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夜雀バラード

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第二章

「小鳥の声、それも」
「雀ですね」
「そうですね」
 マスターに対して答えた。
「この鳴き声は」
「聞こえますか、実はこの店のすぐ傍にです」
 そこにとだ、マスターは答えた。
「鳥達の巣がありまして」
「それで、ですか」
「鳥は多くの種類が昼に動きますね」
「鳥目っていいますね」
 潤奈はカシスオレンジを飲みながら応えた。
「そうですね」
「はい、ですから」 
「夜に動く鳥は少ないですね」
「梟やミミズクは動きますが」
 それでもとだ、マスターも答えた。
「しかしです」
「多くの鳥はですね」
「迂闊に動かないで」
 それでというのだ。
「寝ています」
「夜は見えないので」
「はい」
 だからだというのだ。
「もう」
「そうですね」
「ですがこの店の近くにはです」
「鳥の巣があるんですね」
「夜雀の」
「夜雀ですか」
「はい」
 マスターは答えた。
「その鳥の巣があってです」
「夜にですか」
「鳴きます」
「そうなんですね、何か」
 その鳴き声を聞いてだった、潤奈は。
 飲みながらだ、こう言った。
「聞いていると不思議とです」
「寂しさがですか」
「ただ鳴いていて」
 その夜雀達はというのだ。
「それを聞いているだけですが」
「消えました」
「それは何よりですね」
「ええ、ただ」 
 ここでだ、潤奈は。
 少し考える顔になってだ、マスターに話した。
「夜雀ですね」
「はい」 
 マスターもその通りだと答えた。
「今鳴いている鳥達は」
「今思い出したんですが」
 飲むのと止めてだ、潤奈はマスターに言った。
「夜雀って妖怪ですね」
「ご存知でしたか」
 マスターも否定しない返事だった。
「そのことを」
「やっぱりそうですか」
「何処でそのことを」
「実家で聞いたです」
 そちらでというのだ。
「私の母の」
「そちらにですね」
「夜雀のお話があって」
「その鳴き声は不吉ですね」
「まとわりつかれたり」
 その声にというのだ。
「惑わされたりで」
「よくないとされていますね」
「あまり大きな被害は出ないですが」
 それでもというのだ。
「あまりよくない妖怪だと」
「言われていますね」
「はい、ですが」 
 それでもとだ、潤奈はマスターに話した。
「今はです」
「寂しさがですね」
「消えました」 
 そうなったことを話した。
「本当に。不思議ですね」
「不思議ではないです。枯れ木も山の賑わいですね」
 微笑んでだ、マスターは潤奈に話した。 
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