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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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ゴッドシード・アルドロン

 
前書き
新しい仕事が予想の数倍肉体労働でわりとしんどくて更新のやる気が削がれてる件について 

 
第三者side

ガチャッ

評議院のある一室。そこの扉が開くと中に赤色の髪の青年が入ってくる。

「会議は終わったのか?」
「いい案が思い付かねぇからな。一旦休憩だ」

疲れた表情を隠す様子もなく椅子へともたれ掛かった彼を見ても労いの言葉もかけず、男は目の前にある食事に手を付けている。

「ドラシールというところには行かなくてよかったのか?」
「近場にアイリーンってのがいるらしいからよぉ、そいつに様子を見てもらうことにした」
「アイリーンか」

その名前を聞いた男はつまらなそうな表情を浮かべている。彼女の実力がわかっているからこそ、役割が与えられないことが残念でならないようだ。

「俺もなんか食ってくっかなぁ・・・ん?」

部屋から出ようとしたカミューニだったが、窓の外からそれを叩く音が聞こえてそちらへと視線を向ける。そこには見知った少女がいたため、彼は窓を開け、中へと招き入れる。

「大変よ、二人とも」

中に入るなりロングの髪をお団子ヘアにしているその少女は顔を青くして声を上げる。その様子を見て黒装束に身を包んでいる男も手を止め、そちらへと顔を向ける。

「そんなに慌ててどうした?
















ヨザイネ」

その少女とはアルバレスとの戦いで命を燃やしたはずのヨザイネだった。しかし、そんな彼女が来たにも関わらず二人は驚く素振りもなく平然としている。

「シリルとナツが・・・殺されそうなのよ!!」
「「!!」」

その言葉を聞いて二人は驚愕の表情へと変化する。しかしそれを伝えに来た少女は大慌てのため、カミューニは彼女の頬をつまみ落ち着かせる。

「どこにいるんだ?あの二人」
「ギルティナ大陸のドラシールって街に・・・」
「ん?そこにはアイリーンが行ってるんじゃなかったのか?」

黒装束の男が先ほどの会話のことを思い出し問いかける。それを受けた少女は首をかしげた。

「アイリーンなら他の依頼の途中だからってすぐいなくなったみたいだよ」
「あのアマァ・・・」

ブチキレそうになっているカミューニだったがそれが意味のないことに気付き、深呼吸して感情を抑える。それから彼は後ろにいる男へと視線を送り、それを受けた彼はわざとらしい大きなタメ息をしてから立ち上がる。

「お前は行かないのか?」
「それするならオメェらのことも話さなきゃならなくなる。ヨザイネはともかくオメェは・・・な」
「なるほど」

絶賛会議の途中である彼はさすがに自制心を持っていたようでその言葉に男も納得する。しかし気乗りしないのか、男の足取りは非常に重たい。

「ちょっと!!私ここにいられる時間限られてるんだから早くしてよ!!」

そんな彼の姿を見て苛立ちを隠せないヨザイネ。そんな彼女の肩に手を乗せると、二人はその場から一瞬で姿を消した。

「シリルとナツで勝てない相手・・・どんな奴なんだ?」

残された青年は相手の検討がつかず腕組みをしている。しかしその思考が無駄であることに気が付いた彼は、すぐに別のことへと意識を向ける。

「今度こそ何か食ってくるかな」

二人の心配などする様子もなく部屋から飛び出していく青年。彼は会議により疲れた身体に癒しを与えるべく、まずはその腹を満たすことにしたのだった。


















ヨザイネの魔法により別の場所へとやってきた二人。そのうちの一人、黒装束の男は周囲を見回し状況を確認する。

「ずいぶんと荒んでいるが、天使の仕業ではないようだな」
「うん。ただ、詳しくは言うことができないのよねぇ」
「構わん、興味もない」

崩壊している街を見ながらも関心のない男は少女に言われるがままに少女の指差す方向を見る。そこには懸命に戦う水色の髪の少年とすでに戦闘不能に陥っている桜髪の青年の姿が見える。

