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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード ~歌と魔法が起こす奇跡~

作者:黒井福
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AXZ編
  第152話:蘇る過去からの憎悪

 
前書き
どうも、黒井です。

今回から透とクリスの受難が始まります。もしかしたらちょいと読んでて辛くなるかもしれませんがご了承ください。 

 
「――――はい、こちらはプラントの管理者の拘束を完了しました。民間人にも、負傷者はありません」

 村での騒動が一段落し、颯人達は人質となっていた村人の解放を行っていた。逃げ込んだ軍人たちは軒並み拘束し、周囲にアルカノイズが残っていないかを警戒する。

 その村人たちの中から、1人の女性が飛び出し一目散に透と共に居る少年の元へ駆けていった。

「ステファンッ! 何て危ない事をしてるのッ!」
「姉ちゃん、ゴメン……」

 どうやらこの女性は彼の姉らしい。弟が命の危険を冒して無茶をした事を叱りに来たのだろう。ステファンも自分が年齢にそぐわぬ危ない橋を渡った自覚はあるのか、心底申し訳なさそうに肩を落としている。
 そんな彼をフォローすべく、変身を解いた透が彼の肩に手を置きつつ女性落ち着く様に手で制した。

 透が宥めると、女性は彼が弟を助けてくれた事に感謝し頭を下げる。

「あの、ありがとうございます! 弟を助けてくれて……あら?」

 女性は頭を上げ透の顔を見ると、その瞬間唖然とした様子で目を瞬かせた。信じられないものを見るような目で透を凝視する姉の姿に、今度はステファンが首を傾げる。

「姉ちゃん? どうしたんだ?」
「あな、た……もしかして……?」

 弟の声も耳に入らない位驚きを露にした女性に、透の方も何かに気付いたらしい。女性とステファンの顔を交互に見比べ、そしてハッとなって手をポンと叩く。そして次の瞬間には何かに安堵したように笑みを浮かべた瞬間、女性はその笑顔に見覚えがあったのか今度こそ驚愕に目を見開いた。

「あ、あなたは……!!」

「お~い、透ー!」

 女性が何かに気付いた瞬間、村人の誘導をしていたクリスがやってきた。あちらはどうやら一段落したらしい。

 透が手を振り、クリスを手招きする。どこか嬉しそうな顔で自分を呼ぶ彼に首を傾げながら近付いたクリスは、彼と共に居る女性に思わず息を呑んだ。

「え、な……まさか、ソーニャ?」
「クリスッ! じゃああなたはやっぱり、透?」

 その女性……ソーニャが自分の名を呼ぶと、透は久し振りと言う様に笑みを浮かべて手を上げた。




 8年ほど前、透とクリスが雪音夫妻と共にこの国に訪れた時、夫妻の手助けをしてくれていたのがソーニャであった。土地勘のない彼らの為、ナビゲーターを務めたり物資を運んだりと彼女は当時の難民達の為に若くして精力的に働いた。

 その最中、彼女と透達は親交を深めていった。元々夫妻に比べて歳が近かった事もあるし、子供達には何だかんだで遊び相手が必要だった。透とクリスの2人も、共に救援活動を子供ながら手伝いつつ色々な事をソーニャと話し、共に笑い合っていた。

 尤もその関係も、ソーニャが運び込んだ荷物に爆弾が紛れ込ませられていた事が原因で崩れてしまった訳だが。

「無事だったんだな、ソーニャ……」
「えぇ……あの後色々とあったけど、どさくさに紛れて何とか逃げられて。……あの、2人は?」
「アタシと透は、アイツらに掴まっちまって……」

 透とクリス、ソーニャは少し離れたところに移動し、旧交を温めていた。と言ってもクリスとソーニャの間に流れる雰囲気はハッキリ言って重い。それも当然か。ソーニャには雪音夫妻を死に追いやった間接的原因と言う負い目があるし、クリスの方にもそんな彼女に罵倒を投げ掛けてしまったと言う負い目がある。当時は透が間に入りクリスを宥めたりしたが、完全に仲直りする前にクリスと透が武装組織の捕虜となってしまったので有耶無耶に終わったままだった。
 故にクリスもソーニャも、互いに何と言えばいいか分からず簡単な事後報告・近況報告をするのが精一杯であった。

