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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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アルタ・フェイス

 
前書き
もうこのまま行くと夏頃には原作に追い付きそうな勢いですが、追い付くと現在出てきてるゴッドセレナみたいな伏線が張られた時にそれが解決するまでストーリーが進められないのが難点になることに気が付いてしまいました。
でもシリルvsハクのウェンディ争奪戦も早くやりたいし・・・今からでも原作の更新速度上げていただけないでしょうか?笑
隔週よりも毎週読めた方が読者としても幸せなので←私情やん|ョω・`)マジデ 

 
次々に地面から現れる巨大な手。俺たちはそれを掻い潜りながら黒月山を目指していた。

「皆さん!!ここからなら水の翼(アクアエーラ)が使えます!!一気に黒月山へ!!」
「おし!!行くぞ!!」

トウカの魔法により瞬間移動する俺たち。そこは黒月山の中腹と思われる場所だった。

「すみません!!頂上までは届きませんでした」
「問題ねぇ!!ここまで来れりゃ十分!!」
「ありがとう、トウカ」

魔力が残り少なかったトウカだったけど、それでも十分な位置までやってこれた。ただ、ここで一つ問題が発生する。

「それにしても・・・」
「ここにも"手"が」

この黒月山でも手が大量発生しており思ったように進めない。しかもそれだけでは終わらない。手の爪から何か赤い色の液体が地面へと落ちると、それは生き物のような形へと変化していく。

「なんだあれは!?」
「"ツメアカ"です!!皆さんの世界で言うモンスターです!!」
「ツメアカって・・・」
「不潔な名前ね」
「汚いよ~」

もっと他にネーミングがなかったのかと思ってしまうが、出てき方を見てもまさしくそれが合ってしまうからなんとも言えない。

「世界中に現れた"手"からこんな風にモンスターが生まれ続けたら・・・」
「まずいことになりますね」

ルーシィさんの言う通り、その名前に気を取られていたがもっと重大な問題があることに気が付く。この手からこんなモンスターが出ていると考えると、戦う力がない普通の人はたまったもんじゃないだろう。

「早く止めねーとな!!一気に上まで行くぞハッピー!!」
「あいさーっ!!」

ハッピーに持ってもらいセレーネがいると思われる頂上まで最短距離で向かうナツさん。その行動にグレイさんは苛立っていたが、彼の判断は正しい気もする。

「俺も行きます!!」
「待ってシリル!!」

セシリーに持ってもらい彼の後を追いかけようとしたが、ウェンディに止められる。この急いでいる時に何かと思ったけど、先程のことを思い出しその場に止まる。

「何かわかったの?」
「それを調べたいの。シャルル、近付ける」

彼女の感じた違和感の正体を探るために手へと近付くことにした。

「やっぱり大きいね~!!」
「こんなのが至るところにあるなんて・・・」

真っ白なそれは首が痛くなるほどに見上げなければ頂点が見てないほどに大きい。それに彼女は近付くと、手を伸ばす。

「何かわかる?」
「待ってて」

それに手を当て意識を集中させるウェンディ。彼女の邪魔をされないようにと俺は迫ってくるツメアカたちを蹴散らしていく。

「!!」
「わかったの!?ウェンディ」
「うん!!」

しばらくして彼女の顔が上がったことに気が付いたので問いかけると、こちらを向きながら少女は力強く頷いた。

「この魔力の流れ・・・エーテルナノの濃度・・・」
「やっぱり間違いないわね!!」

どうやらシャルルも彼女の気付きの正体がわかったらしく、向こうで戦っているグレイさんたちの元へと走り出す。そこにはいつの間にかナツさんが戻ってきていたけど、その様子からセレーネがどこかに逃げてしまったのだとすぐにわかった。

「皆さん!!思い出してください!!冥府の門(タルタロス)のフェイスです!!」
「フェイス?」
「評議院の兵器!?」

フェイスは大きさも色もこんな感じで最後は無数の数が地面から生え出てきていた。それはまさしくこの光景と同じと言っていい。ツメアカみたいなモンスターは現れなかったけど。

「私・・・あの事件の後調べてみたんです。あんなにたくさんの兵器をどうやって動かしていたんだろうって」
「タルタロスに起動装置のようなものがあったな」
「まさかこの"手"も人為的に動いているのか?」
「いいえ・・・そこはフェイスと違います。それと魔力の増減という部分も」

