

火竜(サラマンダー)たちがあの様子じゃつまんねぇ。勝負しろ、ガキ」
「やだ」
「即答!?」

どうやら彼はバトルしたくて仕方がなかったようだけど、俺はそれを即座に却下した。だって今日は遊ぶつもりだったから戦うつもりなんて毛頭なかったし、すでに膨らませたビーチボールを手に持っている身としてはすぐにでもこれを使いたくてしょうがないのだ。

「てめぇ!!逃げんのか!?」
「だってガジルさんとじゃつまんないもーん」
「あ!!待てゴラ!!」

チーム分けに関しては不本意だったけど、あのあとマスターやミラさんから説得されて納得したので無駄な戦いはしないに限る。俺は後ろで何か言っているガジルさんを置き去りにして、先に海へと駆け出していたウェンディたちの元へと急ぐのだった。



























第三者side

カッカッカッカッカッ

何もないその空間を足早に進んでいる黒髪の女性。そんな彼女のすぐ隣に、突然一人の男が現れた。

「お前のとこの奴、ずいぶん楽しそうなことしてんだな」

その男はニヤニヤとした笑みを浮かべながらそう話しかけるが、女性は歩く速度を緩めることなくその横を通り過ぎようとする。それが気に食わなかったのか、男は先に行こうとする彼女に不敵な笑みでさらに続けた。

「まぁ、最後の記念にはいいんじゃないか?」

その言葉を聞いた途端、緩むことのなかった足が止まり彼女は男の方へと視線を向けた。

「あら?心配してくれてるの?」
「そんなんじゃないよ。ただ、お前がどんな気持ちなのか気になっただけだ」

そう言ってイヤらしい笑みを浮かべた男を見て、黒髪の女性は鼻で笑ってみせる。

「別に。私は私がやるべきことを全うするだけだからね」
「ふーん」

その言葉にウソ偽りはないようではぐらかされた格好になった男は不満げな表情を浮かべる。その姿にしてやったりといった感じなのか、女性は踵を返しその場から姿を消した。

「ププッ、はぐらかされてやんの」

そんな男の後ろから姿を現した青年はわざとらしい笑いを見せて挑発を行う。ただ、それは彼には響いていないようで、男はタメ息をつくに留まっていた。

「何々?シカト?」
「お前・・・相変わらずうるさいな」

さらにその後ろから姿を見せる男。整えられた髪型をした男は、肩を組んでなおも挑発している青年へ鋭い眼光を向けていた。

「いいじゃん。むしろお前たちが大人しいだけなんじゃないの?」
「我々は規律を重んじるべき存在だ。お前のような軽率な行動を取る輩と一緒にするな」
「はいはい」

堅苦しいといわんばかりにその場から離れようとする青年に対し、先ほどまで肩を組まれていた男は逆にそれをやり返している。

「お前も本当は心配なんだろ?これからのことを考えると」
「え?なんで?」

男からの問いかけにキョトンとした表情を見せる青年。その姿は二人が予期していたものとは異なっており、彼らは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。

「やっと俺の願いが成就するんだ。楽しみ以外の感情が出てくるわけがない」

高笑いを浮かべながら男の腕を振り払った青年はその場を立ち去る。残された二人は顔を見合わせると、肩をすくめていた。

「あいつはそう言う奴だったな」
「まぁ・・・だからこそ気に入られたんだろうしな」



















シリルside

「いやー、腹減ったぁ」
「遊びまくったもんな」
「あい」

辺りは暗くなり前回も泊まった旅館へとやってきた俺たちは用意されていた浴衣へと袖を通し食事が用意されている宴会場へと向かっていた。

「本当にこいつら一日遊んでやがった・・・」
「修行するとはなんだったんだ?」
「いや・・・一日くらいなら・・・」

結局その日は一日遊び尽くしたこともあり、ガジルさんは不満タラタラだったけどそれを俺は宥める。まだ大会まで期間もあるし、一日くらい大丈夫・・・だよね?

