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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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新たな力

 
前書き
予想以上に早い進みをしている100年クエスト編。
もし追い付くようなことがあればこの後に予定している大魔闘演武編を同時進行で進めていこうかとも思ってます。
原作が隔週じゃなければなぁ・・・ 

 
ウェンディside

「ウェンディは死んでも守ってやる!!」
「トウカもな!!」
「てかこの猫なんだ!?」
「そっちがトウ・・・いいから逃げるのよ!!」

薄れていく意識の中、わずかながらに聞こえてくるウォーレンさんたちの声。さっきみんなに助けてもらった際に私の魔力は全部使いきってしまったので、動くことができずに運んでもらっています。

「シリル・・・」

わずかに視界に見える剣の雨。それが恐らく至るところに降っていることが想像できた私は思わず最愛の少年の名前を呟いていました。

「頑張って・・・」

そう言ってから、フッと笑顔になりました。シリルならきっと大丈夫、そんな気がしているから。


















シリルside

背中から生えた羽根。無意識に出てきたそれは俺のことを守ってくれていたようで、視界が拓けると周囲に剣の残骸が落ちているのが目に入る。

「人間ごときが神の力にあらがうというのか・・・」

無傷で生還した俺を見てアルドロンは腕組みをしている。その姿はいまだに余裕を崩さず、こちらを見下しているのがよくわかる。

「いや・・・人にあらず。竜の子・・・そして天使の子か」

しかし彼は一切こちらから目を切ることはない。それは俺のことを実力者として認めている証拠なのだろう。

「抗うさ。お前が俺たちの前に立ち塞がるなら」

漲る力。それはこの羽根のおかげだけじゃない気がする。アルドロンを弱らせてくれた皆さんの力が伝わってきているような・・・不思議な感覚だ。

「俺は俺を信じてくれる人がいる限り・・・絶対に折れない。それが妖精の尻尾(フェアリーテイル)だからだ!!」

羽根を大きく開き一気に加速する。その速度はこちらを凝視していたはずのアルドロンも視認できていなかったらしく、簡単に間合いに入ることができた。

「竜魔の鉄拳!!」
「ぐぉぉ!!」

さっきまでなかなか入らなかった攻撃が見事にヒットする。しかしアルドロンの身体は固く、ダメージを与えきれていない。彼は何とか踏ん張るとこちらに手を向ける。それに合わせて再び剣舞の雨が降り注いできた。

「見える!!」

さっきまでは避けるので精一杯だったそれを羽根を大きく羽ばたかせ全て打ち払う。自身のもっとも自信のある攻撃を防がれたことでアルドロンは動揺していた。

「そこだぁ!!」

それにより隙だらけとなっている彼へ体当たり。そのまま後方へ押し込もうとするがそこは神の名が付く存在なだけあり、難なく受け止められてしまう。

「人間ごときが!!ドラゴンの力を使うなど!!」
「ぐはっ!!」

真上から拳を叩きつけてくるアルドロン。身体が浮いていたこともあり俺は堪えきれずに地面へと叩きつけられた。

「うぬらは捕食される側だ。神にたてつこうなど100年早いわ!!」
「ぐっ」

地面に伏せている俺の脇腹に蹴りを放つアルドロン。その威力は絶大で体重の軽い俺は簡単に飛ばされたが、羽根をうまく使って着地してみせる。

「100年は経ったよ」
「!!」
「あなたたち五神竜を倒すために100年・・・いや、それ以上の間たくさんの人たちが命を落としていった。そして今・・・俺がお前を倒してみせる!!」
「ほざけ」

少しずつ力が戻ってきているのか、先程よりも速い動きで接近してきたアルドロンは蹴りを放ってくる。それを何とか回避した俺は拳を握り締める。

「全ての人間は我が養分、我が下僕。何年経とうがそれは変わらぬ。人間は永遠にドラゴンには勝てぬ!!」

言葉の揚げ足を取られたことで怒り心頭のアルドロンも同様に拳を振り抜いてくる。両者の拳は衝突し、周囲に衝撃波が巻き起こる。

「なっ・・・受け止めただと?」

アルドロンの拳を真っ正面から受けた俺に驚きを隠せない様子。俺はそこで最後の確認をすることにした。

「お前は今まで何人の人間を殺してきたんですか?」
「ん?そんなことは覚えておらぬ。食物の数など・・・だが、この我の上に街を作らせそこに住む人間のかずはこの100年で30万くらいか?
皆、我を信仰し我に命を捧げた。愚かな奴らよ、ただの養分とも知らずに幸せになれると信じておった」

