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神々の塔

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第十四話 白波五人男その九

「女装していてもな」
「ヒロインか」
「そや」
 そうだというのだった。
「日本の歌舞伎ではな」
「そうしたこともあるんやな」
「まあそうそうないけどな」
「ヒロインが滅多に出ん作品はか」
「ああ、先代萩でも出て来るしな」
 ヒロインはというのだ。
「政岡さんとかな」
「あの茶器でご飯炊く人やな」
 政岡と聞いてだ、施は言った。
「それで息子さんが殺されても耐えて」
「目の前でな」
「それでその後で仇を討つ」
「そうした強烈な人やが」
「政岡さんがヒロインか」
「それで最初花魁さんも出て来るし」
 話の大本である足利五十四郡の領主の愛人である、仙台藩五十四万石の藩主であることは明らかである。
「あの人もな」
「先代萩のヒロインか」
「歌舞伎も大抵の作品はな」
「ヒロインはよお出て来るな」
「そや、五人男は例外中の例外や」
 それこそというのだ。
「歌舞伎の中でもな」
「そやねんな」
「ああ、やっぱりヒロインが出んとな」
「作品としてな」
「しっくりこんわ」
「男ばかりもむさ苦しいわ」
「それを描く漫画家さんもおるけどな」
 世の中にはだ。
「学ラン来た忍者の漫画もヒロイン影薄かったし」
「ああ、十本の聖剣が出て来る」
「あの漫画もやし男の塾の漫画もな」
「あの作品は女性キャラめっちゃ少なかったな」
 真顔でだ、施も言った。
「オカマ系は多くてもな」
「女性キャラはやろ」
「ほぼおらんかった」
「そやったな」
「まあそうした作品もな」
「あるわ、しかし逆にな」
 芥川は施に話した。
「女の子ばかりでな」
「男は滅多に出んか」
「そんな作品もな」
「あるんやな」
「そして歌舞伎は男が演じるが」
 女性の役もだ、女形がそうする。
「女の人だけで演じる場合もある」
「宝塚やな」
「ああ、そうした文化もな」
「日本にはあるな」
「小林一三さんが築き上げた」
 阪急グループの総帥だった人物だ、関西財界の巨人であった。
「そうしたな」
「素晴らしい文化やな」
「ああ、そうした世界もな」
「日本にはあるな」
「そや」
 実際にというのだ。
「我が国はな」
「男だけ女だけでもな」
「お芝居が成り立つこともな」
「あるんやな」
「そしてヒロインや男が殆ど出んでもな」
 それでもというのだ。
「おもろい作品もあるんや」
「白波五人男みたいにか」
「ほんま五人男はヒロインの影が薄い」 
 芥川は腕を組んで言った。 
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