 そんな中で、臆せずソーニャとの再会を喜んだのが透だ。彼は彼女の無事を喜び、そして彼女に弟が居た事をここで初めて知ったと驚いた。

〔ソーニャが無事で良かった。弟が居たんだね〕
「え、えぇ……あの時弟は村に居たから……ところで透? あなた、何で……〕

 筆談で会話に参加してくる透に違和感を覚えていると、クリスが苦虫を噛み潰したような顔で彼のみに起きた悲劇を端的に告げた。

「透は……アタシを連中から守ってくれて……アイツらに喉を…………」

 絞り出すような声で明かされた透の身に降りかかった悲劇に、ソーニャが改めて彼の首元を見る。そこにはスカーフが巻かれて首が隠されているが、その下がどうなっているのかを想像する事は難しい事ではなかった。

 それも自分が物資の中身の確認を怠った事が原因と、ソーニャは申し訳なくなり苦しそうな顔をして透に頭を下げた。

「ごめんなさい、透……!? 私、クリスの両親だけじゃなく、あなたの声まで……」

 透が歌う事が好きで、将来は歌で世界中の人々を笑顔にすることを夢見ていた事は彼女も知っていた。その夢が、自分が間接的な原因となって永遠に奪われてしまった事に、ソーニャは体から空気が抜けた様に頭がふら付き目の前が暗くなるような錯覚に陥った。
 自分は取り返しのつかないミスを犯してしまった。人の命や夢を奪うなど、許される事ではない。透と今は亡き夫妻に対する申し訳なさで、息をする事も苦しくなる。

 そんな彼女の肩に、透は優しく手を置き頭を上げさせた。顔を上げたソーニャの目からは涙が零れ落ちている。それを透はハンカチで優しく拭うと、優しい笑みを浮かべながらゆっくりと首を横に振った。

「え……?」

 言葉も無く告げられた想いに、ソーニャがポカンとしていると彼の声なき言葉を聞き取ったクリスが代弁してやった。

「気にしてない、ソーニャは何も悪くないってよ」
「え?」
「透がそう言ってる。透はもう、あの時の事なんて微塵も気にしてない。そもそも最初からソーニャが悪かったなんて思ってもいないんだ。だから気にすんな」
「そ、そんなの…………!?」

 そう言う訳にはいかない。謝って済む問題ではないのだ。透の声も、クリスの両親ももう戻る事は無い。もし謝って透の声やクリスの両親が戻ってくるのであれば、ソーニャには百回でも二百回でも謝る覚悟があった。

 しかしクリスもそれは望んでいない。本当はあの時からずっと分かっていた。ソーニャは悪くない。彼女を責めるのは違うと。
 透に叱られ、後になって冷静に考えれば自分はソーニャに何と残酷な言葉を掛けてしまったのだろうと後悔していた。

 そして今、透は自分の夢が奪われたと言うのにソーニャの事を許した。と言うより、クリスが言ったように最初からソーニャの事を起こっても恨んでもいない。だがソーニャ自身は、罪悪感と自己嫌悪で苦しんでいる。

 ならば、今クリスに出来る事は1つ。

「だったら!」
「ッ!?」
「だったら……今度日本に来て、パパとママの墓に花でも手向けてやってくれ。アタシはそれで十分だ。透もそれでいいだろ?」

 クリスに問われ、透は頷く。どんな形であれ明確な償いの仕方を示された時、ソーニャは暗雲が晴れたような気になった。

「クリスは、それでいいの?」
「アタシだって、ソーニャが悪かっただなんて思ってない。って言うか、寧ろ謝りたいのはこっちだったからな」

 そう言うとクリスは改めてゴメンと、ソーニャ抜向けた頭を下げた。両親を失った彼女の方が自分に頭を下げてくる状況に、逆にソーニャの頭がパニックを起こす。

「ちょ、クリスッ!?」
「ゴメン、ソーニャ! あの時、アタシは自分の事だけ考えてソーニャに酷い事言っちまった。でも、こうしてソーニャとまた会えて、今は本当に嬉しい。ソーニャが無事でいてくれて、良かった」
「クリス……」
「だから、もうこれでこの話はお終いだ。後他に何か言いたい事あるなら、それはパパとママに言ってあげてくれ」

