宇宙人のハリマオ漬け
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
「メッセージの意味と友情の確かめ合い」
わたしは何も言えない。言えるわけがない。だって、それは本当のことなのだから……
「ごめん、こんな女々しいやつでごめん」
違う、そんなことないよ。そう言いたいのに声が出ない。喉に何か詰まってしまったかのように苦しくて、わたしは泣きそうになるのを必死でこらえていた。だから、彼の顔を見ることもできなかった。
「さよなら」
彼は立ち上がると、その場を去っていった。
わたしは追いかけることも、声をかけることもできなかった。ただ、その場にうずくまって、嗚咽を漏らすことしかできなかった……
もう戻らない時間のことを想って泣いたのは生まれて初めてだった。もう、二度と戻ってこない時間を惜しむように泣いたのも初めてのことだった。そして、今だけは泣かせて欲しいと、そう思った。だって、泣くのは今しかないのだから……。
「おねーちゃん」
誰かが呼んでいる声が聞こえる。でも、目を開けたくない。もう少し眠らせてほしいのに……
「おーい、起きてよー」
ゆさゆさと体を揺さぶられる。わたしは眠い目をこすりながら体を起こした。そこは学校の教室で、目の前には知らない女の子が立っていた。
いや知らないはずはない。この子の名前は知っているはずで……あれ?思い出せない?自分の名前さえも……
目の前の女の子が口を開く。
「……だれ?」
***********(前編)終わり******
「こんばんわ。はじめまして。私、谷岡印刷の宇宙人です」
アーモンド状の黒い瞳が光った。肌の色は青白くまるで雪のように真っ白だ。髪も同じ色をしておりショートカットで毛先は外ハネしていてどことなく犬を連想させる髪型である。年齢は10代後半だろうか、幼さが残る顔立ちをしているもののどこか妖艶な雰囲気を感じさせる少女だった。
「……はあ?」
わたしが返事をするよりも早く、隣で本を読んでいた親友が顔を上げた。「あら、宇宙ちゃん。いらっしゃい」宇宙と呼ばれた少女は、ぺこりとお辞儀をした。そして、わたしの方を向くと言った。
「貴女が噂の女子高生探偵さんですね?お話伺ってます」そう言って彼女は微笑んだ。
彼女の名前は『田淵星子』というらしい。どうやら彼女もここの常連らしく、毎日のように通っているそうだ。そして、
「まあ、そんなところかしらね」と彼女は返事をした。「でも残念、私は名探偵じゃないわよ」そう言いながらも彼女はまんざらでもない様子だった。きっと憧れの眼差しで見つめられたのが嬉しいのだろう。
「さすが宇宙人探偵!素晴らしいネーミングセンス!」と少女が言う。彼女は興奮した様子でぴょんぴょんと飛び跳ね
「私も宇宙人になりたーい!!」と言うと窓の外へ飛び出した。
次の瞬間、ドーンという爆発音とともに窓ガラスが一斉に割れてしまった。割れたガラス片は宙を舞い、キラキラと輝いて地面に降り注いでいく様子はまるで映画のワンシーンのようだった。幸い窓の近くに人がいなかったため怪我人は出なかったようだがもし近くにいれば大騒ぎになっていたことだろう。いや、そもそもこれは偶然なのか? わたしにはどうも彼女が意図的に行った行為としか思えなかった。彼女は、割れたガラスの破片の上を踊るように歩いている。その様子はまさにサーカスの道化師さながらであり見ているこっちまで楽しくなってしまうほどだ。だが、当の本人はとても痛そうだった。スカートがめくれている。
「あいてててっ!お尻打っちゃっいましたぁ〜」と言いながらも笑顔を浮かべているところを見ると、見た目以上に頑丈なようだ。
「まったく何やってるのよ……」と言って呆れているのは隣の席の親友、鈴木麻衣子だ。彼女は呆れたようにため息をつくと、彼女に近づいていく。
「危ないから早く降りてきなさい」と言い、手を差し伸べた。
ところが少女は、その手を取ることなく自力で飛び降りると何事もなかったかのように立ち上がった。そして笑顔で答えた。
「これくらい平気ですよ」「でも、スカート破れてるわよ」
麻衣子が指摘した通り、彼女のスカートには裂け目ができており、そこから白い下着が見え隠れしていた。よく見ると足の部分に血のようなものがついているのが見えた。かなり痛々しい様子だが本人は全く気にしていないようだった。それどころか嬉しそうな表情を浮かべているように見えるのは私の気のせいだろうか?それとも、そういう趣味なのだろうか?だとしたら少し引くな……
そんなことを考えているうちに少女の体はみるみる縮んでいき身長130センチほどの幼女の姿になってしまったではないか。これにはさすがに驚いたようで、麻衣子も目を丸くしている。
ページ上へ戻る