「何・・・」

しかし彼の目はそんな二人からすぐに外れた。その目に映るのは自身がよく知る青年が、笑いながら少年を蹂躙する姿。

「相手はどうやら変身系の魔法が使えるみたいなの。それでティオスになってるせいで手も足も出ない状況よ」

圧倒的な力の差になす統べなくやられていく少年とそれを平然と行う青年。その人物に一瞬頬が緩んだ男だったが、何かに気が付いたらしく、暗い表情へと戻った。

「あと何分いられるんだ?」
「たぶん10分ないくらいかな?本当は手伝いたいけど私じゃティオスになんて歯が立たないし」

そう言葉を発する少女の身体が震えていることに気が付いた。それを見た男は少女の頭を叩く。

「そういえば、あいつは目がいいんだったよな?」
「あいつって・・・シリルのこと?」

無言で頷く彼にそうよと答えるヨザイネ。それを聞いた男は今度は不敵な笑みを浮かべていた。

「5分で終わらせてくる、少し待ってろ」
「え!?5分!?」

それだけ言って飛び出そうとした男の腕を掴んで引き止める。それがなぜなのかわからなかった彼は目を細めながら振り向いた。

「5分は無理でしょ!?あいつとあなたはほぼ互角なのに・・・」
「そうだな、俺とティオスは互角だ」
「だったら・・・」
「ただ、あれはティオスじゃない。ただの木屑だ」

そう言った彼はどこか寂しそうな表情を浮かべ、地面に伏せている少年にトドメを刺そうとしている存在を倒すために飛び出していった。
















シリルside

「天海・・・さん?」

一年前の戦いで俺たちの前に立ち塞がった最大の脅威の一人であるその人は、倒れているティオスを見下ろしながら冷静に口を開く。

「その程度でティオスを語るな。お前程度の力で再現できるほど、あいつは弱くない」

髪には白髪が混じっており一年前よりも老けた印象を与える。ただ、その白髪の増え方はたった一年のものとは思えないほどで、彼に何があったのか心配になってしまう。

「私程度・・・だと?」
「そうだ。貴様のような木屑では、あいつになることなど不可能だ」

この人はティオスに対して相当な思い入れがあることはよくわかる。しかし彼のことは記憶にこのティオスは知らないのか、彼の言葉に憤りを露にしながら立ち上がる。

「たかが食物の分際で・・・神に抗うなど・・・」

完全に怒りを抑えられなくなっているティオス・・・いや、ティオスになっているウルフェンは彼が持っている魔力を全て解放したように見える。それにより先程よりもさらに魔力が上がっており、俺は鳥肌が立った。

「シリル」

それなのに、真正面でそんな存在から殺意を送られているはずの彼は冷静そのもので俺へと声をかける。

「よく見てろ」
「え?」
「これがお前が目指すべき戦い方だ」

そう言った天海は速攻を仕掛ける。普段の彼なら敵の動きを見極めながら動くはずなのに、それとは異なる戦い方に違和感を覚えた。

「竜魔神の・・・怒号!!」

そんな彼目掛けて無慈悲に放たれるブレス。天海の速度は相当早いため相対的にティオスの攻撃力がより上がってしまう。これではさすがにダメだと思っていたところ・・・

「やはり弱いな」

天海は片手でそれを受け止めると、それによってできた魔力の合間を直進していく。

「何!?」

まるで重戦車のように進んでいく彼に驚いているティオスだが、そんな余裕は一切ない。瞬く間に間合いに入った天海は首もとへと蹴りを入れ、それを受けた青年は咳き込む。

「この・・・」

しかしそれで怯むような奴じゃない。整っていない呼吸のまま彼は天海の脇腹へと手刀を放つが、彼はそれに肘打ちを放ち地面へとティオスの手を叩き落とす。

「すごい・・・」

思わずそんな言葉が漏れ出た。俺とナツさんが二人がかりで戦っても歯が叩かなかったのに、この人は一人で・・・それも圧倒してみせている。でも・・・

「何を目指せばいいのかわからない・・・」

よく見てろとは言われたけど彼の能力が高すぎて全く参考にならない。何を持って彼は俺にヒントを与えてくれようとしているのかわからずにいると、彼はこちらに一瞬視線を向け、口を開く。

「その目を使ってよく見てろ」
「え?いや・・・でも・・・」

あの戦いからこの目に入れた魔水晶(ラクリマ)を使うと目に痛みが走ってうまく魔法が使えない。そのことを彼は知らないからそんなことを言っているんだと思ったけど、彼は敵と対峙しながらさらに声を上げた。

「それはお前が恐怖を抱いているからだ」
「恐怖?」
「そうだ、お前は俺たちに負けたこととその時のアクシデントを勘違いしている。お前はそれをもっと使いこなせる存在のはずだ」

