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夜勤族の妄想物語 4.異世界ほのぼの日記2~異世界でも夜勤になったので堂々と昼呑みします~

作者:佐行 院
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㊶~㊺

 
前書き
 新たな現場へと案内される好美。 

 

-㊶ 夜勤の制服と竜-

 2人は中庭に入ると月夜に照らされた王宮を眺めながら石畳を歩いていた、好美に紳士的な印象を持たせるためか、ニコフはさり気なく歩幅を好美に合わせていた。

ニコフ「先程は私の部下が驚かせて、申し訳ございませんでした。後できつく叱っておきますので。」
好美「いえいえ、少し驚きましたがお気になさらないで下さい。」
ニコフ「良かった、それを聞いて安心しました。」

ニコフの案内で「夜間見回り係々員通用口」へと向かい、教えられたパスワードをドア横の機械に入力し、開錠音を確認して中へと入った。6畳位の空間が広がり、真ん中にはテーブルと椅子が置かれている。奥には大小2つの扉があり、ニコフは小さい方の扉を指差した。

ニコフ「ここは夜間見回り係用の控室です、あちらの小さい方の扉がロッカールームとなっていますので手荷物はあちらにお願いします。ただ私にも何があるか分かりませんのでご貴重品は必ず身につけておいてください。それと・・・、この紙袋に制服が入っていますのでそれに着替えてからまたこちらにお戻りください・・・、と言ってもあれですね。」

 手渡された紙袋を抱えて小さな扉へと向かう、中には鍵付きのロッカーが並んでいて名札と思われる木の板に「倉下好美」と名前が刻まれた物を見つけ早速手荷物を入れると紙袋の中身を確認した。

好美「これ・・・。」

 渋々中に入った制服に着替えて先程の控室に出ると、もう既に同じ制服を着たニコフが待ち構えていた。
 好美は違和感たっぷりの制服について確認する事にした。

好美「ニコフさん・・・、これつなぎですよね?本当にこれが制服なんですか?」

 先程まで好美が着ていた物とさほど変わらないつなぎ、それが故に王宮の制服としては合ってないのではないかと疑問を抱いていた。ただニコフ曰く、理由はとてもシンプルだった。
 ただ、好美個人は制服がつなぎで安心していた。

ニコフ「私も人づてに聞いたのですが、王様が動きやすさ重視での制服を探されていた矢先にちょうど好美さんの衣服をご覧になってこれになさったそうですよ、お気づきになりませんでしたか?」
好美「い・・・、いえ・・・。私国王様になんて会っていません!!」

 それもそうだ、今思えば国王であるエラノダは私服で好美の面接を行っていたので気付かないのも無理は無い。
 そういった会話を交わしていると、通用口の外から機械音がした。

ニコフ「あ、もう1人も来たようです。この人は週1日での勤務なのですが、火曜日の夜において重要人物なのでご紹介させて頂きますね。」

 通用口の扉が開き、その重要人物が入室する。制服のつなぎをすでに着ていたその人化した(ドラゴン)族の女性に好美は見覚えがあった。
 向こうは好美に気付くや否や・・・。

女性「おはようござ・・・、好美ちゃん!!」
好美「エリュー、どうしたのここで。」
エリュー「見回りの仕事、でも火曜日はどうしてもドラゴンが必要だからって週1で雇って貰ってんの。」

 コンビニのシフトを週4日希望にしていた理由がやっと分かった、よく考えれば今日の昼間から全く見かけていない。どうやら知らなかったのは好美だけで「他でもない王宮での仕事だから」とイェットは承諾していた様だ。

好美「イェットの奴・・・。店名の事もそうだけど私に一言言ってくれも良いじゃん・・・、一応私オーナーなのに・・・。」
イェット(念話)「悪かったよ・・・、好美ちゃんが帰ってきたら何かご馳走するから許しておくれ。」
好美(念話)「ビール!!絶対ビール、これは外せない!!」
イェット(念話)「もう・・・、分かったよ。ありったけ用意しとくから許しておくれ。」

