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ロンドン郊外の英国魔導学院【完結】

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絶体絶命、地下への転落

私は必死になって彼らに訴えた。「妖精は人間の心の闇に惹かれるらしいの。もしかしたら学院にいる人間の中には何か抱え込んでいる人が大勢いるかもしれない。妖精が妖精魔術を使ったりなんかしたら……。想像したくないけれど、とても危険だと思うの」
エドガーが目を伏せる。「確かにそうだ」
私は続ける。「それに学院長はずっと前から妖精について研究をしていると言っていた。もしも彼らが本当にそういう目的で学院を使っているなら、このまま放置するのは良くないことだと思う」そして一度言葉を切って大きく深呼吸をすると話し始めたのだ……。
2学期が始まり二週間以上が経った頃だろうか?学院に大きな変化が訪れたのを生徒たちの間で噂になっていたのを耳にしたのは……。学院の結界が弱まったのだという噂がどこからともなく広まったのだ。しかもそれだけではない。学院に棲みついていた小鬼の群れが次々と姿を消さていったというのもある。それらはすべて女子寮に暮らしていた生徒たちの周辺に集まっていったことから推測するならば、おそらく彼らの力を借りてどこか別の場所に移動させたのではないかというものだった。しかしその肝心の小鬼の姿を見ることは一度もなかった。それは一体なぜなのだろう?そんなことを思ったりする。しかし今はそれどころではなかったのだ……………… *****
***
そして俺はついにやってきた。学院に。俺は門の前に立ち止まって建物の様子を観察していた。この学院の建物にはところどころかあちこちに大きな傷ができている箇所があった。しかし修繕工事を行ったような様子はなく、古いままのようだった。俺は改めて目の前にある建物を仰いだ。やはり大きな建物だ。そして荘厳にも見える。
しばらく入り口を探して彷徨っていると突然背後から声をかけられた。俺は驚きのあまり悲鳴をあげそうになるがどうにかこらえることができた。そして恐る恐る振り向いた先にいたのは背の高い金髪の男。学院の教師かと思い警戒したが制服らしきものは着ていなかったのである意味安心する。だが油断はできなかった。学院の関係者であることは確かなんだろうから、この男の機嫌を損ねることはできるだけ避けるべきだろうと直感的に悟っていたからだ。だからなるべく穏やかそうな微笑を浮かべながら尋ねたのである。「あの、ここはどこなんでしょうか?ちょっと迷子になってしまいまして……」と聞くと男は一瞬ぽかんとしていたがすぐに笑ってこう言った。「おや、あなたが噂の編入生さんですね。話は伺っております。私はエドワードといいます。これからよろしく」そして続けて言う。「ここの入り口が知りたいんですか?ご案内しますよ」とのことだった。
俺の心臓がどくどくうるさく鳴り響きはじめていたせいもあって、この申し出に断ることができなかったので黙ってついて行くことにしたのだった。俺にはわかる、これは罠だと。俺がこの世界にとってどんな存在かを確かめようと誰かが差し伸べた蜘蛛の糸のように思えるのだった。だから俺もその手には乗らないぞとばかりに用心することにする。それがうまく行くかどうかはやってみないとわからないけれど。俺は覚悟を決めてエドワードのあとをついて行くことにしたのだった。
* * *

***
僕が廊下で彼女と立ち話をしていたときだった。 
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