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ようこそボンゴレⅩ世。実力至上主義の教室へ

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Ⅹ世、中間テストに向けて奔走する。

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ようこそボンゴレⅩ世。実力至上主義の教室へ   作:コーラを愛する弁当屋さん

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Ⅹ世、中間テストに向けて奔走する。

 

 —— マンション近くの自販機前 ——

 

 がこん。自販機で飲み物を3つ買い、2つを堀北さんと綾小路君に渡して道に座り込んだ。

 

「はいっ!」

「……ありがとう」

「サンキュー」

 

 3人で飲み物を飲みながら、無言の時間を数分間過ごす。

 

 その沈黙を破ったのは堀北さんだった。

 

「……あなた達、すごいのね」

「あはは、不良に絡まれてばっかの中学生活だったもんで」

「……俺は書道と茶道を習っていたからな」

 

 ……書道と茶道? それで喧嘩が強くなるものなのか?

 

「綾小路君、それはごまかしてるつもり?」

「……いや、それしか理由が思いつかないんだ」

「はぁ……本当の理由を言うつもりがないって事は分かったわ」

「うん。そういう事にしといてくれ。それよりも……俺はさっきの沢田の方が気になるんだが?」

「えっ? 何で!?」

 

 綾小路君が、自分に向けられた関心を強引に俺に移してきた。

 

「だって、俺の事呼び捨てにしてたろ? 普段は君付けなのに」

「……そうね。私のことも堀北って言ってたわね」

「えっ! そ、それはね〜! 喧嘩になって気が高ぶったからじゃないかな!? うん! きっとそうだよ!」

「……沢田君も本当の事を言う気がないようね」

「えっ!? ほ、本当の事を言っているよ?」

「……はぁ。もういいわ」

 

 そう言うと堀北さんは立ち上がり、飲み干したカンカンをゴミ箱に丁寧に入れ込んだ。

 

「……ごちそうさま。私は帰るわ。あと……さっきはありがとう」

 

 堀北さんの顔が少し赤くなっていたような気がするけど……今はそんな事より、堀北さんと話したい事がある。

 

「あ、待って堀北さん!」

「……何かしら?」

「……勉強会、もう諦めるつもり?」

 

 嫌な話を蒸し返されたと思ったのか、堀北さんの顔が一気に不快そうな顔になった。

 

「……ええ。赤点候補の人達に時間を割くのは、時間の無駄だって分かったもの」

「俺が偉そうにこんなこと言っても響かないかもしれないけど……」

「……何?」

 

 桔梗ちゃんが出て行った時から思っていた事があるんだけど、それを今から堀北さんに伝えようと思う。堀北さんは怒ってしまうかもしれないけど……言った方が堀北さんの為になると信じて!

 

「堀北さんの考えは間違ってると思う」

「……どこが?」

「他人の事を知りもせずに、簡単に決めつけて突き放してしまう所だよ」

「……それの何がいけないの?」

「それが……生徒会長も言っていた君の弱点だと思うからさ」

「!」

 

 堀北さんの顔に陰りが出た。生徒会長に言われた事を堀北さんも気にしていたのだろう。

 

「私の弱点……ね。じゃあ、沢田君はどうするのが正解だと言うのかしら?」

「……それを話す前に、少し俺の昔話してもいい? 実は俺さ、中学一年の時は今よりもっとダメダメだったんだ。テストは全教科赤点だったし、運動もてんでダメ。友達も全然いないし、皆からはダメツナって呼ばれてた」

「……」

 

 堀北さんは口を挟もうとせず、静かに俺の話に耳を傾けてくれている。

 