 念話が終わった瞬間の好美の顔は恍惚に満ち溢れていた、楽しみが出来たのでかなりやる気が出たらしい。一先ず3人はロッカールームの隣の大きな扉へと進んだ。

-㊷ 夜の王宮-

 大きな扉を開けようとしたニコフは何かを思い出したらしく、即座に手を離した。

ニコフ「すみません、忘れてました。まだシフト表等をお見せしていませんでしたね。」

 テーブルへと好美を案内すると、近くに会った棚から用紙を数枚取り出した。最初はシフト表だ、見てみると好美は火曜日~木曜日の夜に出勤する様になっていて、これはニコフと同じらしい。

ニコフ「基本的には私も一緒にお仕事をさせて頂きますので何か分からない事があったら何でも聞いて下さいね、では次に行きましょう。」

 好美は安心しながら手元の用紙を捲った。
 次の用紙は王宮の地図になっていた。よく見ると王宮は中庭を囲んで正方形となっており、各部屋が1つの廊下で繋がっていた。
 地図上の各所には数値を書き込む箇所が用意されていた。

ニコフ「この用紙はこちらの棚にありますので見回りに行く時、この天板に挟んで持参して下さい。詳しくは後ほど説明しますので今は置いといても大丈夫です。」

 ニコフに促されるがままに好美は次の用紙を見た、そこには23時から6時までの時間帯が表示されている。どうやら見回りのチェック表らしいのだが何故か0時、2時、そして4時の所が蛍光ペンの様な物で塗られているので尋ねてみると。

ニコフ「その時間に外せない仕事があります、これも詳しくは後ほどその時に。では、この用紙を普段置いてある場所に戻して・・・。さてと、そろそろ参りましょうか。」

 23時になったので3人はニコフの案内で夜の王宮内部へと入った、ほぼ月明りと2人の魔力灯火、そして好美の懐中電灯のみで照らされた暗い廊下を左回りに歩く。
 歩きながら将軍長は小声で2人に忠告した。

ニコフ「くれぐれも王族の方々を起こさない様にお願いしますね・・・。」

 ニコフがそう言うと出来るだけ足音を刺せない様に歩を進めていった、すると廊下のある箇所からぼんやりと青白い光が見えて来たので3人はその光の下へと近づいてそこにある小さな扉を開いた。中にはデジタルで表示されたメーターが数機。

ニコフ「このメーターは上から気温、湿度、魔力電圧、水力電圧、風力電圧、電力を表示しています。この数値を先程のこの用紙に記入して下さい。」

 天板に挟んである用紙の各所に記入していく、メーターは王宮の四隅にあるらしく各々の場所で記入するそうだ。
 各所での記入を終え、控室へと戻る。そこでは監視カメラの映像を見ながら過ごすそうだ、要はビルの管理人に似た仕事らしい。

ニコフ「これが一連の流れです、トイレはロッカールームの端にありますのでそちらをご利用ください。勿論、王宮内のどのトイレもご利用して頂いて結構ですのでご安心下さい。では、次は0時です。特にエリューさん、よろしくお願いします。」

 そう言うとニコフは慌てた様子でトイレへと向かった、どうやらずっと我慢していたらしい。
 無理しなくても良いのにと好美がクスリと笑っていると同僚のサラマンダーが声を掛けて来た。

エリュー「まさかここで好美ちゃんと一緒になるとは思わなかったよ、この時間帯の仕事は慣れてんの?」
好美「うん、転生前の世界でも夜勤だったからね。」
エリュー「それにしても違和感無いなぁと思ったら、制服が普段と同じつなぎだもんね。」
好美「あはは・・・、皆私といえばつなぎってイメージってなっちゃったのかな。オーナーらしくなくて申し訳ない。」
エリュー「そんな事ないよ、むしろ私は親近感が湧いて嬉しいよ。」

