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不幸過ぎて笑えない

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第一章

                不幸過ぎて笑えない
 他人の不幸は蜜の味という、だが。
 OLの山本愛理大きめの垂れ目で色白で小さな頭に黒髪をショートにして左目の付け根に黒子がある一五七位の背の均整の取れたスタイルの彼女はそんな言葉は自分にはないと思った。見れば隣の同期入社の花田茉祐がだ。
 飲み乍ら絶叫していた、茉祐は黒髪をロングにしていて長い睫毛の切れ長の二重の目に形のいい細く黒い眉と程よい長さで形のいい顎と鼻、赤い大きめの艶やかな唇を持っている。一五八程の背で胸はないが脚は長き奇麗で全体的に見事なスタイルだ。
「何よ最後の最後で!ないでしょ!」
「ああ、昨日の甲子園ね」
 愛理はカウンターで梅酒の水割りを飲みつつビールをジョッキでがぶ飲みしている茉祐に対して言った。
「負けたわね、阪神」
「折角行ったのに」
「負けたわね」
「シリーズでね」
「四連敗よね」
「ストレートでね」
「そうよね」
「しかも負け方が最悪よ」
 茉祐は整った目を完全に怒らせて言った。
「三試合連続で十点取られて」
「合わせて三十点ね」
「こっちは二点、最後は三対二で」
「負けたわね」
「合わせて三十三対四よ」
 茉祐は注文したソーセージを食べつつ言った。
「これはないわ」
「シリーズはじまって以来かしら」
「ええ、悪夢みたいな敗北よ」
「ペナント圧倒的な強さで勝ったわね」
「それでこれよ、何なのよ」
 またビールを飲みつつ言った。
「最悪よ」
「ううん、私はパリーグでね」
 愛理は自分の好きなチームのことをちびちびと飲みつつ応えた。
「楽天で」
「この前創設されてファンになったのよね」
「それまで野球に興味なかったけれど仙台生まれだから」
 今二人がいるのは会津だ、茉祐は大阪生まれだが二人はそこの勤務になっていて住んでいるのである。
「それでね」
「ファンになったわね」
「ええ、そうだけれど」
「いや、そっちも大変よね」
「去年圧倒的最下位だったしね」
「その時大変ねって思ったら」
 これがとだ、茉祐は言った。 
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