性格も姿も全然違うのに、その声と匂いでお父さんのことを思い出してしまう。そのせいなのか、俺には彼の声がよく耳に届いた。

「ふぅ・・・よし」

彼の言葉を信じて目を解放する。目が痛みを感じているような気がするけど、もし彼の言葉を信じるならそれは俺の気持ちが原因のはず。

「大丈夫、大丈夫」

そう言い聞かせながら目を解放し続けていると、次第にあることに気が付く。それは戦っている二人の魔力の流れ・・・いや、正確にはティオスの魔力の流れと天海の動きだ。

「これは・・・一体・・・」

ティオスの繰り出す攻撃を回避することなく受け止める、もしくは弾いて攻撃を繰り出す天海。その彼の動きにはいくつもの驚かされる点があった。

その中でも一際俺の目についたのはティオスの攻撃をいなす時だ。ティオスの攻撃は精度も高くほとんど隙がないように見えていた。しかし、ほんのわずかにある魔力の弱いポイントを的確に彼は捉えており、その"点"だけを捉えることによって相手の攻撃を最小限のダメージで受け流しているのだ。

「見えてるの?いや・・そんなこと・・・」

魔法を持たない彼が魔力の流れを読み切っているとは思えない。しかし、そう思わせてしまうほど彼の動きは無駄がなく、相手の全てに対応している。

ティオスが動き出すよりも早く彼も重心を動かし最速で対応し、自身はもっともダメージを受けないところでそれを抑える。彼は恐らくそれを感覚でやっているのだろうけど、その全てを見れる俺からすると本当に参考になる。

「これが・・・目指すべき戦い方・・・」

無駄な動きを減らし最小の力で最大の攻撃を行っていくそれを見ることに集中する。その視線に気が付いた彼の表情はどこか笑っているように見えた。
















第三者side

目の前の相手を圧倒している男は真剣な眼差しで自身を見ている少年のそれに気が付いたらしく、小さく笑みを浮かべていた。

(そうだ、それでいい。そうでなければつまらない)

言葉を発することなくただこの戦いを見入っているが、その真剣な表情は彼が求めていたものに間違いなかった。

(お前がその力の使い方を理解すればもっと強くなれる。そうすればいずれお前は俺の前に立ち塞がるだろう)

強いものと戦うことが彼にとって最高の存在であるティオスの一部であるシリル。その彼の成長は天海にとって何物にも変えがたいものだ。

「さぁ、終わらせるか」

目の前でこちらに迫ってくるかつてのライバルの姿をした存在に視線を向ける。

「ありえない・・・私が・・・ゴッドシードの一角が崩されるなど・・・」

一歩踏み込んだ天海を見て彼は後ずさった。想定外の魔力を持つ男になることができたにも関わらず、それをも平然と上回ってくる男の登場にいつしか神と称される存在としての威厳など消え失せていた。

「残念だな。俺もお前も、万全な時に戦いたかった」
「まさか・・・まだ上があると---」

最後の言葉を言うことも許されず土手っ腹を貫かれるティオス。それは木屑となり崩れ落ちると、地面へと儚く崩れ去った。

「さて・・・」

戦いを終えた天海はシリルの方へと歩み寄る。彼はそんな彼に声をかけようとしたが、何を言えばいいのか思い付かない。

(なんて言えばいいの?元々は敵だった人なのに・・・)

関係が関係だっただけにかける言葉が見つからない。その間に彼はシリルのすぐ横へと落としていた布を拾い、顔を隠している。

「悪いが俺はこれで帰らせてもらう。それと、この事は誰にも言うな。特にカミューニだな」
「なんで?」
「あいつにバレると後処理が面倒だ」

それを聞いてシリルは思い出していた。ミラが言っていたナツたちが天使に負けた直後、カミューニが誰かを連れてその国に偵察に言ったという話を。恐らく今の流れから、それが天海なのだろうと察しがついていた。

