生まれたばかりの子鹿を

　　　　　　　　　　　　　　　生まれたばかりの子鹿を
　テネシー州のある自然が傍にある街で農業を営んでいるクレオ＝ダリウス黒く縮れた髪の毛と黒い目に長い睫毛、彫のある長方形の顔で中肉中背の初老の男である彼が自宅の近くで散歩をしている時にだった。
　一匹の生まれたばかりと思われる子鹿が来た、鹿はよろよろとした足取りで彼に言えまで着いて来た、それでだった。
　ダリウスは家に帰ると妻のカーチャ、ブロンドの縮れた髪の毛を後ろで束ねたグレーの目が印象的な整った顔立ちで小柄な彼女にその子鹿を見せてから話した。
「足を怪我しているから暫くは」
「うちで面倒を見るのね」
「手当てをして」
　そしてというのだ。
「怪我が治るまではね」
「そうするのね」
「そうしよう、マックもそれでいいな」
「ワンッ」
　家の愛犬である茶色と黒と白のバーニーズマウンテンドッグの雄の彼にも言うと愛犬は尻尾を振って応えた。
　その彼を見てだ、ダリウスはあらためて笑って妻に言った。
「マックも納得してくれたみたいだし」
「それじゃあ」
「暫く間面倒を見て」
　そしてというのだ。
「野生に帰そう」
「野生の子は野生ね」
「そこで暮らすのが自然だしその保護にもなるしね」
　こう考えているからだとだ、夫は妻に答えた。
「これまで保護してきた子達と同じ様に」
「ええ、この子もね」
「そうしていこう」
　夫婦で話して学校から帰って来た子供達にも話してだった。
　一家でその子鹿の手当てをして面倒を見て言った、それから。
　子鹿の足の怪我が完治するとだった。
　ダリウスが雌の彼女を連れて森に行った、すると。
「ヒン」
「ヒヒン」
　鹿の群れに出会うとその群れからだった。　
　一匹の雌鹿が出て子鹿はその鹿の方に歩いていき。
　互いに首をいとおし気に擦り合わせた後で群れに戻った、子鹿は途中ダリウスの方を振り返ったがダリウスはその彼女に笑顔で告げた。