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ようこそボンゴレⅩ世。実力至上主義の教室へ

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Ⅹ世、裏の顔を知る。

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ようこそボンゴレⅩ世。実力至上主義の教室へ   作:コーラを愛する弁当屋さん

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Ⅹ世、裏の顔を知る。

 

 —— 祝勝会の後、ツナの場合 ——

 

「いやぁ、2人共ごめんね? 片付けを手伝ってもらっちゃって」

 

 祝勝会の後、綾小路君と桔梗ちゃんが片付けを手伝うと言って残ってくれていた。

 

「いや、これくらい気にするな」

「そうだよ〜♪ 部屋を使わせてもらってたんだし、これくらいは当然だよ!」

「そう? でも本当にありがとう。おかげで早く終わりそうだね」

 

 大体の後片付けが終わり、後はゴミをまとめるだけになった。

 

 

「……櫛田、お前はもう帰っていいぞ。後は俺が手伝うから」

「え? まだ大丈夫だよ?」

 

 綾小路君が桔梗ちゃんに帰る様に促すが、桔梗ちゃんは最後まで手伝う気のようだ。

 

 そんな桔梗ちゃんに、綾小路君は首を振って外を指差した。

 

 指差した方を見ると、そこはベランダに繋がるドアがあった。上の方についているガラス窓からはすでに暗くなっている空が見えた。

 

「あ、もう暗くなってるね。桔梗ちゃん、女子用のマンションは隣だけど、用心してもう帰った方がいいんじゃない? もう十分手伝ってもらったからさ」

「そう? ん〜、じゃあお言葉に甘えてお先に失礼するね」

「うん。また明日ね」

「じゃあな、櫛田」

「うん♪ また明日ね」

 

 桔梗ちゃんが玄関から出るのを見送った俺達は、最後に集めたゴミを種類ごとにまとめあげた。

 

「……終わったな」

「うん、最後までありがとう綾小路君」

「気にするなって。じゃあ俺も帰る……ん?」

 

 綾小路君は玄関の方に歩き出すと、俺のベッドの上に何かが落ちているのに気づいた。

 

「……学生証端末。……櫛田のか?」

 

 綾小路君が拾い上げたそれは、誰かの学生証端末だった。

 

 俺と綾小路君は持ってるし、先に帰った堀北さん達ならもう取りに来ててもいい時間のはず。だとすれば、この端末の持ち主は桔梗ちゃんの可能性が高いな。

 

「まだ近くにいるかもしれないし、届けに行こうかな」

「……会えなかったらどうするんだ?」

「そしたら部屋に帰って連絡が来るのを待つよ。気づいたら内線電話で連絡してくると思うし」

「……そうだな。行ってみよう」

 

 俺達は部屋を出て最上階のエレベーター乗り場に向かった。

 エレベーターはちょうど下に降りている途中だった。

 

 乗っているのは桔梗ちゃんだろう。

 エレベーターはどんどん下に降りて行く。

 

 (……3、2、1。1階で降りた様だ。……あれ、何で1階?)

 

「……変だな」

「うん。女子用のマンションとは5階の連絡通路で繋がってるのにね。なんでわざわざ外から?」

「……どこかに行くのかもな。追いかけた方がよさそうだ」

「そうだね、行こう!」

 

 俺達は急いで1階まで降りてマンションから出た。

 

 マンションの付近をキョロキョロ見回すと、桔梗ちゃんの姿が見えた。

 どうやら敷地の外周にある、海上の景色がよく見える散歩道へ向かっているようだ。

 

 急いで後を追い散歩道に向かうと、桔梗ちゃんは道に等間隔で設置されている防護柵の前に立っていて、どうやら海を眺めているようだった。

 

(あ、よかった。止まってくれてて。じゃあさっそく渡……)

(……待て沢田)

(え?)

