| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

仮面ライダーBLACK RX〜ネオゴルゴムの陰謀〜

作者:紡ぐ風
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二十一話『揺らめく命』

 それは、突然起きた。国会議事堂内での議論の最中でソフィルが大勢のコウモリ怪人を引き連れて押し寄せてきた。
 「何者だ!警備員は何をしている!」
 首相はソフィルに向かって怯む姿勢を見せることはなかった。
 「我々はネオゴルゴム。貴様が今の首相だな!」
 ソフィルは触手状の左手を延ばして首相を捕らえ、引き寄せる。
 「私を捕まえて、何が目的だ!」
 首相は抵抗する。
 「このままこの議事堂ごとお前達を皆殺しにすることは容易い。だが、いきなり押し寄せて殺すなんて愚かなことをする気はない。我らの要件は一つ。仮面ライダーBLACK RXを差し出せ。お前達も、不必要に命が奪われるのは嫌であろう?なに、即答しろとは言わない。三日の間だけ待ってやる。聡明な首相なら、日本の全国民と仮面ライダーの一人、どちらを優先するべきか解るだろう?」
 ソフィルは首相に選びようのない決断を迫る。そもそも、首相が仮面ライダーの動向を理解などしているはずがない。
 「待て、仮面ライダーが何処にいるかなど、私も知らない。お前達の要求に答えることはできない。」
 「そんなことは解っている。この事態を知れば、奴は勝手にやってくる。」
 「私達は人質ということか。」
 「ああ、安心しろ。仮面ライダーが現れれば、お前達のことは解放してやる。」
 ソフィルは首相達に身の安全を保証する。
 「もし来なければ日本はどうなる!」
 「無いとは思うが、その時は怪人軍団によって自衛隊と警察を襲撃して無力化。その後は無力な人間達を皆殺しにするまで。」
 ソフィルは具体的に話す。
 「そうか。お前達にはそれだけの武力があるということか。私に力があれば、解決できたが、仮面ライダーを信じるしかないのか…」
 首相は大人しくした。

 一連の事件は中継中の出来事であったため、光太郎達は当然事態を把握していた。
 「ネオゴルゴム、とうとう本格的に行動し始めたか!」
 光太郎は椅子から立ち上がり、すぐにでも向かおうとする。
 「兄貴、一人で行くのか!」
 霞のジョーは光太郎を引き止める。
 「大丈夫!必ず勝って、日本の平和を取り戻すから!」
 光太郎はそれ振り切ってキャピトラを出て買い直した自家用バイクを走らせる。
 (今まで武力行使をしてこなかったソフィルがどうしてこのタイミングで?一体、何を企んでいるんだ?)
 光太郎は考え事をしながらバイクを走らせる。海岸沿いを走っているとき、何かが海上から飛び出し、光太郎を海中へ引きずり込んでいく。
 (何者だ!)
 ヘルメットを着けたまま引きずり込まれたため、それを外して光太郎が目を開けると、そこには怪人がいた。それを見た光太郎はすぐに身構える。しかし、
 「バイオライダーに変身すれば会話はできる!俺達に戦う意思はない!」
 怪人は両手を挙げ、交戦の意思はないことを証明する。それを確認した光太郎はバイオライダーに変身する。
 「ネオゴルゴム、何が目的だ!」
 バイオライダーは怪人の行動を警戒する。
 「俺達はネオゴルゴムではない!だからこうして話がしたかったんだ!」
 怪人は身振り手振りで説明する。
 「話だと!」
 「そうだ。ここでは話すのも窮屈だ。こっちへ来てくれないか。」
 怪人の言動と態度から本当に交戦の意思がないことを確認したバイオライダーは怪人に誘導され、ある洞窟へと案内された。
 「ここは…確か…」
 バイオライダーが案内された場所は、かつてクジラ怪人が住んでいた洞窟であった。
 「みんな、仮面ライダーを連れてきたぞ。」
 怪人の声を聞き、数体の怪人達がバイオライダーの前に現れる。目の前に突然大量の怪人が現れたことでバイオライダーは罠だったのかと疑ったが、怪人達の様子を見て警戒を解く。何故なら怪人達は皆、体の一部が変色したり、損傷していたからだ。
 「お前達、その怪我はどうしたんだ!」
 その異様な光景に流石にバイオライダーも心配する。
 「狭いだろうが、座ってくれ。落ち着いて話そう。」
 怪人の言葉を聞き、バイオライダーは座る。
 「それで、一体何があったんだ?」
 「まず、俺達は旧ゴルゴムのメンバーであって、ネオゴルゴムとは一切無関係だ。そのことを踏まえて、聞いてほしい。」
 バイオライダーの質問に、怪人は前置きをしてから話し始める。
 「仮面ライダーによって創世王が倒され、組織としてのゴルゴムは滅んだ。残された俺達は創世王、そして倒された同胞達の仇を取ろうと、最初の頃は思っていた。だが、チャンスを狙っているうちにクライシス帝国が滅び、仮面ライダーも日本を離れた。そうしていると、今度は人間による海洋汚染が加速度的に進んでゆき、薬物、重油、様々なものが俺達の身体を蝕んでいった。ここにいる俺達は数少ない海の怪人達の生き残りだ。とはいっても、最早俺達には戦える力なんてほとんど残っていない。そこで俺達は考えた。このまま暴れたって、仮面ライダーに倒されるのが関の山。倒されるために暴れるなんて馬鹿馬鹿しいんじゃないのか、地球のために、もっと別のことをするべきではないのか。そこで、俺達は一つの答えに辿り着いた。せめてこの命が尽きるまで、俺達の愛した海の中で生き、海の中で終わろうというものだ。言うなれば、ここは俺達海の怪人の終活会場というわけだ。」
 「思えば、多くの仲間がここで最後を迎えた。イッカク怪人も、サンゴ怪人も、ウツボ怪人も逝ってしまった。」
 「ワカメ怪人なんて、群れがまるまる滅んじまったじゃないか。増えすぎていて種として滅びることはないだろうって言われていたのに。」
 怪人達は自身の境遇を語る。
 「それがどうして、俺をここに招いたんだ?」
 バイオライダーは疑問を投げかける。
 「最近になって、ネオゴルゴムを名乗る連中が好き放題していることを知った。奴等はゴムゴムの中でも問題児として危険視されていた連中だ。そいつらが好き放題しているのを、俺達は許せなかった!奴等がやっていることはゴルゴムの真似事なだけで、そこに理想や信念が宿っていない!だけど、今の俺達では奴等と戦うことなんてできない。指を咥えていることしかできないのかと思っていたとき、南光太郎がネオゴルゴムと戦っていると知った。そして、俺達は話し合ってある決断をした。」
 怪人達はバイオライダーを見る。
 「頼む、仮面ライダー!打倒ネオゴルゴムに、協力させてくれ!足手まといになることは解っている。それでも、俺達の信じたゴルゴムの名があんな奴等に滅茶苦茶にされるのを見ているだけじゃダメだって、ようやく気づいたんだ。」
 怪人達は真剣な眼差しでバイオライダーを見つめる。その光景にバイオライダーが戸惑っていると、
 「お前達、そんなことをすれば困惑するのは目に見えていただろう。」
 バイオライダーにとって聞き覚えのある声が聞こえ、身構えていると、洞窟の奥からかつて激闘を繰り広げたゴルゴムの大怪人、ダロムがいた。
 「ダロム、お前がどうしてここに!」
 「以前、ショッカーによって歴史が書き換えられた事件があったはずだ。」
 「歴史改変マシンのことか。」
 ダロムの言葉を聞き、バイオライダーは事件のことを思い返す。
 「本来、歴史は戻り、私の存在も本来の歴史通り消えるはずだった。しかし、何の悪戯か、私の存在は消えず、取り残されてしまった。海へ向かうと、かつて私が人間を滅ぼすために海を汚そうとしていたが、それと同じことを人間が行っていることを知り、私は嘆いた。結局、私がやろうとしていたことは、私が愚かだと見下していた人間と何も変わらなかったのだと。」
 ダロムは思い返すように話す。
 「海が心配になった私は直ぐに海の中へ向かった。大神官としての姿はすぐに維持できなくなり、大怪人の姿へと戻ってしまい、彷徨っている所を怪人達と合流し、ここで共に最後を迎えることに決めたのだ。南光太郎よ、我々と幾度となく拳を交えたお前なら、我等の想い、理解できるのではないか?」
 ダロムの言葉に、バイオライダーは頷く。
 「すまない。我等の我儘に付き合わせるようになってしまい。」
 「だが、即答は出来ない。地上では、ソフィルが議事堂を占拠している。それをどうにかしないといけない。」
 「ソフィルだと?それなら尚の事我等が行かなければ。その奪還作戦、同伴して構わないか?」
 「…一度考えさせてくれ。仲間達と相談してから結論を出したい。」
 「そうか。助力が必要ならすぐに呼ぶといい。」
 ダロムはバイオライダーを地上へ帰した。
 「ダロム様、ライダーは俺達の話を聞き入れてくれるでしょうか。」
 怪人は心配になりダロムに質問する。
 「奴のことだ。最終的には協力関係を結ぶことになるだろう。奴は正義感に強い男だ。我々ゴルゴムが一番良く解っているはずではないか?」
 「それは…そうですね。」
 ダロムの言葉に怪人は納得した。