「どうだ?参考になったか?」

顔を完全に隠した彼の声は相変わらずの無愛想なものだった。しかし、今の少年にとっては逆にそれが清々しかった。彼の裏表の無さは信用に値すると感じられたからだ。

「うん。なった」
「ならいい」

そう言って天海は少年の頭を軽く叩くとすぐに踵を返しその場から去ろうとする。その際彼は少年へと声をかけながら歩を進めていた。

「いずれ俺はお前の前に立ち塞がるだろう。それまで力をつけておけ」

彼の芯の強さがその一言でわかったシリルは笑っていた。そして思わず口が滑り、そんなことを言ってしまう。

「うん!!ヴァッサボーネ!!」

その呼び名を聞いて天海は思わず足を止め振り返った。

「それは俺ではない、この世界の---」

そこまで言いかけて彼は目を見開く。その目に映るのは目の前の少年を地面へと引きずりこもうとする植物の姿。

「何これ!!うわ!!」

そのまま地面の中へと引きずり込まれてしまう少年。それを目の前にした天海は驚いた表情をしていた。

「ほう、まだ先があったのか」

守ったはずの少年が消えたにも関わらず焦る様子もなくそう呟いた彼は、その穴に向かうことはしない。近くに倒れている桜髪の青年の元に歩み寄ると、その頭部をチョップする。

「うがっ!!なんだ!!」

青年が意識を取り戻したのを確認すると、彼は自身に気が付いていないその人物に背を向け歩きながら声をかける。

「この場から離れろ、命が惜しければな」
「あぁ!?誰だお前!!」

まだふらついている様子の青年に一瞥もくれることなく、一言も答えることもせずその場からいなくなる男。取り残された青年は頭をかきながら、周囲を見渡していた。

「あれ!?ティオスは!?シリルもどこ行った!?」

先ほどまで敵対していた存在と共に戦っていた少年がいないことに気が付いた彼は二人の名前を叫びながら、駆け回るのだった。
















シリルside

急に足元を掬われたかと思ったところ、俺は見渡す限り木々に覆われている空間にいた。

「何ここ?アルドロンのお腹の中?」

巨大なドラゴンの中なだけあってかなりこの空間は広い。すると、突然周囲に声が響いてきた。

「五つのオーブには五人の守護神が宿っていた。ウルフェンは人々の心を読み、メトロは力の大群を持ち、ギアーズは計算による策士、ドゥームは人々に死をもたらす」

どこから聞こえているのかわからず周囲を見渡すが、誰の姿も見えない。もしかしてアルドロンが俺に心の中で語りかけているのか?

「今、その一角が崩された。ゆえに完全なる目覚めのために貴様を吸収することにした」
「あ?何言ってんの?」

ずいぶんとナメられた発言に苛立ちを募らせる。すると、目の前の木の一部が縦に割れたかと思うと、中から先ほど現れたような人の形の木が・・・王冠を被った姿のそれが現れる。

「ゴッドシード・アルドロン。ワシはアルドロンの脳、ゴッドシードの長でありアルドロンなり。ワシの意志を持って貴様をアルドロンの水分として吸収する」

先ほど天海が倒したのはこのアルドロンの力のうちの一人だったらしい。それが失われたことでアルドロンは力をわずかながらに失ったことから、それを取り戻したいと考えた。
木に必要なのは栄養と水分。その水分として水の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)である俺が最適というわけか。

「でも、判断ミスったんじゃないですか?」

思わず俺はそう呟いていた。その言葉の意味がわからなかったのか、アルドロンの表情が少し変わったような気がする。

「大きいままの方が、俺の吸収はやりやすかったんじゃないですか?」

ナツさんの攻撃でもアルドロンにはわずかなダメージしか与えられてないとウルフェンが言っていた。それならその大きな姿のまま、俺を捉えた方が有利に働いたはずなのに、こいつはわざわざ俺たちに近いサイズとなって襲ってきた。それは失策といって差し支えないのではないだろうか?

「何を勘違いしているのかね?人間よ」

しかしアルドロンには一切の焦りは見えない。

「あの大きさの力の全てが我の元にあるのだ」

そう言った瞬間、肩に激痛が走る。その痛みが走った箇所は斬られたような後がついており、鮮血が飛び出していた。

「お前はワシに触れることすらできない」
「うわああああああ!!」

何が起きているのかわからないうちに与えられたダメージに思わず絶叫してしまう。驚愕の力を持つ神のドラゴンとの戦いが始まろうとしていた。








 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
天海がアルドロンティオスを瞬殺した結果、シリルの魔力に目がつけられて戦いになるという展開を思い付いた感じです。天海が出てきたのには今後の運び的に他にも必要な場面はあるのですが、今回の重要な要素はそこです。
ついでにヨザイネも出てきましたね、彼女も本当はもっと先で正体を明かす予定でしたが、めんどくさくなったので早めに出しました←おい
次からはvsアルドロンです。他のところでは原作通りに戦いが行われている体になってるのでたぶんほとんど描写はないと思います。 
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