フェイスはタルタロスが意思を持って動かすことができた。ただ、今回は誰かが意図してやったわけではない。セレーネが原因ではあるけど、彼女自身が動かしていたわけではないのだから。

「何が言いてぇんだ?ウェンディ」
「茶々いれないの~」
「黙って聞きなさい」

考えるのが苦手なナツさんは怖い顔をしていたが、セシリーとシャルルに怒られて小さくなっている。

「フェイスと手はものこそ違いますが、仕組みは同じなんです」
「仕組み?」
「何かあったっけ~?」

あのあとフェイスのことなんて微塵も気にしていなかったから彼女が何を知っているのかわからず次に続く言葉に耳を傾ける。

「一見バラバラに地中から伸びているように見える手ですが、実は地中で繋がっているはずです。これはフェイスもそうでした」
「そうなの!?」

てっきり一つ一つが独立した物体なのだと思っていた俺は衝撃を受ける。だから一つを起動しただけで他にもフェイスが地上からたくさん現れたのか。

「魔力の流れからして間違いないわ」
「で・・・その繋がっていたら・・・どうなるのでしょう?」
「そういうことか!!」

彼女が何を言いたいのかわかった瞬間、俺たちは気合をいれるために円陣を組んでいた。そこで見える全員の顔は明るく見える。

「「「「「本体を叩く!!」」」」」

地中深くで繋がっているならそこを壊せば全てが解決するかもしれない。そうと決まれば、穴を掘ることに長けているバルゴをルーシィさんが呼び出す。

「姫!!話は聞いておりました!!本体にたどり着けなかったらお仕置き・・・ということでしたね」
「本当に聞いてた?」

恥ずかしそうに・・・それでいて期待の眼差しを向ける彼女に呆れた様子のルーシィさん。気を取り直して彼女は地面へと飛び込んでいく。

「行くぞ!!」
「セシリーたちは待ってて!!」
「トウカを安全なところに!!」
「私も・・・」
「大丈夫!!ナツたちに任せよう!!」
「頑張ってね~!!」

自分の世界の危機を黙ってみていられないといったトウカだったけど、ここは俺たちに任せてほしいと彼女たちを置いて穴へと飛び込む。

「方向は合ってるのだろうな」
「この手の魔力の流れる方へと進んでいます」
「つーかお前パンツ丸見えだぞ」
「いやん」
「コラ!!ナツ!!ダメよ!!」

先頭を四つん這いになって進んでいるバルゴにナツさんがそんなことを言う。それを注意するルーシィさんだったが、彼女の後ろにいるグレイさんもメイド服状態の彼女のそれが見えているためか、赤くなっていた。

「どんどんエーテルナノが濃くなってるね」
「あぁ・・・そうだね」

かくいう俺も、前を進んでいるウェンディのパンツが目の前で丸見えのため顔をあげるに上げられない。それを指摘するとあとが怖いから、気にしないように振る舞っていけどね。

「おや!!」
「わっ!!」
「きゃっ!!」
「おふっ!!」

しばらく進むと突然広いところに出たのか下へと落下する。そこは立ち上がっても問題ないほどの洞窟のような空洞な空間だった。

「こんなところに空洞が!!」
「あ!!あれ!!」
「見てください!!手の一部です!!」

先程まで見てきた手からすれば小さいが、それは紛れもなく今地上を混沌へと貶めている手。それはさらに下から生えてきているように見える。

「まだ下に続いてるのかよ!!」
「いや・・・この魔力」
「すぐ下に何かある!!」

異様な魔力の流れを感じ下を見ると、まるでそれを待っていたかのように地面から何かが飛び出してくる。それはまさにこの世のものとは思えないような存在だった。

「何・・・これ・・・」
「モンスター!?」
「いや!!もしかしてこれか!?」
「でかすぎるだろ!!」

アースランドで見たことがあるような顔を持ち、そこから無数に生え出ている長い何か。それが恐らく先程まで見てきた手なのだろうと想像するのは容易かった。

「これを倒せば・・・」
「魔力を止められるんだな!!」

本体を見つけたことでやることは決まった。ただ、俺たちの前にいるそれは何かを語り出した。

『醜きかなこの世界、あふれ出せ魔の光よ・・・世界を魔で満たし・・・破壊せよ』
「しゃ・・・じゃべってる?」
「この暴走はお前の意思なのか!?」

一瞬目が光ったように見えた手の本体。それはナツさんの声が聞こえているのかいないのかわからないが、なおも話し続ける。

『醜きかなこの世界・・・我は醜きこの世界の魔力の源アルタ・フェイス。月の竜が歪ませた魔力は私に意思を与えた。破壊せよ魔力、満ちてこの世界を』
「月の竜?セレーネのことか!?」
「ろくなことしねーな、あいつ」
「なんかデジャブが・・・」