 

 桔梗ちゃんに声をかけようとしたら、綾小路君に止められてしまった。

 

 どうして止めるのかと聞こうとしたら、桔梗ちゃんが何やら独り言を呟きはじめた。

 

「……あ〜うざい。なんなのあの女? 自分が可愛いと思ってお高く留まりやがって。他人なんかどうでもいいです〜って感じだったのに、なぜか最近はツナ君に対してだけ『私、かよわい女の子なんです』って感じのアピールしやがって! 本当に最悪……最悪最悪最悪!」

 

 独り言を呟く桔梗ちゃんは……今まで聞いたことのない声色で、堀北さんに対する不満をぶちまけながら防護策を何度も蹴っている。

 

(……き、桔梗、ちゃん?)

(……大変なものを見ちまったなぁ)

(かよわい女の子のアピール? そんなのされた覚えはないんだけどな)

 

「ほんとうざい……死ねばいいのに! 堀北なんかっ!」

 

 ——ぴぴぴっ!

 

「!」

(わっ! 桔梗ちゃんの携帯が!)

(……ばれちまったな)

 

 桔梗ちゃんの変わりっぷりに思わず無言で見つめていると、急に桔梗ちゃんの学生証端末が音を鳴らした。

 

 慌てて端末を押さえようとするも、完全に桔梗ちゃんにも聞かれてしまったらしく、彼女の冷たい声が俺達に向けて放たれる。

 

「……誰かいるの? いるなら……出てきて」

(……素直に出るしかないな)

(う、うん。そうだね)

 

 綾小路君と小声で話し合い、素直に出て行くことにした。

 

「ご、ごめんね? 同じクラスの沢田です」

「同じく、綾小路だ」

「! ツナ君……」

「桔梗ちゃんが俺の部屋に学生証端末を忘れてたから、届けにきたんだけど……」

 

 桔梗ちゃんは、俺の顔を見た一瞬、すごく悲しそうな顔をした。しかし、すぐに冷ややかな表情に変わってしまう。

 

「……あ〜あ。ツナ君と綾小路君かぁ。まさか……ツナ君に聞かれちゃうとはなぁ〜」

 

 そう言い俯きながら俺達のいる方へと歩いて来る桔梗ちゃん。

 

 やがて俺達の目の前にやって来ると、学生証端末を奪い取り、ゆっくりと顔をあげてこちらを睨んだ。

 

 その顔は、今まで見てきた桔梗ちゃんの笑顔とは到底結びつかないほどに憎悪に満ちたものだった。

 

「……誰かに話したら、容赦しないから」

「!」

「……」

 

 桔梗ちゃんの怒っているような冷たい表情に、どこか悲しそうな感情が紛れている様に感じる。さっきの自分を誰にも知られたくないのだろう。

 

 まぁ、当然かな。さっきの桔梗ちゃんを見れば、「いつもの桔梗ちゃんはなんなの?」って思ってしまうのは間違いない。

 

「何で黙るの? さっきの私を見て幻滅した? それか怖くなったわけ?」

「……そんなことないよ。わかってる。誰にも言わないよ」

「……俺も約束する」

 

 誰にも言わない事を約束するも、桔梗ちゃんは納得できないかのように首を横に振る。

 

「……口約束なんて、私は信じない。ちゃんと担保をつけてもらわないと信じないから」

「……そ、そっか」

「……」

 

 それにしても、担保か。 

 

 俺には本当に言う気なんてない。正直びっくりしたけど……こんな一面があるからって桔梗ちゃんに対する対応を変えるつもりもないし、人の秘密をばらしたりとかするつもりも俺にはない。

 

 むしろ、知られたくない秘密を知られてしまった桔梗ちゃんに同情してしまっている自分がいる。

 

(秘密に対する担保は……やっぱり秘密がいいんじゃないかな)

 

 これが担保になるかわからないけど、桔梗ちゃんがそれを望むなら答えないわけにはいかないだろう。

 

「……じゃあさ、俺の知られたくない秘密も桔梗ちゃんに教えるよ。もしも俺がバラすような事があれば、その秘密を桔梗ちゃんもバラしていい。それでどうかな?」

 

