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ロンドン郊外の英国魔導学院【完結】

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エドガーの勇敢な救出

いきなり彼女が僕たちの横を走り抜けて走っていくのを見て思わず叫んでしまう。「リディ!!」だけど彼女を追う暇などない。なぜなら僕はまた一人になったのだから。どうして僕の周りはこうなんだ!?リディがあんなに思い詰めたような顔をしているのに僕は何もできずにただこうして一人でいるだけだなんて!リディのそばにいても僕は何もしてやることができないんだと実感させられてしまうんだ。それはまるで僕の存在そのものを否定されているかのように感じるから。悔しくてたまらなくなる。だけど、何もできないんだからしょうがないよな。リディ、君の苦しみを取り除いてあげることも助け出してやることもきっと僕の役目なんじゃないかと最近は思っているんだよ。だから君のことを絶対に救って見せるよ!「ハル、聞いてほしいことがある」真剣な顔つきで彼が言う。「うん」わかっているよ。「僕は君と出会えて本当に幸せだよ」僕は笑いながら答える。「それは僕のセリフでもあるんだけどね」「え?」「僕は本当に幸せなんだ」僕は笑う。「君と一緒に過ごす時間が僕は本当に好きだよ」彼は笑みを深めた。「僕は君の笑顔が一番好きなんだよ」そうして二人で顔を見合わせて笑った。僕は彼に出会えたことが幸運以外の何物でもないと思っていた。彼と出逢って、僕は変われた気がしたし、それはきっと間違っていなかったのだと信じているんだ。「ハル」彼が名前を呼んでくれたことに胸を撫で下ろした。もうこれで充分だと思ったから、そろそろ行かないとね……。「じゃあ、また明日ね」「あ、ああ……」今日は休日なのでいつもより遅くまで眠っていても誰も起こしに来ることはなかったのだけれど、なぜか私は目を覚ましてしまったのだった。なんとなく起きる気になれなかったのでごろりと寝がえりを打つと、隣にいたはずのエドガーが見当たらないことに気がついた。あれ?いない?まさか……。慌てて飛び起き、部屋の外に出てみると、そこには壁にもたれかかって座る彼の姿があり私はホッとしたのと同時に少しがっかりするような気持ちが湧き上がる。「エドガー」と呼びかけながら駆け寄ると彼はぼんやりとこちらを見た後「おはよう」と言った。
そしてゆっくりと立ち上がり私を抱き寄せると耳元で「どうしたの?」と言ってくれた。その心地良い低音が私はとても好きで、いつまでも聞いていたいと切に願ってしまう。彼は私から離れ、じっとこちらを見つめると、もう一度問いかけてきた。「どうしたの?」「何でもな……」「何でもない、じゃないよね?」私はうつむいて口をつぐむ。すると彼は再び口を開くのだ。「言ってごらん」
私は少し躊躇してから、口を開いた。「最近夢を見るのよ」
「どんな夢?」
私は顔を上げて答える。「昔の頃の……記憶」エドガーが息を呑む気配を感じることができた。「そう」とだけ彼はつぶやくように答えるとこちらに一歩近づき私を引き寄せ抱きしめてくれる。私を優しく包む腕の感触を感じながら私も彼に身を寄せてみることにする。すると彼は少し困ったような顔をしたあと口を開いた。「怖いの?」
私は無言でうなずくと彼にしがみつくようにする。そう、とても恐ろしい。思い出すだけで怖くて体が震えてしまいそうになる。「でも大丈夫」そう言ってくれるととても安心することができた。彼の体温が伝わってきて温かい。「だってここにいてくれるもの。ずっと私のそばに。そうでしょう?私を助けてくれたときのように、今度は私のこと、守ってくれるんでしょう?」
彼は微笑むと私の額に軽くキスをする。そうして彼は囁いた。「当たり前じゃないか」そうして彼は私の手を握りながら歩いていった。私もその後に続くのであった。
3学期が始まり2ヶ月が過ぎた頃だろうか?私たちの間に大きな変化が訪れることになる出来事が起こることになった。
私がそのことに気づいたのは学院に向かうために家を出た直後、家の外にはたくさんの人たちが立っていたのだ。彼らは学院から出てきた私を待ち構えていたのだろうということにまずは気が付いたのだが、その中にアスターが混ざっていたので、これは一体どういうことなのだろうかと考え込む。しかし考えてもわかるはずもないことだと思って私は学院に向かって足早に歩くことにした。学院に到着するまでにいろんな人とすれ違い、中には知り合いの顔もあったのだけれど彼らも学院からの帰りだったようで、学院の正門の前では人垣ができていてなかなか中に入ることができなくなっていた。一体何が起こったというのだろうか……。私は仕方なく裏口に回って中に入ってみた。そしてそこにあった異様な光景に唖然とする。学院が荒れ放題になっていたのだ。 
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