彼女のせいで一つの世界が終わろうとしていることでそんなことを言うグレイさんだったが、なんか似たようなことをした奴が記憶にいるため、頭が痛くなる。

「俺たちが止める!!」

暴走するアルタ・フェイス。それを止めるために俺たちは駆け出したのだった。

















第三者side

「へぇ、あれがアルタ・フェイスだったのか」

戦っている妖精たちの姿を見ながらそう呟いた男。そんな彼を見て後ろにいた黒髪の青年は首をかしげた。

「あれ?なんで君が知らないんだい?」
「いや、俺はこの世界受け継いだだけだし」

キョトンとした顔で答える男に青年は納得したような、呆れたような表情を見せる。それに男は気が付いていないのか、首をコキコキ鳴らしながらその様子を見ている。

「大昔にこの世界の住人たちに封じられたってのだけは聞いてたけど、フェイスに近いものだったなんてなぁ」
「懐かしいかい?」
「まぁ・・・苦労した記憶はあるな」

その言葉とは正反対に退屈そうにそれは大きなアクビをした青年。彼はアルタ・フェイスに向かって駆け出した妖精たちに視線を一瞬落としたかと思うと、なぜか立ち上がり背中を向けて歩き出す。

「見なくていいのかい?ここからが一番大事なところだろ?」
「いいよ。もう結果は見えてる」
「それは・・・あの子を信じてるってことでいいのかい?」
「・・・そう思ってもらっていいよ」

そう言ってその場から立ち去る男。それを見送った青年は彼が元々座っていた場所へと腰掛け、地上の様子を見ている。

「頑張ってるみたいだね、ナツ」

先頭を突き進む桜色の髪の青年を見て笑みを浮かべる黒髪の青年。彼は果敢に挑む魔導士たちの行く末を見守ることにした。
















シリルside

「なんて不気味な姿だ!!」
「すごい魔力を感じますね」
「こいつが魔力の源ってんなら」
「やるしかないわね」

気合いをいれる俺たち。そんな俺たちにウェンディが魔法をかける。

「全員に付加魔法(エンチャント)!!」
「いくぞぉ!!」

そんな俺たちを見てアルタ・フェイスの目がわずかに開いた。その表情は怒りに満ちているようにも見える。

『醜きかなこの世界・・・我は止められぬ』

そう言ってはいるがアルタ・フェイスは動く気配はない。もしかしたら身動きが取れないのかと思った俺たちは思い思いの魔法をぶつける。

「炎竜王の崩拳!!」
「氷魔・零ノ太刀!!」
「天竜の咆哮!!」
「水竜の咆哮!!」
「アクアメトリア!!」
「紅桜一閃!!」

一斉に攻撃を放ったことで煙に包まれるアルタ・フェイス。しかし、それを受けたにも関わらずそれは傷一つ付いていない。

「効いてねぇのか!?」
「まだです!!」
「攻撃を緩めるな!!」
「おおおおおっ!!」

なおも手を緩めることなく魔法を放ち続ける俺たち。すると、ここまで反撃をしようともしなかったアルタ・フェイスが動く。

「何!?この光・・・」
「これ・・・魔力の塊!!」

アルタ・フェイスの周囲に光が降り注いだかと思うと、それが目映い輝きを放つ。すると、なぜか身体力が入らない。

「なんだこれは・・・」
「身体が・・・動かねぇ」
「いや・・・それよりも・・・」
「ま・・・魔法が使えん!!」
「どうなってんのー!?」
「エーテルナノ濃度が高すぎて・・・」