 俺の提案を聞くと、桔梗ちゃんは少し考えてからこう答えた。

 

「……内容によるね。私の秘密に釣り合うものじゃないとダメだよ。せめて知られたら今までの様に学校には通えないくらいの秘密じゃないとね」

「うん。それなら大丈夫だと思う」

 

 俺にはどこに出しても恥ずかしい、最悪の黒歴史があるのだ。

 

 一度深呼吸をして落ち着き、俺は自分の忘れたい黒歴史を晒し始めた……

 

「実は俺中1の時にさ。好きな子にパンツ一丁で告白した事があるんだ。それも朝の校門で、たくさんの人の見ている前でね」

 

 秘密を暴露し、どんな反応をしているか桔梗ちゃん達の様子を伺う。すると……

 

「……え、まじ? それはちょっと……」

「沢田……お前、まじか」

 

 桔梗ちゃんと綾小路君がドン引きしているのは丸わかりだった。

 ……だって一歩後退りしてるもん!

 

「あ、いやあの、若気の到りって言うか? あの時の俺は本当にキモかったって、心底反省してるんだよ!? もうそんな事をしたりしないし、そんなに引かないでよぉ!」

「……」

「……くすっ」

 

 なんとか弁明をしようと頑張っていると、急に桔梗ちゃんがいつもの調子で笑い始めた。表情もいつもの可愛らしい笑顔に戻っている。

 

「ふふふ♪  うん、いいよツナ君。私と同じくらいやばい秘密だねっ! これでツナ君との取引は成立でいいよ!」

「そ、そっか!(ほっ……)」

「じゃあ次は……」

 

 そう言うと、桔梗ちゃんは俺から綾小路君へと視線を移した。

 

「綾小路君はどうする? ……君も何か秘密を話す?」

「……いや、生憎と俺にはそんな秘密がないんだ。何か別の事にしてくれないか?」

「……ふ〜ん。そっかぁ……」

 

 綾小路君が取引の変更を求めると、桔梗ちゃんは再び冷たい表情に急変した。

 

「……じゃあ、綾小路君には爆弾を抱えてもらうね」

「……爆弾?」

「そう、特大の爆弾をね……」

 

 そう言うと、桔梗ちゃんは綾小路君の手を掴み、そのまま自分の胸に押し当てる。

 

「!」

「えっ!? な、なにしてんの!?」

「……ツナ君、うるさい」

「ご、ごめん……」

 

 綾小路君より俺が慌ててしまった。おかげで桔梗ちゃんに怒られてしまったよ。

 

 それにしても……こんな場面でも、綾小路君は真顔を崩さないのか?

 

「綾小路君、もしあんたが私の秘密をバラしたら……その時は、あんたに強姦されたって言いふらすから」

「……冤罪だし、それ」

「大丈夫、冤罪じゃないから。あんたの指紋が制服にベタっとついてるし、証明は簡単にできるから」

「……」

「私は本気……どうするの? 絶対にバラさないって誓える?」

「……わかった。わかったから離してくれ」

「……そう。よかった」

 

 桔梗ちゃんが綾小路君の手を離した。そして手を離すと同時にいつもの笑顔に戻っていた。

 

「……よしっ! これで3人の秘密ができちゃったね♪」

 

 満足そうにそう言うと、桔梗ちゃんはマンションに帰る道に向かって歩き始める。

 

「……じゃあ私は帰るね? 学生証端末はありがとう。じゃあまた明日ね♪」

「あ……待って! 桔梗ちゃん!」

 

 離れて行こうとする桔梗ちゃんを、俺は無意識の内に引き止めていた。なんでそうしたのかは分からない。でも、ここで止めなかったら後々後悔しそうな気がしてならなかったんだと思う。

 

「……なあに? ツナ君。やっぱり取引をなしにしたいとか?」

「え? いやいや! 違うよ!」

「……じゃあ、何かな?」

「その、一つ言っておきたい事があって」

 

