夜勤族の妄想物語 4.異世界ほのぼの日記2~異世界でも夜勤になったので堂々と昼呑みします~
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53
前書き
守が震えていた理由とは。
-53 憧れていた存在-
守には幼少の頃から憧れていた存在がいた、自らの記録の為ではなく警察に協力して平和の為に走っていた伝説の走り屋、通称「赤鬼」。
ある年の夏の日、父親に手を引かれ近所の山にあるスポットに花火を見に行っていた当時5歳の守は一緒にゆっくりと歩いて山を下りていた。
自動販売機で父親に買って貰ったオレンジジュースを胸に抱え、ニコニコと笑いながら父親と歩く。
当時親子が言ったスポットは父親のみぞ知る秘密の穴場だったので、周りには山を行き来人がいない・・・、はずだった・・・。
音「ドドドドドドドド・・・、バウーン、バウーン!!」
山の麓から幾重にも重なる激しい爆音が近づいて来た、暴走族のバイクが山の下から登って来たのだ。父親は守に怪我をさせない様に、そして自分も無事に帰る事が出来る様に早足になって家路を急いだ。
何事もなく暴走族達が過ぎていった後、数台のスポーツカー何組かに別れてが山を登って行った。ゆっくりと走って排気音を可能な限り抑えて静かに・・・、静かに・・・。
真っ暗な中、父親の懐中電灯の光で一瞬だけ見えた赤いエボⅢのボディ。左のヘッドライトに刻まれた稲妻のマーク・・・。
父親「ありゃ有名な「赤鬼」ってやつか?初めて見たな・・・。」
守(幼少時代)「「赤鬼」って?」
父親は警察に協力する正義の走り屋だって言っていた、ただ巷では怖い奴が乗っている事で有名になり恐れられていたそうだ。
2人が家路を急いでいると廃車となっていた大きなバン等が数台、道を遮る様に横向きに置かれている。
すると頂上から勢いを付けて暴走族のバイクが降りて来た、耳の鼓膜が破れんばかりの爆音と共に降りてくる数台。
廃車のある辺りを過ぎた所に警察車両があり、そこにいた警官2人に急いで降りて来るように導かれ保護された。
1人は新人警官だったのであろうか、手を震わせながら父親を安全な所に連れていく。一方で守は先輩の警官に連れられた、経験を積んでいたが故に大きくて暖かだった手は震えておらず落ち着いていた。確か、そこにいた仲間から「署長」と呼ばれていた気がする。
その警官達は親子を山に張られたバリケードの出口辺りまで連れていくと、署長はしゃがみ込み守の頭を撫でた。
署長「今夜は本当に危ないから、お父さんの言う事をよく聞いて、ちゃんと手をつないで帰るんだよ。」
すると後輩の新人警官が近づいて来た。
新人警官「署長・・・、奴らが中腹まで降りて来たみたいです。走り屋達もピッタリと後ろに付いていると連絡がありました。」
署長「分かった、すぐ行くよ。では、これで。おやすみなさ・・・。」
署長の声をかき消す様にバイクから発せられる爆音が聞こえて来た、そこにいた
4人は両手で耳を塞ぐのに精いっぱいで何もできなかったが、遠くでスポーツカー2台に追い詰められた暴走族のバイクがコーナーを曲がり切れず、真下に警官が設置していたマットへと落ち込んだ。
その2台のバイクを追い詰めていたスポーツカーの内、1台が先程の赤いエボⅢだったのだ。
走り屋達は目的を達成すると、何も無かったかのように山を登って行った。
父親の言葉だけの微かな記憶・・・、本当にそれだけだがとても印象が強かったので守はずっと「赤鬼」に憧れていた。そう・・・、あの4WDを乗りこなしていた「漢」に・・・。
十数年経った今、ずっと憧れの対象だったエボⅢが目の前にいる。ただ思ってもいなかった、持ち主がまさかの女性で、しかも母親の友人である渚だったなんて・・・。
それもそうだ、当時渚は自らが「赤鬼」である事を隠すために普段は軽自動車に乗っていたから無理もない。
渚「あれ?そこにいるのは守君じゃないか、大きくなったねぇ。私の事覚えているかい?」
守(現在)「覚えているも何も・・・。渚おばちゃんだよね・・・、いや俺がずっと憧れていた「赤鬼」さん・・・。良かったら生姜焼きを食べて行って下さい!!」
守は涙が溢れそうになって仕方が無かった、こんなに嬉しいハプニングは一生に一度あるかないかだ。
渚「あれ?守君にエボⅢの事言ってなかったかね、何か悪い事しちゃったね。」
真希子「いや逆だよ、あの子あんたとエボⅢに会えて嬉しかったみたいだよ。」
後書き
この後守は、エボⅢの写真を連写したそうだ。
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