ロンドン郊外の英国魔導学院【完結】
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奇妙な妖精との遭遇
「お前……最初からそれが目的だな!」と言いかけたものの男の真剣な表情を見ているとつい押し負けそうになる自分を感じたが。「そんなわけあるもんか!そもそもそんなに簡単に子どもを捨てて出ていけるかよ!だいたいその子の父親として認めないだと?馬鹿なことを言うなよ!あんたのしたことを全部知っているぞ?それどころか俺を拉致したことさえも……」「あれは私の意思ではなかったのだよ。全て奴が指示したことなのだ。私は脅されていただけだ」何が事実かどうかは知らないが今は信じたふりをした方がいいのかもしれない。「それじゃ、そのことはいいよ。わかったからこの子はどこへ連れて行けばいいんだ?」「ありがとう、恩に着るよ。この先にある修道院があるんだがそこへ向かってほしい」と言われたがそんなところに行ってどうするというのだろうか?だが一応言われたとおりに向かってみることにしたわけなのだが。
俺たちがやってきたその場所はとても質素ではあったが手入れがきちんとされており住み心地は良さそうに思えた。
「ここには君と同年代の子がいてね。面倒を見てくれるようなんだよ。ここならば暮らしていけるはず」と言われほっとしたところで、突然誰かが飛びかかってくる気配がしたので避けようとするが間に合わなかったらしい。俺は地面に引き倒される形になった。そして目の前にいた人物は見覚えのない若い女のようで、
「ちょっと、離して下さいません!?いきなり襲いかかってきてどういうおつもりなのかしら?いったいあなた方はどなたなのでしょうね?こんな乱暴なことは感心致しませんわ」
などとよく通る綺麗な声でまくし立てるのだ。どうやらこの女がこの子を襲ってきた相手らしかった。
「すまない、許してほしい。ただ、どうしても君にお願いしたいことがあったんだ。君にしか頼めないことでね。どうか聞いてもらえまいか」
そう言われ、ようやく落ち着いたようだが、それでも警戒心を解いたわけではないらしく、睨むようにしてその男のことを見ている。
「それで、頼みというのは?」
「ああ、実は……」と言ってその男は話し出した。それは俺にとって衝撃的な内容だった。
「君を養子に迎えたいという申し出があってね。君のご両親にも了解を得ているし、手続きももう済んでいるんだ。君は今日からここで暮らすことになる。いいね?」
そうして俺は、その日からこの屋敷で暮らすことになったのだった。
俺が孤児院から追い出されたのは5歳の頃だった。それまで暮らしていた場所が火事になり、院長を含めた大人たちが全員死んだため、行き場を失ったのだった。
俺は施設に引き取られることになったのだが、そこはひどい場所で、食事もろくに与えられず、年少の子供の中には死んでしまった者もいた。
そんな中で、一人だけ生き残ってしまったのが俺だった。
俺は運が良かったのだと思う。たまたま建物の外に放り出されてしまい、煙を吸わずに済んで、火傷をすることもなく助かったのだ。
とはいえ、子供は俺だけだったし、周りの大人たちはみんな死んでいたのだけれど。
そして生き残ったといっても怪我をしていたし、食べ物もなかった。おまけに雨まで降ってくる始末で、もうだめだと思った。
そうして空腹と寒さで動けなくなっていたところに、通りかかったのがその男だった。
「大丈夫か?」と声をかけられたが、正直もう死ぬと思っていたので返事などできなかった。
するとその男は「そういえば、もうすぐクリスマスなんだな……」と独り言のように呟いたあと。ポケットから紙に包まれた丸いものを取り出した それを手の上でもてあそび、何かを考えるような仕草をしている。そうしていると男は急に大声を出したのだった。「ああ、そうだ、そうだ!これしかないよな」と、それから俺をそっと抱えあげるとその男が乗って来た車へと運び込む 車内にあったブランケットに包まるようにされて座席に座らされたあと、車が動き出した
「君はラッキーだ」
俺は訳がわからなかったが、だんだん意識が遠くなっていくうちに眠ってしまっていたようだ 。
次に目が覚めたとき俺はベッドの上だった。周りを白いカーテンのようなもので囲まれていて外から見ることはできないがとてもきれいな部屋のようだったが。
部屋の向こうから「おお!目が醒めたかね。さっきから目を開けたまま寝てるみたいだったから、びっくりしてたんだ。あ、僕はこういう者だよ」と言って名刺を差し出してきた そこには「医師」の文字が見えた。そして続けて。「ああ、まだ起き上がっちゃ駄目だよ。もう少し休んだほうがいいからね。ここは病院だから安心して欲しい。君の身元についてもこれから確認させてもらうからね」
そして俺は質問されたことについていくつか答えさせられた後、「とりあえず、しばらくはゆっくりしていたまえ」と言われたのだ。
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