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ロンドン郊外の英国魔導学院【完結】

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学院内の火事と緊急事態

僕はとても苛々していた。自分でも驚くほどの嫉妬心に囚われていたからだ。この前のことが原因なのはわかっている。だけど、あんなことになるとは思いもしなかった。まさか僕のリディに対しての愛情がそれほど強いものだなんて。自分でもびっくりしたし驚いたし恐かったよ。だけど今はもっと強くなってしまっている気がするんだ。君を失うんじゃないかと考えると怖くてたまらなくなる。もし君を失ってしまったらと考えたら居ても立ってもいられなくなって。どうしようもない衝動に支配されている。それはまるで君に出会った頃のような感覚に近いものがあった。いや、それより強いかな。君と出会ったばかりは僕は君を失いたくないと思っていたし、それは今でも同じなんだけど。
しかし、それでも会いたいという気持ちの方が圧倒的に上回っているから始末が悪いんだ。君は許してくれるだろう? だから今日も君に会いに行く。
しかし君の部屋の扉の前で躊躇っている自分がいるのを感じる。君に拒絶されたらどうすればいいのかと考えてしまっている自分に気がつく。怖いんだよ。本当に。君の口からもう来るなと言われるのが怖い。そしてそれは現実のものとなってしまう可能性が高いと知っているのがさらに恐ろしいんだよ。それに君は優しいから、そう言われてしまったとしても来てくれと言われればまた僕はきっと行ってしまうだろう。だから余計に足がすくんでしまっているのさ。「やあ!エドガー」聞き慣れた声で呼びかけられたことに気がついて振り返るとそこにはリディアがいた。
「リディ!」彼女の顔を見ることができただけで胸がいっぱいになるような心地だったけれどそれを隠していつも通りの態度をとる努力をしたよ。「リディも見舞いに来たのかい?」
「ええ、あなたが来ていると聞いたものでね。学院が休みだと退屈してると思ってさ。ほれ、これを持って来たんだ。あとこれはうちの家族からのフルーツの詰め合わせだ」
「わあ、ありがとう!」差し出された籠を受け取って中を見ると、りんごやオレンジが入っているのが見える。どれもおいしそうな実がついている。「ありきたりのものばっかりよ。でも果物っていったらこれぐらいしかないんだけどね。本当は他の店に行きたかったんだけど……」「充分だよ。うれしい!」そう言うと、彼女がほっとしたように笑顔を見せる。やっぱり可愛いと思った瞬間顔に火がついたかのように真っ赤になってしまった。慌ててうつむいて、彼女にばれていないかどうか心配になったが大丈夫だったみたい。彼女は「そう言ってくれるなら良かった」と言って笑った。僕は思わず彼女に飛びついてしまいそうになったがなんとか耐えた。「それで、その、あのさ……」「エドガー?」
そういえば何を言おうとしたのかよくわからないまま口を開こうとしてたみたい。「何でもない、気にしないで。さっき言った通り、ただ君の顔を見たかっただけさ」
「それだけ?ほんとうに?」「本当だよ」と答えるしかできない。すると、彼女は納得していないようだったがしぶしぶといった感じで引き下がってくれた。
僕らはそれぞれの部屋に戻り、その後しばらくしてハルシオンとミセス・レイチェルが来た。彼らは相変わらず元気そうだったけどエドガーの機嫌は悪い。「エドガー。そういつまでも怒ってちゃだめじゃないか」
エドガーは無言のままだ。困ったものだと思いつつ二人の話を聞いていく。するとだんだんエドガーの表情が変化していき最後には二人に向かって怒鳴るようにして言い放ったのだ。
「なんですか?それは!?僕が怒るのは当たり前でしょう?」「いやまあそうかもだけど」
「そうですよ!」彼は立ち上がるとそのまま出ていこうとするので、私は思わず彼の手を握った。そして彼に語りかける。「待って」彼の手を両手でぎゅっと握り締めながら見上げると、彼もこちらを見下ろしていた。「少し落ち着いて、冷静になりましょう?こんなときだからこそ私たちも仲良くしないと。そうでしょ?」「でも」「エドガー、お願い」じっと見つめてそう懇願すると彼はため息をついた後、腰を下ろすので、私は彼の方に身を乗り出すようにして口を開いた。「まずは私の話を聞いてもらえるかしら」
私がそう前置きをして話しはじめると彼は無言でうなずいた。
「私、学院に行こうと思っているの」と切り出した。
そうして自分の考えていること、学院に何があるのかを知りたいのだということを説明した。「それってつまり妖精が何かを学院で行っている可能性があるっていうことなのか?」
エドガーの質問に私は「まだわからない。ただの勘なの」と答えた。
二人は困惑したような顔をして互いに視線を向け合う。
「その、学院には結界があるはずだよね?それが機能してないっていうのかい?」「わからない。わからないからこそ確かめる必要があるんだと思う」 
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