「ん?待てよ」
「どうしました?グレイさん」

遊び疲れてお腹も空いたため早く食事にありつきたいと思ってた俺たちだったが、そんな中グレイさんが突然足を止めたかと思うと、顔からどんどん血の気が引いているように見える。

「おい!!これまずいんじゃないか!?」
「あ?」
「何がだよ」

何をそんなに慌てているのかと足を止め彼の方へと向き直ると、彼は慌てた様子で勢い良く捲し立てた。

「あいつら・・・また酒飲んでるんじゃ・・・」
「「「「な・・・」」」」

その一言を聞いた瞬間、俺たちは走り出した。今回の合宿の面子はクリスマスの時と同じメンバー。そして思い出されるのは酔っ払った女性陣による横暴な凶行の数々。

「いざとなったら俺もお酒を煽るしか・・・」
「やったら殺す」
「すみません・・・」

いざという時は俺もあちら側に逃げようと考えたけど、隣を走るガジルさんがすごい形相で睨んできたので即却下。そうなるとあとはまだウェンディたちがお酒に溺れていないことを祈るしかない。

勢い良く襖を叩き開けるナツさん。俺たちはその後ろから顔を覗き込むと、そこには驚いた表情でこちらを見ているウェンディたちの姿があった。

「どうしたんですか?」
「そんなに慌てて・・・」

そう言ったジュビアさんとウェンディの表情にお酒を飲んだ時特有の赤みはない。他の皆さんも同様で、俺たちはホッと息をついた。

「いや・・・」
「よかった・・・」
「生きて帰れる・・・」
「「「「「??」」」」」

安堵の表情で涙を流している俺たちを見て何がなんだかわからないといった表情の女性陣。何事なのかと聞いてきた彼女たちの言葉を受け流しながら、俺はウェンディの隣へと腰を下ろす。どうやらレビィさんが妊娠中ということで今回はお酒の提供を断っていたらしい。こんなにガジルさんに感謝したのは妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入って始めてかもしれない。

「どうしたの?シリル」
「ううん。なんでもないよ」

キョトンとした表情でこちらを見つめているウェンディに笑顔で返す。これには横にいたシャルルやセシリーも不思議そうな顔をしていたが、お前たちは記憶がないからいいんだ。何も気にしなくていいんだ。

「グレイ様!!はい、あーん」
「あ・・・あーん」

すると遠くの方からジュビアさんとグレイさんのいちゃつく声が聞こえてくる。最近ジュビアさんからのアプローチに耐性がついてきたのか、グレイさんは顔を真っ赤にしながらも口を開いてそれを食べていた。

「なんかグレイさん、丸くなったよね」
「いつからだっけ?」
「100年クエストの辺りからかな?」

ジュビアさんと離れる時間が長かったからなのか、彼女のことを前とは違ったように接している彼にいまだに慣れないけど、ジュビアさんが幸せそうでよかったように思える。

「シリル」
「ん?」

ニヤニヤしながら二人の様子を見ていたところ、ウェンディが何を思ったのか頬を赤く染めながらこちらを見てくる。その手には箸が握られており、何をしようとしているのか何となくだがわかった。

「はい、あーん」

ジュビアさんの押せ押せ感に感化されたのか、顔を赤くして同様のポーズをしてくるウェンディ。突然の行動に俺も恥ずかしさを感じたものの、すぐに口を開けてそれに答えた。

「うまっ!!」

恥ずかしさに負けるかと思ったけどそれを覆す料理の美味しさに思わず声が出てしまった。なぜこんなに美味しい料理を忘れていたのかと一瞬考えたけど、よく考えたら前回はウェンディたちが酔っ払って料理全部食べちゃってたからこれのこと知らなかったんだ。しかもそのあとは星霊界で残りの修行期間全部消化しちゃったし。

「そういえば聞いたか?」
「何が?」
「大魔闘演武の予選、既に行われているらしいぞ」

エルザさんが隣にいたルーシィさんにそんなことを話していた。予選免除の俺たちは知らなかったけど、今回は前回とは異なり勝ち抜き戦による予選を行っているため、今の時期から既に行っているらしい。何なら大会の一ヶ月前には参加するギルドを決めるとのこと。

「まぁ、そうなるよな」
「前のような予選では、免除されてるギルドに有利になりますからね」

グレイさんとジュビアさんの言う通り、前回のように夜中に予選を行ってすぐに本戦となると、事前に準備できているギルドが有利になる。そのことを配慮してのことなんだろうと察することはできた。

「どこが来たって関係ねぇよ。俺たちが勝つ!!」
「当たり前ぇだ」
「絶対に優勝しましょう!!」

気合い十分なナツさんとガジルさんに引っ張られるように俺も気合いが入る。すると、レビィさんが全員に問いかけた。

「みんなはどこが勝ち抜いてくると思う?」

唐突な問いに全員が思考に入ったため一瞬静かになる。最初に口を開いたのは、ルーシィさんだった。

「順当に行けば毒鬼の牙(スカルミリオーネ)じゃないかしら?前回大会の優勝ギルドだし」

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の解散中に記者として仕事していたこともあり、フィオーレのギルドのことに詳しいルーシィさん。俺とウェンディは聞き覚えのないギルドに首をかしげていたけど、すぐにグレイさんも割って入る。

