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外見や肩書きでなく

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第二章

「部長配置換えになるよ」
「そうなんですか」
「英訳の方にね」
「あの人英語喋られるからですね」
「すらすら読めるからね」
「それで、ですか」
「うん、正直うちの部だとね」 
 如何にも中年のサラリーマンといった外見の課長はともりに話した。
「営業だとね」
「部長世間知らず過ぎるんで」
「どうにもならないからね」
「だからですね」
「前の営業部長が戻ってきて」 
 そしてというのだ。
「あの人は英訳の方でね」
「頑張ってくれるんですね」
「そうなったよ、いやしかしね」
 課長はやれやれといった顔で述べた。
「自衛官としては凄くてもね」
「自衛隊以外知らないとですね」
「あの人大学出てすぐに入隊して三十年以上いたからね」
 自衛隊にというのだ。
「本当にその外のことはね」
「ご存知なかったですね」
「自衛隊で偉い人ってああした人多いらしいよ」
「世間知らずの人が」
「政治家でもいたね、都知事選に出てた」
「あの人ですか」
「あの人の発言や行動見てもね」 
 そういったことをというのだ。
「わかるよ、自衛官として優秀でも」
「世間知らずなんですね」
「そんな人が多いことはね」
 このことはというのだ。
「覚えておかないとね」
「駄目ですね」
「うん、だからそれを考えて」
「お仕事してもらうことですね」
「それが大事だよ」
「大事なのは中身ですね」
「そうだね」
 課長はともりのその言葉に頷いた。
「世間知らずだとね」
「営業とか無理ですし」
「どういった人かだよ、肩書きもね」
 これもというのだ。
「別だよ、じゃあ湯上谷さんはこれからもね」
「営業ですね」
「こっちで頑張ってね、頼りにしてるから」
「わかりました」
 課長に笑顔で答えた、そしてともりは働き続けるが。
「英訳の方で実力発揮しているのね元自衛官の人」
「凄くね、いや肩書きでお仕事決めるんじゃなくて」
「中身で決めることね」
「それが大事よ」
「あんたと一緒ね、あんた外見は子供でも」
 この日も一緒に飲んでいる、その中で言うのだった。
「営業に向いてるから」
「いいのね」
「ええ、やっぱり人間大事なのはね」
「中身ね」
「そうね、じゃあこれからも頑張ってね」
「そうするわ、それでね」 
 ともりはビールを飲みつつ友人に言った。
「今度紹介したい人いるけれど」
「彼氏さん?」
「そうなの、結婚を前提としてね」
 ともりは笑って話した。
「お付き合いしてるけれど」
「そうなのね」
「今度ね」
「わかったわ、やっぱり人は外見じゃないわね」
 友人はともりの話にあらためて笑って応えた。
「中身ね」
「こうしたことでも?」
「そう思ったわ、じゃあね」
「ええ、紹介するわね」 
 友人に笑顔で言った、そしてだった。
 友人はともりに彼女の交際相手を紹介してもらった、するとドラマに出て来るみたいな美形でしかも優しい人物だった、それであらためて中身だと思ったのだった。そんな人と交際しているともりを見て。


外見や肩書きでなく   完


                 2023・5・25 
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