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宇宙人のハリマオ漬け

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「宇宙飛行士の夢と秘密の交流」

「そうかな? 宇宙が終わって地球が終わるとき、わたしたち、どうなっているの?」
「わかんねぇ。でも、どうせ死ぬなら今のままでいたほうが幸せじゃないか?」
「そうね。」
「そういえば、お前の彼氏どうなった?」
するといきなりい宇宙人が口を挟んだ。
「貴方の彼氏、酷い人。タニヲカ印刷で働いてる。宇宙飛行士の夢、挫折した。貴方の彼氏、私をいじめた。貴方の彼氏、最低のニンゲン」
「は? 何言ってんだ、おまえ」
「え? どうゆうこと?」
「えっと、つまり、コイツが言うには、お前の彼氏が彼女を虐めたせいで、彼女が学校に行けなくなったらしい。それで、今、彼女は不登校になってる。」
「え?! ちょっと待って! どういうこと? それ」
「いや、俺に聞かれても……」
「私は、貴方の彼女を助けてあげた。だから、今度は私の番。」
「ちょっと待て、話が見えない。助けたってなんだ?なんでウチュウジンが関与している?」「だから、私が彼女に教えてあげた。」
「何を?」
「ウチュウジンについて。」
「え? ちょっと、ウチュウジン、アンタ一体なんの話をしているの?!」
「ウチュウジン? ああ、彼の名前ね。」
「名前なんかどうでもいいわよ。それより、どうして、わたしが彼に振られたこと知ってるの?!」
「だって、あの後、彼女、泣いてた。でも、彼は慰めなかった。」
「そりゃそうだろ。だって俺は彼女の彼氏じゃない。」
「そうだけど、ウチュウジンにも人権はあるだろ。名前ぐらいつけてやれよ。…そうだな。『シロ』はどうだ?」
「シロ、犬みたいですね。でも気に入った。そう、私は今日からウチュウジン・シロ。よろしく」

「ああ、よろしく」
「ちょっと、勝手に話を進めないでよ」
「だって、君が言ったんじゃないか。」
「え? あ、あれは言葉のあやっていうか」
「あの時、君はこう言った。」
「あのとき?」
「『ねえ、宇宙人のあなたに聞きたいことがあるの』って言った。」
「ああ、確かに言いましたけど……」
「そして、宇宙人が言ったのは、君と友達になりたいということだった。」
「うん、そうね。……え?」
「そして僕は言った。その申し出を受ける代わりに、宇宙人のことを話して欲しいと」
「あ、そうね。」
「だから、俺らは宇宙人の秘密を知ることになった。」
「ええ」
「でも、それだけでは秘密は不十分だと思ったので、俺らも、自分の秘密を教えた」
「……うん」
「そうして、お互いのことを教え合った。それが、今朝のことだ。」
そう、確かに今朝そう言った。でもわたしの求めていた回答とは違った気がする。
そしてわたしはこのウチュウジンの言葉に妙に納得していた。なぜかわからないが……
今朝の宇宙人との会話を思い出しながらわたしは言った。
宇宙人って本当にいるんだ。それも身近なところに。わたしはそのことが信じられないと同時に、嬉しかった。だって、宇宙人と友達になれたんだから。
わたし達は、それからしばらく話し込んだ。わたしの質問に対して、宇宙人……シロちゃんと、彼は楽しそうに話してくれる。わたし達三人(?)の関係は不思議な関係だったが、それでも、楽しい時間は過ぎていった。わたし達は、すっかり仲良くなっていたのだ。
ただ一つだけ問題があるとしたら、わたしの胸の中に、シロの事が気になっている自分がいることだけだった。

***
しかし、わたし達の幸せな時間は長く続かなかった。突然、ドアが開いた。
そこには彼が立っていた。
彼は怒りに満ちた表情を浮かべている。彼はずかずかと入ってくると、わたしの手首を掴んだ。
痛い。
彼はそのままわたしを引きずるようにして部室を出た。
部室の外に連れ出されたわたしは、彼の手を振り払った。
彼は無言のまま、睨みつけてくる。
怖い。こんなに怒った彼は初めて見る。わたしは恐ろしくて声が出せなかった。
彼は何も言わずに歩き出す。わたしはその後をついていくしかなかった。
彼はどんどん歩いていく。学校を出て、商店街を抜け、繁華街を通り過ぎ、公園についたところでようやく足を止めた。そして、ベンチに座った。わたしも隣に座るよう促された。
沈黙が続く。
わたしは、何か言わなければと思った。でも言葉が出てこない。
やがて彼が口を開いた。
その声は震えていた。
わたしは、彼が泣いていることに気がついた。彼は、静かに泣いていた。その姿を見て、わたしは彼を抱きしめたくなった。でも、できなかった。わたしは彼に触れることができなかった。触れてはいけないような気がしたから……
「ごめん、星子君」
彼は泣きながらそう言った。
「私、星子君のこと好きだった」
「うん」
「本当は、今日、告白するつもりだったんだ」
わたしは黙っていた。彼は言葉を続けた。
「でも勇気がなくて言えなかった。」 
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