魔法を放とうとしているはずなのにそれが一切発動しない。その謎の光は空に突き刺さるほどの威力で俺たちを打ち上げる。

「魔力が溢れすぎて魔法が使えねぇってどーゆーことだよ!!」
「そんなのおかしい!!」
「何が起きてるんだ?」
「くそ・・・」

魔力が尽きて使えなくなっているわけではない。むしろ空気中のエーテルナノ濃度はアースランドよりも高いため魔力は普段よりも使えるはずなのに・・・

















ウェンディside

身体から力が抜けているような・・・力が入りすぎているような・・・不思議な感覚に陥っている私たち。魔法が使えないことでアルタ・フェイスに向かって行くことができない私たちはさっきまでの勢いが嘘のように身体が動かなくなっている。

『オーバーフローです、ウェンディ』
「!?」

どうすればいいのかと悩んでいると、突然頭の中に誰かの声が聞こえてきます。

『魔力が限界まで高くなったことで身体が・・・魔力が0になったと勘違いしているのです』
「あなたは・・・一体・・・」

聞き覚えのある声なのに、それが誰の物なのか思い出せない。困惑している私に対し、声の主は話を続けます。

『例えば99までしか表示できないものがあるとします。それが100になった時、表示はどうなりますか?』
「0!!」

彼女が何を言いたいのか理解した私。つまり今、私たちが魔法を使えなくなっているのは、本来身体に入りきる量の魔力以上のものが体内にあるから。

『それで身体が自身の魔力がなくなったと勘違いしているんです。でも、本来は違います。アルタ・フェイスの産み出す魔力によって皆さんの魔力は限界を超えて強くなっているんです』

その直後、身体が何かに包まれるような感覚に襲われます。それはどこか懐かしいような・・・

『思い出してください、あなたの魔力とその身体がこれまでどれだけ多くの困難を乗り越えてきたのかを。
そうすればもう・・・あとは気付くだけです』

その声の主が誰なのかは結局最後まで思い出せませんでした。でも、その言葉は私に勇気を与えてくれました。

「私の限界はここじゃない!!」

















シリルside

尻餅をついたまま動けない俺たち。何がどうなっているのか理解に苦しんでいると、隣にいた少女の身体が光り輝き出す。

「え!?ウェンディ!?」

それと共に大人のようになる少女の身体。その身体からは今まで感じたことがないような魔力を放っているのが、隣にいる俺にも伝わってくる。

「ウェンディ!?」
「急に大人に!?」
「一時的なものです!!」

驚いているグレイさんとナツさんにそう叫ぶウェンディ。その直後、彼女は自身の胸元を見て顔を赤くしていたが、すぐに冷静さを取り戻し俺たちへと激を飛ばす。

「皆さん!!これは身体が勘違いしているだけなんです!!魔力は0になっていません!!限界を超えているんです!!」
「限界を超えて・・・」
「自分の身体を信じて!!自分たちの戦ってきた道を思い出して!!」

そう叫ぶ彼女の表情にどこか懐かしさを感じる。そして俺たちは今までのように・・・いや、今まで以上に自らの身体に力を入れていく。

「おおおおお!!」
「うわっ!!なんだこれ・・・」
「魔力が・・・」
「戻って・・・いや・・・これは・・・」
「限界を超えた力・・・」

他のみんなは成長しきっているからか、身体が光るだけで変化はない。ただ、ウェンディ同様に成長途中である俺の身体は彼女と同じほどに大きくなる。

「魔力が漲る!!」
「この状態は長くは続きません!!今のうちに・・・」

感動している俺を他所にすぐさま動き出すウェンディ。俺たちもそれに続くようにアルタ・フェイスへと突進する。

『醜い・・・』
「醜くても綺麗でもどうでもいいさ!!誰に何と言われようと俺たちは俺たちの道を進む!!」

肉体の限界を超えた妖精たちの全力の一撃。それはこれまでびくともしなかったアルタ・フェイスを一撃で粉々にした。

「それが妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士だ!!」

再生することもなく崩れ去るアルタ・フェイス。それを見届けた俺たちは歓喜の雄叫びを上げるのだった。





 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
アイリーンの代わりにウェンディにヒントをくれた人は今後出てくると思います。まぁわかる人はたくさんいると思いますが。
次でエレンティアは終わりになると思います。一つ心残りがあるとすれば誰も成長したシリルに触れる余裕がなかったことくらいか。 
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