 エリューの言葉に安心していると時計の針が0時を指した。

ニコフ「0時です、行きましょう。好美さん、例の「お供え物」をお忘れなく。」

 3人はまた深夜の王宮内部へと向かって行った、先程と同様にメーターの数値を記入しながら左回りに歩いていたのだが中庭が眩しく光っている。

ニコフ「今週はやけに早いな・・・、急がないと。エリューさん、お願いします。」

-㊸ エリューの大切な業務-

 エリューは廊下の途中にある小さな扉から中庭に出てサラマンダーの姿に戻り、眩しく光る先程の場所付近で空へと向かって火を吐いた。

エリュー「古の神よ・・・、どうぞご降臨くださいませ。」

 コンビニのナイトマネージャーを担うサラマンダーはそう唱えると人の姿に戻りその場に跪いた。ニコフも好美を連れて中庭に出ると、同じように跪いたので好美も真似した。

女性「うむ、待っておったぞ・・・。」

すると、眩しい光から女性が出て来たではないか。その女性は3人の目の前できょろきょろと辺りを見回している。

女性「おい、いつものあれはどこだ?まさか、忘れた訳ではあるまいな。」
ニコフ「好美さん、急いで「あれ」を!!」

 中身をこぼさない様に『アイテムボックス』に入れておいたのだがまずかったのだろうか、そう思いながら光に渡された「お供え物」を出した。
 蓋を開けると中には一般的な「2日目のカレー」が入っていた。

女性「これじゃこれじゃ!!これが週に1度の楽しみなのじゃ、あの者のカレーを食べないとわしゃ死ぬでのう!!」
ニコフ「ではクォーツ神様、こちらへ・・・。」

 3人がクォーツを厨房へと案内すると、ニコフはお釜やオーブンから炊き立ての白飯とナンを出してカレーライスとナンカレーとして提供した。

クォーツ「幸せじゃ・・・、来週も頼むぞよ・・・。」

 カレーを持ってそう言うと、クォーツは月夜に消えて行った。
 それから約2時間が経過した2時過ぎ、いつも通り見回りを終えた3人を控室で先程とは違う女性が待ち構えていた。
 よく見ると、目に涙を浮かべている。欠伸でもしたのだろうか。
 半袖短パンのその女性の姿を見たニコフはまた先程の様にカレーを提供した。

ニコフ「ペプリ王女様、大変お待たせいたしました。」
ペプリ「ニコフさん、クォーツ姉ちゃんは?」
ニコフ「いつも通り、お元気そうになさっておられました。」
ペプリ「久々に会いたかったのに、もう消えちゃったの?」
ニコフ「はい・・・、大変申し訳ございません。しかし、流石に一柱の神を引き止めるのは私には重荷でございます。」
ペプリ「分かった・・・。」

 2時間前の眩しい光で目が覚めたのか、少々不機嫌そうにしていた王女らしきその女性は右手を高らかに揚げた。
 その右手から、王女が空に向かって光を放つと通用口の外からドアをノックする音が。開けてみると先程帰ったはずのクォーツがいた。

ペプリ「姉ちゃん!!」
クォーツ「あんたは相変わらず我儘だね、あたし一応神様なんだよ。」
ペプリ「良いの、行こう!!」

 2人はカレー皿を片手に王女の部屋へと向かって行った。
 それから約2時間後、3人が通常通りの見回りをしていると厨房から灯りがこぼれているのが見えた。

ニコフ「やはりか・・・。」

 好美がまたこれが必要なのかなと鍋の蓋を開けるともうすっかり空っぽになっていた、鍋の所々に残ったカレーがこびり付いている。
 厨房に入ると見覚えのある男性がじゃが芋をふかしていた。

好美「貴方は確か、面接官の・・・。」
ニコフ「国王様、またですか。」

 ニコフの発言により、好美は自分の面接をしたのが国王だとやっと気づき失礼があったのではないかと顔を蒼白させた。
 それを横目に国王のエラノダはふかしたばかりのじゃが芋を半分に切り、切り口を鍋に押し付けカレーを拭き取っていた。

-㊹ 国王の好物の夜勤明けの客人-

 エラノダはカレーを拭き取ったじゃが芋を潰すと、小麦粉とパン粉を付けて知らぬ間に用意していた油でゆっくりと揚げた。そう、カレーコロッケの完成だ。国王はそれを肴に1人瓶ビールを呑み始めた。
 さり気なく揚げ油を処理して、鍋を片付けたニコフは付き合いきれないと言わんばかりの呆れ顔を見せた。