「いや、黄昏の鬼(トワイライトオウガ)も力を付けてるみたいだぜ」
「確かに。私たちが解散している間、マグノリアをずっと守っていたこともありますからね」

同じマグノリアにある魔導士ギルド黄昏の鬼(トワイライトオウガ)。言われてみればそんなギルドあったなと思いつつも、確かに可能性は十分にあるとも思える。

「なぁ?シリル」
「どうしました?」
「そういえば、天狼島で戦った奴がいたギルドなかったか?」
「あぁ、蛇鬼の鰭(オロチノフィン)ですか?」

悪魔の心臓(グリモアハート)にいたブルーノートがいた蛇鬼の鰭(オロチノフィン)。行動こそあれだったけどあそこも正規ギルドではあるため参加資格はある。それに純粋にあの人の力は驚異だ。

「あぁ!!なんか話してたら戦いたくなってきたぁ!!」
「昼間遊んでた奴が何言ってんだ」
「なんだと!?」
「やんのかコラァ!!」

大魔闘演武のことを考えてやる気が漲ってきた様子のナツさん。それに今日、リリーと共に修行をしていたガジルさんが皮肉を言うと、いつものように喧嘩が始まりそうになる。

「やめんか、二人とも」

そんな二人を止めるエルザさん。しかし、なんだか違和感がある。彼女の呂律が回っていないような・・・

「「「げっ!?」」」

わずかな違和感を抱いた俺たちは彼女の手元を見て青ざめた。その手には先ほどまでなかったはずの酒瓶が握られており、彼女の顔が赤くなってきているのだ。

「ん?どうした?ナツ、グレイ、シリル」

しかしまだギリギリで彼女は正気を保てているように見える。だが、いつ彼女の暴走が始まるかわからないため、俺たちは視線を交わすと一目散に走り出しーーー

「待たんかぁ!!」

彼女の投げた剣がその進路を塞ぐように突き刺さった。

「あの・・・」
「エルザ・・・さん?」
「もしかして・・・」

その行動でようやく全てを理解した女性陣も顔が青くなっていく。反対に真っ赤な顔をした緋色の剣士は勢いよく立ち上がり、こちらへと中身が空になった酒瓶を投げつけてきた。

「酒を告げぇ、それができないなら・・・酒を告げ」
「「「ひぃぃぃぃぃ!!」」」

結局その日は正気を失ってしまった彼女の相手を一晩中やらされた俺たちは翌日、昼間頃まで起き上がることができなかった。てか朝に何事もなく起こしにきたエルザさんは二日酔いにならないのだろうかと疑問を抱きながら、俺たちは頭痛によりふらつく足取りで修行へと向かう羽目になったのだった。
















第三者side

ここは大魔闘演武の本戦参加ギルドを決めるための予選会場。そこでは目の前に沈むブルーノートを擁した蛇鬼の鰭(オロチノフィン)の姿があった。

「バカな・・・」
「先生が手も足も出ないなんて・・・」

自分たちのギルドのエースである存在がなす統べなくやられ、自分たちも身体を起こすこともままならないほどの大ダメージ。それを行った一人の男は、つまらなそうに口を真一文字に結ぶと、後方に待機していた同じギルドの模様が入った仮面を付けている者たちの元へと歩いていく。

「これで準々決勝進出か」
「弱いな」
「いいんじゃない?本番は三ヶ月後なんでしょ?」
「あぁ。そこまではゆっくり調整させてもらうとしよう」

全員が余裕綽々といった表情を見せる面々。彼らは勝利を喜ぶこともせずその場からそそくさと立ち去る。

「・・・」

先を行く五人から遅れた一人の人物。彼は足を止め、治療を受けている対戦相手を一瞥すると、顔を伏せ、前の五人を追いかけるように歩みを再開したのだった。






 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
大会が始まるとひたすら戦いになってしまうので今のうちは緩くやらせてください。
本当は料理の恨みをシリルが感じる展開にしようかと思ったけど、それは彼らしくないのでやめました。
次からは大会に入っていくかなと思います。てか鬼が付くギルド多すぎじゃね?と書いてて思った。 
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