 そう言って微笑むクリスを改めて見て、ソーニャは目の前にいる少女が嘗ての幼い女の子ではないのだと言う事を理解した。つい昔の面影を重ねてしまっていたが、思えばあれから8年は経っているのだからそりゃ成長してて当たり前だ。
 血の繫がりは無いと言うのに、妹を見守る姉の様な目線でソーニャはクリスの事を見ていた。

「分かったわ。ありがとう、クリス」
「礼を言いたいんなら透に言ってやってくれ」
「勿論、透もありがとう。本当、2人共すっかり大きくなっちゃって!」
「子供扱いすんなよ……」

 むくれるクリスだったが、その口元には確かな笑みが浮かんでいた。それを見てか、あるいは単純に堪えていただけなのかどちらからともなく笑い始めた。

「アハハハハッ!」
「フフフフフッ!」

 突如響く笑い声。透も声は出せずとも笑っている。

 颯人達はそれに気付きはするも、あの2人の身に起きた出来事を知っているからか何も言わない。今はああして、昔心に負った傷を少しでも癒してくれればそれでいいと。




 しかし…………彼らは忘れていた。

 このバルベルデはクリスと透の人生を狂わせた、ある意味で全ての元凶の地。

 そこには、嘗ての惨劇の残滓がまだ残っている可能性を、彼らは失念していた。
 いや、失念していたと言うのは言い過ぎか。彼らは想像していなかったのだ。
 過去の因縁が、まさか再び2人の前に姿を現すなど……




「あっ!? 颯人、1人逃げたッ!?」
「えぇっ?」

 突如奏の焦った声が颯人の耳に届く。見ると軍人の1人が両手を拘束されながらも逃げ出そうとしていた。ここで捕まるなど御免だとでも言うのだろう。逃げたところで行く当てなどないだろうに。

「ったく、往生際の悪いこって」

 ボヤキながら颯人はウィザーソードガンを取り出し、そいつの足元に向けて一発撃った。銃弾は颯人の狙い通りに湾曲する軌道を描き、逃げる男の足元の地面を抉り転倒させた。
 逃げようとした軍人はクリス達の近くで転倒し、砂埃を付けながら転がって止まった。

 そんな軍人を前に、クリスは溜め息を吐きながら立ち上がった。

「やれやれ……観念しな。大人しくしてれば…………!?!?」
「クリス?」

 起き上がった男の顔を見た瞬間、クリスは目玉が飛び出すほど目を見開き体をびくりと震わせて動きを止めた。だがよく見ると肩や手の先が小さく震えている。まるで何かを堪えようとしているかのようだ。

 その様子に違和感を感じたソーニャが声を掛けながら彼女の顔を覗き込むと、次の瞬間ソーニャは息を呑んで思わず後退った。

 何故ならクリスの顔は、信じられない位の怒りと憎悪に染まっていたからだ。

「く、クリス……? どうしたの?」
「テメェ……何で、テメェが…………!?」

 震える声を出すクリスに何事かと透も彼女に近付き、そして男の顔を見た瞬間全てを察した。その男の顔には、透も見覚えがあった。

 そう――――――

「何でテメェが、まだ生きてやがんだ…………!?」

 そこに居たのは忘れもしない……否、忘れられる訳も無い。2年前、殆ど個人的な感情で透の喉を切り裂き、彼から声と夢を奪い去ったあの武装組織の男だったのだ。

 気付いた時にはクリスは男に飛び掛かり馬乗りになっていた。突然飛び掛かられた男は反応できず後ろに倒れ、抵抗しようにも両手を縛られているので直ぐに押さえつけられる。
 そしてクリスは、押さえ付けた男の軍服に装着されているナイフを鞘から引き抜き、そのまま男に突き立てようとした。

