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その小さな女の子のことが気になってしまったんだが、どう接していけばいいんだろう

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14-4

 その年の夏、盆休みに僕はタカシに酒でも飲もうと連絡を取って帰省した。昼ごろ実家に着いたのだが、庭でかがみさんが子供達をビニールプールで遊ばせていて

「秀君 どうしたのよ 彼女は?」

 僕は聞かれることは覚悟していたのだが、あんまり話す気も無かったので

「彼女? 誰のことだよ?」と、無愛想だったのだろう。

「ななのちゃんに決まってるじゃぁ無いの! 置いてきたの?」

「知らん! もう ずーと 会ってない」

「えー 喧嘩したの? 秀君からちゃんと謝りなさいよ 昔っから 優柔不断で変にプライド高いんだからぁー 本当にー」

「そんなんちゃうよー ほっといてくれよ!」

「ほっとけないわよ あんな良い子 頭下げてでも、手放しちゃぁダメよ! あんたがあの子を幸せにしてあげるんちゃうん?」

「かがみさんには わかんないことってあるんだよ!」と、僕は構わず家の中に入って行った。表の会話は聞こえていたんだろうか、母は僕にはななののことは触れてこなかった。

 夜、待ち合わせの居酒屋に行くと、タカシの向かいにサナエが座っていた。

「なんで サナエが居るんだよー」

「タカシに聞いたのよー シュウが来るからって 私も会いたいからネ 嫌なの?」

「いや そーじゃぁないけど びっくりしただけ」

「びっくりしたのは こっちだよ いきなり連絡くれるなんてな」

「うーん タカシと久々に飲みたいなって思いついたから・・」

「シュウ 何かあったの? あの可愛らしい彼女とうまくいってないの?」と、サナエはさすがに鋭く察したようだった。

「彼女じゃないよ もう ずーと会ってない」

「へぇー もったいないネ まぁ ちょっと年が離れすぎてるモンネ もう やっちゃてたの?」

「サナエ あんまり詮索するな シュウ 飲もうぜ 久々だもんなー」

 そして、2時間近くウダウダと飲んでいたら、タカシの電話が鳴って

「すまん バイトが急に明日休むって言ってきたから、これから明日の仕込みの段取りしなきゃぁなんないんだ 帰るから すまんな」

「そうか これからじゃぁ 大変だなぁー じゃぁ 僕達もお開きにするか」

「いや お前達は、もう少しやってろよ サナエも居るしー シュウ 楽しかったよ 又 声かけてくれよな じゃぁ」
 
と、言って帰ってしまったら、サナエが僕の隣に移って来て

「シュウ 私が相手するから楽しもー ダメ?」

「いや そんなことないけどナ サナエ だいぶ飲んでるけど いいのかぁ?」

「ウン 平気 私 今 独り暮らしなんやー」

「そうか 家 出たの?」

「ウン なにかと うっとおしいしー 春からネ なぁ ウチにこない?」と、肩を寄せてきた。

「いや それはなぁー 若い女の子やし・・」

「へぇー シュウにも、私のこと 女の子って意識あるんやー でも 最近 又 やせたんやでー 努力してナ」

「そうだなー 前に会った時より スリムになったな 高校の時みたいに」

「そうよ! 私 高校の時 本当はシュウのこと好きやったんやでー なんとなくシュウはシュッとしてて、他の子みたいにベタベタした感じ無かったもんな」

「そうか 知らなんだなぁー」

「なぁ 私 フリーなんやー どう? 実は まだ あそこもまだ新品なんやでー 意外でしょう? でも、シュウとやったら・・」

「バカ言うなよ 酔っぱらっとんかー そんなの安売りするなよ もっと 大切にナ」

「酔ってなんかないよー 安売りちゃうねん 本当にシュウとやったら、一度っきりでもかまへんと思ってる 私のをあげても・・あんなネンネみたいなの相手じゃぁなくて、もう熟してきてるでー」

「もう やめろやー そんな気になれないから・・ やっぱり もう 帰ろ 送るよ」と、僕は無理やり彼女を店から連れ出して、彼女のマンションの道を聞いていた。

 歩いている時も、サナエは僕の腕を取って組むようにしてきて、大きめの胸を押し付けてきていた。マンションの前に着いた時も、しつこく部屋に入れようとしていたけど、断ると

「ねぇ じゃぁさ 一度だけ 抱きしめてキスしてー」と、せがんできた。だから、建物の陰に行って、僕はサナエを抱きしめて、ぷんぷんと酒の匂いがする唇を合わせていった。その時、僕はななのの柔らかい唇とは違うと感じながらも、ななのを想いだしながら、お互いに舌を絡ませてむしゃぶりついてしまっていた。

 サナエにはすまないと思いながら、僕はただ寂しさを紛らわすだけと思ったのだ。別れ際にも「私と付き合って」と、言われたが「その気になれない しばらくは」と、優柔不断な返事をしてしまった自分に、最低な男だなと責めていた。

 次の日もかがりさんと顔を合わせないようにして、早々に家を出てきたのだった。 
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