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イベリス

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第九十六話 お盆になりその十

「言うならドキュンが占領した場所よ」
「世紀末な場所になるのね」
「そうなるとね」
「あんなところだと本当にね」
 咲も言った。
「逃げられるなら逃げるわね」
「そうでしょ、だからね」 
 それでというのだ。
「皆逃げて」
「誰もいなくなるわね」
「それで暴れた連中は嫌われて」
「今話している連中でも特に」
「それで餓鬼の中でもね」
 とりわけというのだ。
「最悪のね」
「餓鬼になって」
「ずっと苦しむのよ」
「そうなるのね」
「ちなみに餓鬼と言っても色々なのよ」
 一口に言ってもだ。
「苦しみ方もね」
「色々で」
「そんな連中こそね」
「最悪の餓鬼になって」
「苦しみ抜くから」
 尚餓鬼の寿命は一万五千年と言われている、それだけ餓えと渇きに苦しむことになるのだ。
「自業自得でね」
「まさにそれね」
「餓鬼になること自体がね」
「自分が招くことね」
「そう、自分が卑しい悪事ばかり働いたから」
 それが悪意に基づいても善意でそうでもというのだ。
「心が餓鬼になって」
「死んで本物の餓鬼に生まれ変わるのね」
「それでずっと苦しむのよ」
「自業自得ね」
「自分が蒔いた種が実ったものからは逃れられないのよ」
 愛は達観した様に言った。
「決してね」
「そうなのね」
「だからね」
 それでというのだ。
「悪いことはしないことよ」
「それに尽きるわね」
「ええ、悪事は自分に返って来るし」
「嫌われて最悪餓鬼になるだけね」
「そうよ、ドキュンになっていいことなんてね」
「ないわね」
「ドキュンはドキュンしか集まらないし」
 それにというのだ。
「本当の友達もね」
「出来ないのね」
「言うでしょ、君子は和して同じずで」
「論語だった?」
「そう、それで小人つまりドキュンはね」
「同じて和せずね」
「つまり友達でいる様で」 
 その実はというのだ。
「ごっこよ」
「いざとなれば裏切る者同士ね」
「そうよ、本物の人は不良でも裏切らないけれど」
「ドキュンだとなのね」
「平気で裏切るわよ」
 そうするというのだ。
「というか不良でも外道なことをするかどうかで」
「わかるわね」
「ドキュンは外道よ」
「そうした行いをするのね」
「そう、そうした行いをする連中はね」
 愛は咲に真面目に話した。 
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