悪びれる様子もなくイヤらしい笑みを浮かべるアルドロン。それを聞いた俺は覚悟を決めるために口を閉ざしている。

「この先も全ての人間は我の前にひれ伏す!!我が養分となるために!!」

そんな俺に容赦なく拳を突き立てるアルドロン。だが、不思議と先程までのようなダメージを感じない。

「水神竜さんはいい人でした。彼を信仰している人たちのことを考えて共存しようとしていた。だから俺たちは、もし五神竜が全員同じような考え方を持っていたら戦わないと決めたんです」

結果的に水神竜さんは白魔導士に操られたことによって戦わざるを得ない状態になった。ただ、それも彼が自身の力の暴走を抑えるためにやろうとしたことによって起きたことだから咎めることはできない。

「けど、お前は違う。俺たちを敵・・・いや、生き物とすら考えてない。きっとこれからも人間たちを傷つける。だからここで倒してみせる」

魔力の全力解放。それにより水と風が俺の周囲へと舞い起こる。それを見てもアルドロンはなおも格下と俺を判断しているのか、鼻で笑っているのが傍目にもわかる。

「ずいぶんと都合のいい理屈だな。人間とて食すために動物を殺すだろう」
「生きるためですからね。お前みたいに全員を殺そうとは思いません。それに、俺たちはドラゴンと共存できてました」
「ぬかせ!!」

そう言った途端、彼の表情が豹変した。動揺なのか苛立ちなのかわからないが、その攻撃には先程までのようなキレも力もなく難なく交わすことができる。

「ドラゴンは全ての生物の頂点。本来、人間が我と会話することすらおこがましい」

次々に攻撃を繰り出している俺はそれを次々に掻い潜っていき、アルドロンへと迫っていく。

「俺はドラゴンに育てられた!!」
「貴様の親はドラゴンではない。ドラゴンの形をした人間だ」

なおも手を休めることなく攻撃を幾度となく放ってくるアルドロン。でも、彼の言う通りヴァッサボーネは本物のドラゴンではない。元々はただの人間で、そこからドラゴンの肉体をもらったという話だった。ただ・・・

「だったらそのドラゴンは誰よりも人間を愛していたじゃないか!!」

二つの魔法を合わせた拳でアルドロンの頬を捉える。それを受け、アルドロンも遠距離型の攻撃から接近戦へと切り替えたのか、蹴りを放ってくる。

「ならばそいつは愚かな下等種に成り下がったドラゴンだ!!」

誰よりも何よりも強く、誇り高い存在であることを証明するために拳を振るうドラゴン。動きは粗いしキレも損なわれているはずなのに、その一撃はどこか重たく感じる。

「そんなことはない!!」
「!!」

ただ、それでも俺の心を砕くことはできない。なぜなら俺はもっと重たいものを背負っているのだから。

「そのドラゴンは人を守るために戦って、そいつを倒した奴はお母さんに殺されてる!!人間がドラゴンより劣っているわけじゃない!!」

お母さんは俺とヴァッサボーネが殺されたという勘違いから目の前の襲い掛かってきたドラゴンを一網打尽にしている。お母さんは人間じゃなかったかもしれないけど、共存を望んでいたドラゴンたちと同じ意志を持っていたはずだ。

