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第四章

「それではじまって」
「それで、ですか」
「街は変わってもな」
 ニューヨークはというのだ。
「それでもな」
「変わらないですか」
「そうしたものがあってもいいってな」
「そうした考えで」
「この店をやってるんだよ」
「そうですか」
「金が必要でもな」
 橋本に笑ってこうも言った。
「こうした店をやるには」
「それはそうですね」
 前田もその通りだと答えた。
「やっぱり」
「ああ、けれどな」
「それでもですね」
「経営出来るんならな」
 この条件が必要でもというのだ。
「こうした店があってもいいだろ」
「そうですね、本当に」
「今本当にな」
「世界的にですね」
「ややこしい時でな」
 バーテンダーはこのことは苦い顔になって述べた。
「戦争になって」
「何でも高くなって」
「インフレも起こってな」
「特にこのニューヨークでは」
「そのせいでな」
「はい、物価が高くて」
「そうそう店で食えないだろ」
 こう前田に話した。
「俺達もだよ」
「全くですね」
「苦しくて仕方ないですよ」
 二人でバーテンダーに応えた。
「今は本当に」
「苦しい限りですよ」
「けれどな」
「それでもですね」
「経営出来るならですね」
「こうした店があってもいいだろ」
 こう言うのだった。
「そうだろ」
「はい、確かに」
「そうですね」
「お陰で楽しめました」
「僕達も」
「それは何よりだよ、俺も仕事があってな」
 バーテンダーのそれがというのだ。
「何よりだしな」
「そうですね」
「そのこともありますね」
「ああ、じゃあまたな」
「はい、また来ます」
「そうします」
「そうしてくれよ、あとあんた達の言葉は日本語だな」 
 バーテンダーは二人の間で話していた言語についても話した。
「そうだな」
「はい、そうです」
「日本語です」
 二人もその通りだと答えた、英語で。
「私達の言葉は」
「そうです」
「そうだよな、独特の言葉だからな」
 それ故にとだ、バーテンダーは二人に明るく笑って話した。
「そうですか」
「わかるんですね」
「英語を喋ってもな」
 それでもというのだ。
「訛りが出るしな」
「日本語のですね」
「それがですね」
「そうなるからな」
 それでというのだ。
「わかるよ」
「そうなんですね」
「やっぱりわかりますか」
「何を喋ってるかわからなくてもな」
 それでもというのだ。
「日本語ってことはな、けれどどうせ高いか安いかとかだろ」
「はい、話していたことは」
「そなのでした」
 二人もその通りだと答えた。
「実際に」
「そうでした」
「そうだな、けれどうちはそうした店でな」
「安いからですか」
「それで、ですか」
「楽しんでくれよ、味もよかっただろ」
 カクテルのそれもというのだ。
「そうだっただろ」
「はい、本当に」
「そちらもです」
「だからな」
 そのこともあってというのだ。 
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