ニコフ「王様、御片付けと明かりだけはお願いしますよ。」

 そう言うと3人はその場を去って行った、国王なのに扱いが雑な気がしたが疲れが出て来たので好美はスルーする事にした。
 控室に戻ると好美はデルアに貰ったお弁当を取り出した。

好美「何が入っているのかな・・・。」

 ワクワクしながら蓋を開けると中には「暴徒の鱗」の美味しい料理と白飯がズラリと。
 空腹に身を任せて勢いよく食べ終わると、次の見回りに向けてお茶を飲みながら一休みした。
 数時間後、最後の見回りを終えて控室で過ごして終業時間の7:00。
 ロッカールームで今では完全なる私服と化してしまった方のつなぎに着替えて通用口から中庭に出た。

好美「お疲れ様でした。」
ニコフ「好美さんもお疲れ様でした、これからもよろしくお願いします。」

 朝の雰囲気を楽しむかと王宮から自ら所有するビルまで歩くと、コンビニに商品である弁当を納品するトラックが1台。
 昨日より量が多いので好美はドライバーに事情を聞いた。

ドライバー「昨日の閉店間際に一気に買い込んだ人がいたみたいだよ。」

 その言葉を聞いた好美はイェットに聞いてみる事にした。

好美「ただいま、昨日の晩に弁当を全て買い込んだ人がいたんだって?」
イェット「好美ちゃんおかえり、聞いたんだね、それがとんでもなく大物らしいんだよ。」

 すぐさま監視カメラの映像を確認すると1人の女性が残った弁当を全て買い込んでいたのが映っていた。映像の確認を終えると、映っていた女性が入り口前に立っている。
 好美は女性に事情を聞くことにした。

好美「あの・・・、どうされました?」
女性「あの私・・・、王宮横の教会で孤児院をやっているメイスと申します。実は、いつも食事を用意する担当の者が怪我で入院する事になりまして。他に料理が出来る者はいても子供達の舌に合う物を作れる者がおらず、我々の食事の用意も兼ねてこちらのお弁当を頼りにさせて頂く事にしたんです。」

 そうしたものかと考えていた好美の横から光が声を掛けて来た。

光「アーク・ビショップ、大丈夫ですか?」
メイス「光さん、どうしましょう・・・。」

 すると好美はスマホを取り出し、弁当の業者に連絡して何とかならないかと聞いてみた。先方によると、「コノミーマート」の分と合わせて納品する形で良いなら何とかなるとの事。
 そこで、好美はメイスに数か月分の発注書を渡し、発注する時に店長か副店長に渡す様にと伝えた。
 弁当代は1か月分を纏めて支払って貰うと言う契約になったので何とかなった。
 教会への配達を行う代わりに、弁当1個につき10円の配達料金を貰う事になった。これはメイス側からの提案だ。
 今日は教会の分を好美が追加で発注する事で事なきを得た、トラックが来るまで店の前で待つと言うので流石に帰したが本当にへばり付いて待ちそうな勢いだったので本気で焦った。光からかなり凄い人物だと聞いたので要人を待たせる訳にも行かなかったのだ。

メイス「ありがとうございます、貴女は命の恩人です。」

 唐揚げ弁当と鮭弁当を数個ずつ受け取るとアーク・ビショップは泣きながら頭を下げてお礼を言った。
 大袈裟だなと思いながらメイスを見送ると、「暴徒の鱗」の調理場に弁当箱を返しに行った。
 中に入ると「初仕事お疲れ様」のメモ書きと一緒に、「酒の肴にどうぞ」と叉焼や餃子、春巻きなどが用意されていた。