「~~~~ッ!!」
「クリス、ダメッ!?」

 ソーニャの制止も聞かず、男をナイフで殺そうとするクリス。だが振り下ろされたナイフは男ではなく、ナイフの下に滑り込んできた透の腕に突き刺さった。

「ッ!? 透ッ!?」
「~~ッ!?」

 透の腕を突き刺してしまった事に動揺したクリス。その隙に彼は痛みを歯を食いしばって堪えながら彼女を押し出し、男から引き剥がして宥めようとした。

 男から引き剥がされた事で、クリスは透を押し退けて今度こそ男にトドメを差そうと暴れ始めた。

「放せッ!? 放せ透ッ!? 何でだッ!? 何でそいつを庇うんだよッ!?」

 訳が分からず暴れるクリス。その様子をソーニャは勿論、ステファンも固唾を飲んで見るしか出来ない。

「コイツがッ!? コイツがお前から夢を奪ったのに、何でアタシを止めるんだッ!? コイツの所為で透は、透の夢はッ!?」

 気付けばクリスの目からは涙が零れ落ちていた。憎悪に染まった顔で、涙を流して暴れるクリスからは言葉だけでは言い表せない気迫があり、近付く事が躊躇われる。
 それに怯む事無く透は必死にクリスを宥めようとしているが、今のクリスには透の声も届かないのか落ち着く気配がない。

 このままでは遠からず透が振り払われ今度こそ男が殺される。私怨でクリスに人殺しを差せる訳にはいかないと、颯人達も透と共にクリスを宥めようと彼女に近付こうとした。

 その時、周囲に肌を引っ叩く音が響き渡った。

「あ……」

 音の正体は透の手がクリスの頬を引っ叩いた音。その音が響いた瞬間、まるで周囲の時間が止まった様に誰も何も言えず動けもしなかった。

「と……とお、る…………」

 呆然とした声でクリスが透の事を見ると、彼はまるで鉛でも飲み込んだ様な顔で彼女の事を見ていた。

 その顔を見て、クリスは衝動的に透を突き飛ばしその場から走り去っていた。

「ッ!?」

「あっ! クリス、待って!?」
「おいクリスッ!」

 逃げるように走っていくクリスを咄嗟に引き留めようとしたソーニャと異変を感じてやって来たステファンだったが、これ以上状況がややこしくなると堪ったものではないので颯人は2人に動かないよう指示しつつ、逃げようとしていた男を魔法の鎖で雁字搦めに拘束した。

「なぁぁっ!? もうっ!? アンタらはそこ動くなッ! テメェもだ、絶対動くなッ!」
〈バインド、プリーズ〉
「奏、響ちゃんはクリスちゃんを追えッ! 翼ちゃんはおっちゃんに報告ッ!」
「わ、分かった!」
「はい!」
「直ぐに!」

 素早く指示を出すと、奏と響はクリスの後を追って村の外、夜のジャングルの中へと飛び込んでいく。翼は今し方起きた事を本部に報告し、弦十郎に指示を仰いでいる。
 そして颯人はと言うと、帽子を脱ぎ頭を掻き毟ると突き飛ばされて倒れたままの透に近付いた。その腕には、クリスが男に突き刺そうとしていたナイフがそのまま残っている。

「腕、ざっくりいったが大丈夫か?」

 颯人からの問い掛けに、透はナイフが刺さった腕をそっと押さえる。沈痛な面持ちで腕を押さえているのは、ナイフが刺さって痛む……と言うだけではなさそうだ。
 クリスに手を上げてしまった。仕方がない事とは言え、彼女の頬を叩いてしまった事を心の底から悔いているのが颯人にも分かった。

