| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

神・英雄・人

<サマンオサ>

「あのねフィービー…君が僕の事を尊敬してくれるのは嬉しいんだけど、この絵の僕はまるで神様みたいに描かれてるよ!止めてくんない!?」
目の前に座る絵の作者…フィービーに向かい、辟易した表情で懇願するリュカ。

「何で?リュカは私にとって英雄よ!この国の救世主よ!神と言っても良いくらいよ」
フィービーの言い分は妥当な物だ…
今この国でリュカは、精霊神ルビスより知名度が高く、国を正し民を救い悪を倒す超常的存在に昇華されているのだ。

「それは違うよ…僕は人だ!なんの力も持ってない平凡な人間なんだ!」
「そんな事無いわ!リュカは私達を…この国を救ってくれたじゃない!力無き者に出来る事では無いわ!」
盲目的にリュカを崇める彼女には、効果の薄い台詞な様子…

「はぁ…違う違う…違うよ!もし僕が神ならば、この国があんな酷い状況になる前に何とかしたんだ…そこのバカ王が変化の杖を奪われ、王位をも奪われた時に現れて、あのバケモノを倒したんだ!そうすれば力無き弱者が虐げられ、フィービー…君の様な()を不幸にする事も無かったんだ!」
サマンオサ王の前で、バカ王と侮辱しても誰も怒らない。
皆黙って聞いている。リュカの存在とは何なのかを考えている。

「僕を神として人々に知らしめる事は酷い侮辱なんだ…いい加減不幸の極みで現れて、怒りに任せてバケモノを倒し、復興を手伝わずに帰って行く…そんなの神じゃ無い!そんなの英雄じゃ無い!…でも人ではある。自分の手の届く範囲でしか物事を解決出来ない凡庸な人間だ!」
「でも…リュカが居たから…リュカがこの国に来てくれたから、私達は今生きている…それは事実よ」
当然ながらフィービーも引かない。
周りにいる王様や大臣等も、フィービーの意見に大きく頷く。

「神とは…誰にも出来ない事をやってのける存在だ!僕のやった事は、僕じゃなくても出来る事…バケモノと戦う力さえあれば、誰が行っても良かったんだ。ただ偶然…本当に偶然僕がこの国へ訪れ、あの惨状を目の当たりにし、怒りを滾らせたからこうなっているだけなんだ」

「……………」
フィービーは何も言わない…納得したからではなく、納得は出来ないが、リュカの言い分も理解出来るから…
「はぁ……」
その事が分かるリュカは、大きく溜息を吐き自分の過去を語り出した。
「僕はね…目の前で父親を殺されたんだ………」



自分が人質になってしまたが為に、目の前で殺される父の事…
まだ幼き頃より、10年間もの奴隷としての人生…
結婚し、子供が産まれたその日に、愛する妻を攫われ、救い出す事も出来ず8年間石にされた事…

「………だから僕は神など信じない。もし神が居るのなら、此処まで酷い事をされたのは何故だ?せめてビアンカを攫うのを防いでくれても良いじゃないか!8年間も石になる事を防いでも良いじゃないか!だが実際は何もしてくれなかった…何故なら、神など存在しないから!」
静まりかえる会議室には、リュカの静かな声だけが響き渡る…
リュカの過去に…リュカの苦労に…そしてリュカの思いに押し潰されそうになるフィービー達。


「フィービー…僕の事を描くなとは言わない。でも描くのであれば、僕を人として描いて欲しい。僕は多少人より戦えるだけであって、神でも英雄でも勇者でも無い…直ぐに感情に流され、善悪を見失い、利己的な事しか考えない臆病な人間だ。正義の心に動かされてこの国を救ったのではない…弱者を虐げるクズ共に、同じくらいの苦痛を与えてやりたいと思う邪悪な心から戦ったんだ!結果が同じなだけで、この絵の様な人物など存在しなかったんだよ…何故なら僕は人だから…ただの人なんだからね」
リュカはフィービーの頭を優しく撫で、優しい口調で自分を語る。

彼女は尊敬するリュカの事を理解する事が出来てなかった自分が恥ずかしくて泣いていた。
だが、そんなフィービーを責める者は誰も居ない…解らなくて当たり前なのだ。
重要なのは、解ったこれからをどうするかなのだから。

「よし!ワシからお触れを出すとしよう。『リュカはこの国の英雄であって、神ではない!必要以上に神聖視する事はリュカに対する侮辱であり、本人の望むところではない!救国の英雄に対する無礼は、国家に対する不敬である』と…どうかね?」
サマンオサ王からの提案に、
「う~ん…『英雄』と言うのが嫌だが…まぁしょうがないか」
と、渋々ながら承諾する。
そしてやっと会議室に落ち着いた雰囲気が戻ってきたのだ。


「してリュカ殿…本日の来訪はどの様な用件ですかな?絵の事だけとは思えませんが…」
そうリュカは…いや、アルル達はサマンオサに、最終決戦前の挨拶へと訪れたのだ。
リュカの怒りに当てられて、すっかり挨拶を忘れていたアルル達…
慌てて恭しく挨拶するも、王様も家臣の方々も全く気にすることなく低姿勢で接してくれる。この場で一番偉そうなのはリュカだけだ。

「あ、そうだ!おいカンダタ…この絵を美術店に返してこいよ!」
「はぁ?何で俺がパシらにゃならねーんだ!?旦那が返すって言ったんだから、旦那自らが行くべきだろう…あの店主はくれるって言ったのに、頑なに断ったのは旦那なんだから」
「うるせー!今僕はこの国の国王陛下と大事なお話をしている最中だろ!それとも何か?王様より下町の商人を優先しろと言うのか?それがお前の考えか?」
一切恭しい態度を取らないクセに、面倒事を回避する為なら如何様にでも口が回る男。

今リュカが城下へ行けば、また人集りが出来、面倒な事この上ないのは明らかだ。
そんな状況にリュカが飛び込む訳もなく、リュカの中の序列で一番低い地位のカンダタが指名されるのは自明の理である。
カンダタも、これ以上抗っても痛い目を見るのが分かっているので、取り敢えずは大人しく従うのだ…
「いいじゃないカンダタ…それを返し終わったら、私と城下町でもデートしましょうよ」
気を利かせたモニカが、カンダタの腕に抱き付き一緒に城下へと出て行った…

そしてアルル達はサマンオサ国王と3時間程会話をし、城を後にする。
城下でカンダタとモニカに合流すると、ラーミアの背に乗って次の地へと向かうのだった。
次の地はポルトガ…
船を黒胡椒と交換で譲ってくれた国…
折角譲ってくれた船の現状を説明する為に、ラーミアはポルトガへと突き進む。

リュカが言わないと、嫌がらせの様に高速で飛ぶラーミアの背中にしがみついて…
「リュカさんが言わないと、ゆっくり飛んでくれないんじゃ、俺達にはこの上では出来ないよ…」
嘆くかの様に呟くウルフ…
流石はリュカの弟子…この状況でも余裕がある様だ。



 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