 「兄貴、それってダロムの罠なんじゃないのか?」
 「お義兄ちゃん、私もそう思うわ。」
 光太郎はキャピトラへ戻り、海での出来事を話すが、霞のジョーと杏子は罠ではないかと疑う。
 「でも、それだけ体が傷ついているのに、嘘なんてつくのかな?もし騙すのが目的なら、そのために体をボロボロにするのは割にあっていないんじゃない?」
 「確かに、罠にしては不自然な気もする。」
 それに対してひとみと茂は傷を負っていることに信頼を寄せる。
 「光太郎さん、議事堂には大量の怪人がいるのに、もし海の怪人が光太郎さんを裏切ってネオゴルゴムに味方したら、手がつけられなくならないかしら?」
 「それに、もし裏切らなくても、それだけの乱闘になれば、議員達の命だって危険に晒されてしまうわ。」
 克美と玲子は現実的なアドバイスを光太郎にする。
 (どうする、どうすればいいんだ…)
 仲間達の話を聞き、光太郎は悩む。
 (来てくれ、仮面ライダー!)
 応答室で首相は祈る。
 (待っているぞ、南光太郎。)
 洞窟内で、ダロム達も目を瞑りながら返事を待つ。果たして、光太郎はどのような決断をするのか。
 続く

 次回予告
 最後の大怪人、ソフィルの仕掛ける狡猾な罠。非道な計画に光太郎の怒りは頂点を迎える。『平和を賭けた激戦』ぶっちぎるぜ!
  
 

 
後書き
 怪人図鑑
 大怪人ダロム(復活)
 身長:不明
 体重:30kg
 能力:破壊光線、エネルギーの吸収及び供給
 ショッカーが2015年に起こした歴史改変マシン事件の影響で撃破されてない歴史の大神官ダロムが歴史の取りこぼしによって偶然にも現代に残ってしまい、海洋汚染の進んだ海に入ったことで大怪人へと退化した姿。外骨格の一部は変色し、内臓が汚染物質で侵食されていることもあり、かつては使えた様々な超能力も使えなくなっている。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