自然に帰すべきと

「この子達は普通には」
「飼えないか」
「そうした子達です」
「そうか、元々野生の生きものだからか」
「そうです」
「そうなんだな、それじゃあな」　
　少し考えてからだ。
　セルゲイは獣医そして一緒に病院に来ている妻に話した。
「この子達は一旦動物園に預けるか」
「そうするの？」
「ああ、猫じゃなくて野生の生きものだからな」
　だからだと妻に話した。
「それでな」
「動物園に預けるの」
「事情を話してな」　
　そしてというのだ。
「野生に帰してもらおう」
「野生の生きものだから」
「折角家族に迎えたけれどな」
　セルゲイは彼等に愛着も得ていた、だから名残惜しく思っていた。それで顔に残念さも出して語った。
「野生の生きものだからな」
「動物園に事情をお話して」
「そしてな」
　そのうえでというのだ。
「預かってもらってな」
「野生に帰してもらうのね」
「野生の生きものは野生で過ごさないとな」
　今度は達観した顔で述べた。
「神の思し召しはそうだしな」
「だからなのね」
「ああ、そうしてな」
　そしてというのだ。
「その世界で幸せに過ごしてもらおう」
「わかったわ、それじゃあ」
「そういうことでな」
　こう言ってだった。
　ヌマルネコの子達をそうしてもらった、彼はその後で妻に話した。
「これでいいんだ」
「別れて残念でも」
「これが自然の摂理でな」
「自然のことも神の思し召しだから」
「これが一番だ、俺も悲しいけれどな」　
　彼等と別れてというのだ。
「仕方ない」
「それじゃあそういうことで」
「あの子達の幸せを願おうな」　
　こう言って動物園に行くと彼等は幸せそうにそこにいた。
「ニャ～～～」
「ナァ～～～」
「ウニャ～～～」
　猫の様に兄弟で仲良くじゃれ合っていた、そこで飼育員の人に三匹は成長したら保護区に入ると言われた。そして夫婦で彼等のそれからの幸せも願ったのだった。


自然に帰すべきと　　　完


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２０２３・５・２２