「そんなダメダメな俺でも、3年間で少しは変わる事が出来た。でも、それが出来たのは俺1人の力じゃない。俺の事を信じ続けてくれる人がいたからなんだよ」

「……信じてくれる人?」

「うん。こんな俺に勉強とかを教えてくれる奴がいてさ。そいつのおかげで俺も少しづつ変わっていって、気付いた時には友達も沢山できてた」

「……それは、その人がすごく優秀だったからだと思うわよ?」

「まぁ、それはもちろんなんだけど。俺的には少し違うんだよね。俺が変われた1番の要因は、そいつが俺の事を信じ続けてくれたからだと思うんだ」

「……信じ続けてくれたから? そんな見えないモノが大事だと言うの?」

「うん。そいつの指導方法はすごく厳しかった。さっきの堀北さんが可愛く見えるくらいにね。でも……そいつはどんだけ俺に呆れても、暴行したり罵ったりはしても、『お前には無理だ』とか、『どうしようもないから諦めろ』みたいな事は絶対に言わなかったんだよ。『いいからやれ、絶対に出来る、諦めんな、いいからやってみろ』って感じで俺を鼓舞するような事しか言わないんだ」

「……」

「指導に厳しさは絶対に必要だよ。でも、ダメダメだった俺からすれば、一番大事なのはその人なら出来るって信じ続けてあげることだと思う。自分が相手を信じているから、相手も自分を信じてついて来てくれるんじゃないかな」

 

 俺の言葉を聞いた堀北さんは、悲しそうに顔を歪めている。

 

「……他人を信じる気持ちがない。それが私の弱点?」

「……俺はそう思うかな」

 

 堀北さんの到達した答えに俺も賛同する。そして、綾小路君も賛同してくれるようだ。

 

「……堀北。俺も沢田の意見に賛成だ」

「綾小路君……そう」

 

 堀北さんは俯き、自分の弱点について考え始める。やがて顔を上げると、彼女のの顔は不安そうな表情に変わっていた。

 

「……私、分からないわ。沢田君の言いたい事は理解できるけど、私が他人にそんな風に接することができるのかわからない」

「大丈夫だよ!」

「え……?」

「俺は信じてるよ! 堀北さんなら他人を信じられる強い人になれるって!」

「……沢田君」

「それに、堀北さんはDクラスで収まっていい人じゃない! 本当はAクラスにいるべき人だって事も信じてる!」

「……どうして、そんな簡単に信じられるのよ……」

「だって俺達、協力してAクラスを目指しているパートナーでしょ? だから俺は堀北さんの事を信じ続ける! だから……堀北さんも俺の事を信じてみてくれないかな? 明日また、絶対に須藤君達を連れて行くから! 堀北さんも、須藤君達にも分かりやすい授業内容を考えて欲しいんだ」

「……でも私、そんな簡単に彼らの事を信じれないわ」

「うん、いきなり変わるのは難しいよね。だからそこまでは望まないよ。堀北さんには、『須藤君達なら勉強を頑張ってくれる』って事を信じてる俺・の・事・を信じて欲しいんだ」

「……沢田君の事を、信じる……」

「うん! まずはそこから初めてみようよ!」

「……」

 

 堀北さんは返事をせずに立ち上がり、俺達に背を向けた。

 

「……他人を信じる事が出来ようになるか、それは分からないわ。……だけど、頑張ってみる。……沢田君、ありがとう」

 

 堀北さんはそう言い残すと、マンションへと帰って行った。

 

「……俺達も帰るか」

「うん……あ、俺はまだトレーニングの途中だった! 綾小路君、俺はまだやる事があるから、また明日ね!」

「そうか……わかった。また明日な」

 

 

 そうして、俺は綾小路君とも別れて、筋トレをする為に空き地へと向かったのだった。

 

 

 —— 翌日 ——

 

 次の日の昼休み、綾小路君と昼ごはんを食べていたら桔梗ちゃんからメールが届いた。

 

  from桔梗ちゃん

 池君と山内君は、もう一度参加してくれるって!