-㊺ 気持ちの問題-

 一人で食べ切れるか分からない量の肴が用意されていたので少々不安になっていたが、メモ書きを改めて見ると良い従業員に出逢えたなと改めて嬉しくなっていた。
 『転送』で自宅へ送ろうとすると、調理場の端っこで仕込みを終えたイャンダとデルアが開店まで仮眠をとっていた。
 「開店1時間前に起こして下さい」と書かれたメモが置かれていたので後でお礼を兼ねて起こしてあげようかと思った。
 『瞬間移動』で15階へ向かうと一先ず前日録画したアニメやドラマを確認する事にした、こっちの世界で日本の番組が見えるのは本当に助かる。
 満天の青空が広がっているので取り敢えず屋上で見ようと思った、こんな事もあろうかと屋上のテラス兼露天風呂用にテレビをもう1台買っておいて良かったと改めて思えた。
 この世界での初仕事を終えた記念に、いつもは呑まないあの有名な「ちょっと贅沢なビール」をおまけで買った。
 元々のデザインでは、描かれている恵比寿様の絵に鯛が1匹だけいるのだが、ごくたまに2匹描かれている「レア物」が存在しているのだ(※事実だそうです)、好美は偶然それを引き当てたらしい。
 露天風呂に浸かり、テレビを見ながら「レア物」の缶を開けて一気に煽る。

好美「今思えばこの世界に来て色々あったな・・・。短期間だけど頑張って良かった、何か良い事ありそう。でも本番はこれからだから頑張らなきゃ。」

 そう呟くと、好美はジャグジーのスイッチを入れた。一晩働いた好美を無数の泡が癒していくのを感じながら好美は缶の中身を再び煽った。
 露天風呂から出てバスタオルで拭き、今度必ず私服を買おうと誓いながらいつものつなぎを着て1階へと降りた。2店舗の開店1時間前、メモに書かれていた通り2人を起こす事に。

好美「起きろ、あんたらオーナーにこんな事させんの?」
イャンダ「んん・・・。ああ、好美ちゃん。もう吞んだのかい?」
好美「まだよ・・・、あたし「楽しみは後に」派だから。」
デルア「それにしてもビールの匂いがするぞ・・・。」
好美「あはは・・・、やっぱりバレましたか。」

 店長と副店長はやったなと言わんばかりに握手を交わした、まだ用意された料理は食べていないのに。
 好美が2人の行動が何を意味するかが分からない事を表情で表していると、何かを思い出したかのように調理場のメモを見直した。
 デルアは冷蔵庫の中を確認すると好美に一言。

デルア「好美ちゃん、もしかしてメモの裏見てないの?」
好美「へっ?」

 好美がメモの裏を見ると「俺達2人からのお礼が冷蔵庫に入っています、雇ってくれてありがとう。これからもよろしくね。イャンダ デルア」と書かれている。
 冷蔵庫を見てみると大瓶のビールが入っていた、絵柄を見てみるとあの「レア物」だ。

好美「何よ・・・、あたしが2人に感謝しないといけないのに・・・。」

 駆け出しのオーナーの為に経営者として、そして厨房担当として必死になってくれている2人に感謝しているは好美の方だった。好美はゲオルの店へと行き、大瓶のビールを買って一言。

好美「あのさ・・・、折角だからくれたビールは皆で呑もう。こ・・・、これはオーナーとしての命令!!」
2人「うん・・・、分かった。」

 気を取り直して開店準備に入る2人、完全に職人の顔になっていた。応援のシューゴ達もやって来て本格的に2日目が始まろうとしていたので、好美は邪魔にならない様にこっそりと15階へと移動した。
 店の前に行列が見えていて、お客さんに調理場で酒を呑んでいる所を見られでもしたら信用や売り上げに影響する。
 コンビニでも準備が始まっているので退避して良かったとホッとしていた。
 ふんわりとした風が優しく頬を撫でて気持ちいい、こんな気持ちいつ振りだろうか。

シューゴ「只今より開店致します、いらっしゃいませ!!」

 下からシューゴの威勢の良い声が聞こえてくる、また今日も何処かで誰かの1日が始まるのだった。

好美「あ・・・、今夜も夜勤だった・・・。」
 
 

 
後書き
 好美の1日は笑顔で終わろうとしていた。 
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