「……クリスちゃんの事は取り合えず奏と響ちゃんに任せとけ。ほら、その腕治療すんぞ。あんたらも、何時までもそこに居ないで、こっち……」
「ッ、はい……」

 颯人に引っ張り上げられて立ち上がる透からは覇気が感じられない。先程の事が余程ショックだったようだ。ソーニャはそんな透を気遣う様に、颯人と共に透に手を貸して歩く。

 透の事をソーニャに任せ、翼の元へ向かわせると颯人は帽子を押さえながら空を見上げた。暗い夜空の上には、土星の様な輪っかを持つ欠けた月が煌々と輝いている。

 普段なら風情の一つも感じるのだろうが、今は何故かその月の輝きが無性に忌まわしく颯人は思わず月に向けて舌打ちをしてしまうのだった。




***




「お~い、クリスー!」
「クリスちゃーんッ!!」

 一方ジャングルに入った奏と響の2人は、物の見事にクリスを見失ってしまっていた。途中までは逃げるクリスが草や葉を揺らす音と、彼女自身の荒い息遣いで朧気ながら居る場所が分かったのだが、途中から静かになり見失ってしまっていた。

 仕方なく声を上げてクリスを探すのだが、当然と言うべきかクリスからの反応はなく2人は途方に暮れてしまった。

「クリスちゃん、何処に行っちゃったんだろう……」
「あの逃げ方だと、本人にも行く当てなんかないだろうからね。我武者羅に逃げてたら、あいつ自身自分が今居る場所なんて分かりゃしないだろう」
「それじゃあ、どうするんですか?」
「ん~……」

 こういう時、人を探すなら颯人の使い魔の力を借りた方が手っ取り早い。アイツらは人や物を探すのにはうってつけ。事実颯人も何か探し物がある時は積極的にアイツらを使っていたくらいだ。
 これは一度戻って颯人に使い魔を出してもらうか? そんな事を考えていたその時、奏の耳に誰かのすすり泣くような声が届いた。

「……ん?」
「奏さん? どうし「シッ!」ッ!?」

 まだすすり泣く声に気付いていない響に喋るのを止めさせ、ジェスチャーで耳を澄ます様に指示する。響も奏に倣って耳を澄ますと、何処からか誰かが泣く声が聞こえるようになった。

「ッ! 奏さん、これ……!」
「あぁ、間違いない。クリス…………こっちだ!」

 風で揺らめく草木や葉の音に紛れて聞こえてくる泣き声を聞き取ると、2人はそれが聞こえてくる方に向けて慎重に歩を進めた。

 果たして、2人は気の影で膝を抱えて座り込み泣いているクリスの姿を見つけた。

「クリス……」
「クリスちゃん、戻ろう? 透君も、きっと心配してるよ」

 詳しい事は分からないが、クリスがあそこまで怒るなど余程の理由があっての事だと言う事は分かる。透だってそれは分かっている筈だ。先程は手を上げてしまった彼も、その実クリスの事は心配しているに違いない。

 だから早く戻ろうと響が手を差し伸べると、クリスは泣き腫らして赤くなった目を2人に向けて首を振った。

「分かんない……分かんないんだ……」
「何がだ?」
「透が……透が何考えてるのか、分かんないよぉ。何で、何で…………アイツは透から全てを奪った奴なのに、何で…………!?」

 クリスが繰り返す”何で”と言う言葉に、答えられる材料を奏も響も持ってはいない。

 泣き崩れるクリスに、2人はそっと寄り添い落ち着くまで彼女の背や頭を優しく撫でるしか今の彼女達に出来る事は無かった。 
 

 
後書き
と言う訳で第152話でした。

ステファンが足を失わなかった事と、透が間に入った事でクリスとソーニャは原作と違い仲直りです。
その代わり透とクリスが仲違いしてしまいました。一応次回以降で補足する予定ですが、軽く説明しておくと透の喉を切り裂いた男はあの後起こったジェネシスの襲撃から逃げ延びました。そして、行くところが無くなった彼を政府軍が拾いそのまま軍人になった感じです。男が政府軍に身を置く経緯なんかは、詳しくは後程描きますので。

執筆の糧となりますので、感想評価その他よろしくお願いします!

次回の更新もお楽しみに!それでは。 
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