 ……でも、須藤君はダメだったよ。ごめんね(T . T)

 

 fromツナ

 そっか。ありがとう桔梗ちゃん。須藤君には俺からもう一度お願いしてみるよ

 

  from桔梗ちゃん

 うん! 頑張ってね♪  ツナ君(≧∇≦)

 

 今朝の内に、もう一度勉強会に参加するように須藤君達にお願いして欲しいと桔梗ちゃんに頼んでいた。池君と山内君は参加してくれるようだし、上々だと思う。

 

 というわけで、放課後に俺の方からもう一度須藤君にお願いをしてみることにした。

 

 —— 放課後、バスケ部用体育館前 ——

 

 放課後になり、体育館前で須藤君を待っていると、須藤君はすぐにやってきた。

 

「あ、須藤君!」

「あ? ……沢田か。なんの様だ?」

 

 須藤君は、俺を見て嫌そうな顔になったが、話は聞いてくれるらしい。よかった〜。

 

「今日、また図書館で勉強会をやるんだ。須藤君も参加してくれない?」

「ああ? 櫛田にも言ったがなぁ、俺はもう勉強なんて絶対しねぇから」

「……その結果、退学になったとしても?」

「ああ、どっちみち今更足掻いたとこでどうにもならねぇよ」

「……バスケができなくなってもいいって事?」

「っ!」

 

 バスケという単語に、須藤君は敏感に反応する。やっぱり、須藤君にとってバスケが何にも増して大事なモノなんだろう。

 

 ……山本における野球みたいに。

 

「くそっ! もういいんだよ! バスケならここじゃなくてもできらぁ!」

「……でも、プロのバスケ選手になりたいんでしょ?」

「っ!」

 

 須藤君が動揺しているのが分かる。勉強するなら退学でいいって口では言っていても、本心ではこの学校でバスケを続けていきたいんだ。

 

「……」

「この学校でバスケを続けていたいんでしょ? プロになる為に」

「!」

「学校である以上、勉強からは逃げられないよね。高校に行かずにプロを目指す道だってあったと思う。それを分かっててもなお、勉強が嫌いなのにこの学校に入学したって事は……この学校を卒業すれば夢が叶うって思ったからじゃないの?」

「……」

 

 須藤君は何も言い返さず、唇を噛み締めて悔しそうな顔をしている。

 

「……そこまで大事にしている夢なのに、諦めちゃっていいの?」

「……たくねぇよ……」

「え?」

「俺だって諦めたくねぇよ! でもよ! 勉強はどうしても苦手なんだよ!」

 

 ついに本音を叫んだ須藤君。これでいい。あとは俺が信じてあげれば、きっと須藤君は勉強会に参加してくれる!

 

「……俺が手伝うよ」

「あ!?」

「須藤君1人で無理なら、俺が手伝うよ。須藤君が赤点を回避できるように」」

「……お前、何言ってんだ? 昨日の俺見てたろ? 全然勉強できない俺を手伝っても、途中で投げ出したくなるに決まってるだろうが」

 

 須藤君のその言葉を首を振って否定した。

 

「そんな事ないよ。俺は絶対に投げ出さない。須藤君が退学させられたりしないように、全力でサポートするよ」

「……そんな言葉を信じろってのか?」

「うん。信じて欲しい。俺も須藤君を信じるから。須藤君はちゃんと勉強して、中間テストで赤点を回避できるって」

「……沢田、おまえ」

「へへっ、だからさ、もう一度勉強会に参加してみない? 今度は昨日みたいな事には絶対にさせないからさ」

「……堀北は、なんて言ってんだよ。あいつは俺には無理だと思ってじゃねぇの?」

「うん。完全には信じきれてないとは思う」

「じゃあまた昨日の繰り返しに」

「でも!」

 

 弱気な事を言う須藤君に大きな声で活を入れる。

 

「……でも! もう須藤君の事を軽んじて、無理だって諦めたりはしない。それは俺が保証する!」

「……本当かよ?」

「もちろん! その証拠に……ほら、これ!」

 

 俺は鞄からあるノートを取り出し、須藤君に手渡した。

 