 話す内容を考えなくとも、口が勝手に開き、勝手に言葉を並べていく

 

「……あのさ。もしもまた、今日みたいに溜まった鬱憤を晴らしたくなったら、俺を呼んでくれないかな?」

「……は? ……なんで?」

 

 俺の言った事がカンに触ったのか、またも桔梗ちゃんの表情が冷たくなる。

 

「……今日みたいに外で物に当たり散らしてたらさ、いつまた誰に見られないとも限らないじゃない? その度に俺達としたみたいな取引してたら、せっかく晴らした鬱憤が無駄になるんじゃないかなって。それだったら、お互いに秘密を持っている俺に吐き出した方が、桔梗ちゃんにとっても安心なんじゃないかって思ったんだ」

「!」

 

 桔梗ちゃんは一瞬驚いた表情になったが、すぐに冷たい顔に戻った。

 

「……なんで?」

「え?」

「なんでそんな事を言えるの?」

「……何でって言われても」

「前に私の本性を知った奴らはね。知った途端態度を急変させて、罵りまくってきたよ? それまで「櫛田ちゃん! 櫛田ちゃん!」って私を持ち上げまくってたくせにね。……なのに、ツナ君はどうして態度を変えないの? 今までの私と全然違うのに」

 

 桔梗ちゃんの表情が少しだけ暗くなっている気がした。

 

「あ〜。確かに驚いたけど、人間いろんなものを抱えて生きてるからさ。一面だけで判断するのはよくないって思ってるんだ。あと……」

「……あと?」

「前に桔梗ちゃんに聞かれたじゃない? なんで今も体を鍛えてるのかって」

「……うん。覚えてるよ。大切な人を守りたいからって言ってたよね。正直『この平和な日本で何言ってんだこいつ……』って思ってた」

「あ……そ、そっかぁ。うん。……まぁ、それでね? 俺の中では、桔梗ちゃんはすでに大切な友達になってるんだよ。だから、もし桔梗ちゃんが苦しんでるなら、少しでもいいから楽にしてあげたいなぁって思って。溜めた鬱憤を受け止めるくらいはできると思うからさ」

「……」

 

 本心を打ち明けると、桔梗ちゃんは黙って俯いてしまった。

 

(あ、やばい。怒らせちゃったかな?)

 

 そう心配したが、再び顔を上げた桔梗ちゃんはいつも通りの笑顔になっていた。

 

「あははっ、うん! わかったよツナ君。じゃあその時はお願いね? 私のストレス発散に付き合ってよね♪」

「! う、うん! もちろん!」

「よし! じゃあ約束のおまじないをしよ♪」

「え? おまじない?」

「うん、おまじないっ♪」

 

 そう言いながら、桔梗ちゃんが右手の小指を差し出してきた。

 どうやら指切りゲンマンをしたいらしい。

 

 俺も右手の小指を差し出して、桔梗ちゃんと小指を絡める。

 

「じゃあ行くよ〜?」

 

 手を揺らしながら、桔梗ちゃんが歌を歌い始めた。

 

「ゆーびきり、げんまーん、嘘ついたら、人生終わらせるっ! 指切ったっ♪」

 

 歌い終わりと同時に指を離した。

 桔梗ちゃんは満足そうに笑っている。

 

 なんか歌詞がおかしかった気がするけど……守ればいい話だよな、うん。

 

「うんっ♪ これでおまじないは完了! じゃあ今度こそ帰ろっか! あ、 送って行ってくれない?」

「あ、うん。わかったよ」

「ありがとうっ♪ じゃあマンションに帰ろ〜!」

 

 桔梗ちゃんが俺の隣に並んで歩き始める。慌てて俺も、桔梗ちゃんの歩幅に合わせて歩き始めた。

 

 ——ツナ達の後ろをついて行く綾小路は、ただひたすらに、櫛田桔梗の事を注意深く観察していた……

 

 



す。 
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