「俺はみんなの意志を背負って戦うんだ!!」

アルドロンの顔面目掛けて頭突きをし、体勢を崩してからその土手っ腹へと拳を叩き込む。その一撃はかなり効いているようで、彼の身体はふらついていた。

「なっ・・・まさか・・・」

なんとか踏みとどまろうとしているアルドロン。その顔は俺を捉えているが、何かに気が付いたのか目を見開いている。

「この魔力の感じ・・・間違いない・・・」

反撃をしてこようと力を入れたように見えたが、踏ん張りきれなかったのか膝がガックリと地面につく。それにより出来上がった無防備な体勢を俺は逃すことなく接近する。

「滅竜奥義!!」
「こいつはハヤアキツのーーー」

何かを言いかけているアルドロン目掛けてジャンプする。俺が持てる全ての魔力と全身の力を利用した渾身の一撃を放った。

「雲竜天空水!!」

ヴァッサボーネから教わった"水中海嵐舞"と天海が書いてくれた書物から得た"雲竜水"。これを合わせてなおかつ天空魔法を合わせた新しい技。
指を立てることで魔力を押し出しながらそれを敵へと押し付けるようにぶつけることで最大限のパワーを一点に集中させることができたその一撃は、相性最悪であるはずの木神竜の守護神の腹部を貫いたのだった。

「バカな・・・この我が・・・」

身体を貫かれたアルドロンは悲痛の叫びを上げながら、自身が見下し続けていた存在に破れた事実を受け入れられないのか、狂気の表情を浮かべている。

「あんなガキの・・・ーーーに・・・」

徐々に小さくなっていくその言葉を聞き取ることはできなかったが、アルドロンは何かを言い残しながら崩れていく。それと時を同じくして、彼の本体の腹の中と思われるこの場所も崩れていた。

















第三者side

アルドロンから吹き上がる水と風の魔力。それからほどなくしてその場に伏せる巨大なドラゴンを上から見ていたその男は笑っていた。

「手助けがあったとはいえ、アルドロンに勝つとは。やっぱりこいつは面白い」

水色の髪に白のメッシュが入っているその男は泉に広がるその光景を見ながらそんなことを言っている。

「君も彼と戦いたいと思ってるのかい?」

そんな彼は後ろに立っている男へと声をかける。大きなあくびをしていた水色の長い髪をした彼は目元を擦りながら返事をした。

「やれるに越したことはないけど、別にいいかな。俺はもうそいつらにそこまでの興味はないよ」
「ふーん、そうなんだ」

信じられないといった様子の人物は動かなくなった巨大なドラゴンの上で、桜髪の青年に助けられている少年を見ると安堵したような息を漏らす。

「てっきり仕掛けるのかと思ってたけど、そうじゃないんだな」
「あぁ。まだ彼に会うには早すぎる」

地上の様子を見て満足したのか、立ち上がり泉に背を向けた彼は男の方へと歩いていく。それを受け、水髪の人物は大きな伸びをしながら彼を見送る。

「そういえば、アンクセラムとよく会ってるみたいだけど、俺には声がかからないのかい?」

すれ違い様にそんな問いをぶつける人物。それを受けた彼はわざとらしく首を傾げてみせた。

「なんで?」
「いや・・・知らないならそれでいい」

それ以上の問いかけをしようとはせずにその場から去ろうとした男は再び歩みを始める。しかし、彼が一定の距離を離れたタイミングで男はわざとらしく笑いながら声をかけた。

「元ドラゴンのクセに女々しいねぇ、ハヤアキツ」
「!!」

その言葉が耳に入ると同時に振り返るが、それを言い放った人物はすでにそこにはいない。言い逃げされたことを腹立だしく感じたが、それ以上の怒りは無意味だと考えた彼は踵を返し、その場から立ち去る。

「まさか俺の身体を使って竜迎撃用の魔法を教えるとはね。あげる相手を間違えたかな?」

そうは言いつつも彼の顔は笑っていた。まるで新しいおもちゃを与えられた子供のようにも見えたそれだったが、よく見ると悪魔のような、悪者のようにも見えるそれは見るものによっては恐怖を与えるほどの表情だった。




 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか?
天海とかティオスとか出てくるからもっと盛り上がるかと思ってましたがそんなでもなかったアルドロン編終了です。
そしてオリジナルストーリーの方のラスボス的な立ち位置のキャラを明確に出してみてます。
次はあの小さくなるウェンディたちが出てくるはずなのでちょっと楽しみだったりしますww 
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