「なんだよ、このノート」

「そのノートは堀北さんが作ってくれたんだ。須藤君達が理解しやすい様に、今までの授業の内容を噛み砕いて、分かりやすくまとめ直してくれているよ」

 

 須藤君はパラパラとノートをめくった。

 

「……これを、堀北が?」

「うん。このノートは堀北さんが須藤君達の為を思って作ってくれた……ちょっとキザかもだけど、気持ちが沢山込められてるんだよ!」

「……そうか」

 

 神妙な顔になった須藤君は、急に方向転換をして、体育館から逆方向へ歩き始めた。

 

「……須藤君?」

「あ? 何してんだよ沢田。今日も勉強会があんだろ? さっさと行こうぜ!」

「……うんっ! 一緒に行こう!」

 

 こうして、なんとか須藤君を説得する事に成功した。

 

 須藤君、ありがとう! 俺も約束通り、最後まで君を信じるよ。

 

 

 その後、勉強会はきちんと進行された。

 最初に堀北さんが皆に謝ってくれて、全員がそれを許してくれたのが大きかったね。

 

 堀北さんによる新しい授業プランは、須藤君達にも分かりやすかったようで、須藤君達はメキメキと理解を深めていった。

 

 そうして日々は過ぎていき、ついに中間テストの前日になった。

 その日の昼休みに、綾小路君と桔梗ちゃんが一緒に話しかけてきた。

 

 

 —— 中間テスト前日、昼休み ——

 

「沢田、例の物は無事に手に入れた」

「本当? 2人ともお疲れ様!」

「全然いいよ〜? それにしてもツナ君! ツナ君って切れ者なんだね! よくこんなアイデアを思いついたよね、過去問を先輩から売ってもらうなんてさ♪」

「え? いや、これは……」

「……」

 

 過去問を買う案が俺の発案だと思われているようなので、思わず否定しようとしたら、本当の発案者である綾小路君が無言で首を横に振ったのが目に入った。

 

(……そういえば、綾小路君は目立ったりしたくないんだっけ? 確かにこの事がクラスメイトに伝われば救世主かのように持て囃されそうだもんな)

 

「あはは〜。ま、まあね?」

 

 

「念の為に過去問を手に入れて全員に配ろう」

 

 そう俺に提案してくれた綾小路君が、桔梗ちゃんを誘って先輩と交渉してくれることになっていたんだ。無事に上手く行ってよかったよ。

 

 

(ま、とにかく。これで中間テストの準備は万全だな!)

 

 

 

 そう確信した数日後。ついに中間テストの返却日がやってきた。

 

 

 —— 返却日当日 ——

 

 

 ホームルームの時間になり、茶柱先生が中に入って来る。

 

「よし、それでは、中間テストの結果を貼り出すぞ」

 

 そう言うと茶柱先生は大きな紙を黒板に張り出した。

 全教科の各々の点数が全て記載されている。

 

 今回の中間テストでDクラスは……ほとんどの者が高得点を叩き出していた。

 

「よっしゃあ!」

「私こんな高得点取るの初めて! ありがとう櫛田ちゃ〜ん♪」

「そんな〜、皆が頑張った成果だよ〜!」

 

 クラスメイト達が喜びの声を上げる中、俺はテスト結果を見て固まっていた。

 それはなぜか……ある生徒の一教科の点数が気になったからだった。

 

(あの点数は……やばい気がする!)

 

 そんな言い知れぬ不安感を感じていた。

 そして、その不安は茶柱先生の発言で現実となる。

 

「正直驚いたぞ。お前達がこんな高得点を叩き出すとはな。だが……」

 

 俺達の頑張りを褒めた茶柱先生は……油性ペンを取り出すと、一つの教科の欄に書かれたとある生徒の名前の下に赤線を引いた。

 

 ……これが何を意味するのか、想像するのは難しくない。

 

「お前は赤点だ。……須藤」

「……は?」

 

 先生の告げたその言葉に、クラスメイト達はしばらく呆然としてしまっていた……

 

 



 
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