プロパンガス爆発リア充しろ【完結】
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「心が物質に直接作用する唯心論船」
「なるほど。だが、そもそも、そんなものを何に使う気なんだ。そんなもので宇宙の真理がわかるわけがない」と、小野寺警部は疑問を呈しながら、すでに内線電話に受話器を上げていた。「え、本当ですか。ありがとうございます。はい。承知しました。こちらで対応します。ではよろしくお願い致します。はっ」と敬礼する。「課長、さすがです」「でかしためぇ、小野公さんよ。俺にも一本」と言いつつ小坂の背中をたたこうとするが避けられた「おっ、お前。俺と柔道黒帯の勝負するかぁ?」「あーもう、じゃれあいは後にしてくれ。さっきの話で行くぞ」
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「はぁ、それでウチに来られたと」
「そうだ。捜査三課で対処できないかね」
ここは警察庁|拡張知能科学局(略称:RBI)の特捜本部だ。「まぁ、一応うちの管轄なんですが、ウチは民事不介入なので、本件に関してはお答えしかねるんですよ」と、眼鏡を中指で直しながら言った。この男がいわゆる「サイバーメガネ」だ。「そこをなんとか」
と頭を下げているのは小野寺という初老の男で、先日の失踪者・消失者の事件を担当しているらしい。「はあ、そういう事情であれば」
そう言ってサイバーメガネは、タブレットに事件のファイルを呼び出す。画面上では二人の人物画像が並んでいた。片方は制服警官で、もう片方はセーラー服を着た少女だった。少女は警察官の袖を引いて何か言っている。「この制服の方の、性別は男で合ってますか? 名前は、清瀬権蔵」そして、もうひとりの少女に向き直った。「そして、こちらはラッセルフォード工科大学の特待生。抜群の成績を買われて女子高生でありながらサバティカル研修に参加を認められている。名前は矢作エリサ、年齢は17歳ですね」
「その二人と消えたエンジニアが同一犯によるものだと特定できた理由は何だい」と、小野寺が質問する。「まずは写真から、顔認識プログラムにかけました」
画面に検索中の文字が点滅し始めやがて静止した。結果は一致率95%。同一人物であると断定するものだった。
続いて、動画分析に移る。こちらも同様、ほぼ100パーフィット。ただ、一か所、例外があった。それは、動画に一瞬、合成ノイズが入るところだ。「それだよ」
サイバーメガネが説明を続ける「動画の音声に雑音が入ってるのをご確認下さい。通常ならこんな事はあり得ないので。おそらく犯人グループが編集したものと思われます。それとこの制服の男は、身長180センチほどで、髪型はリーゼントで鼻筋が通っていて。目が大きく口が小さく顎がしゅっと締まっています。一方こっちの写真の人物については、髪が短く少しぽっちゃりとして口が横に長い、特徴が似ていると言えば、似てなくはない」
「つまり、こういう事か」
「え、はい。要点は三つですね。1.被害者が拉致されている事。2.被害者の身体的特徴は誘拐犯人の容姿に似ている事。3.そして」ここで一度間を置き、「3.被害者の所持品にはGPSの発信機能が付いている可能性が高いこと。特にスマホや携帯に仕込んであれば場所を特定することは簡単」
サイバーメガネの口調が熱を帯びる。まるで、自分が発明し、それを自慢する少年みたいに目を輝かせて言った。「さて、どうしましょう。私共としてはぜひ協力して差し上げたい所なんですが、一つ障害がありましてね」
「何だ?不足している物はカクサンの出来る範囲で用意する」、と黒瀬。
「ええ、それなんですがデカルトの開発メンバー、実は全員腐女子ってご存じですか?」と小野寺が言いにくそうに述べる。
「ふふふ、婦女子だと?女のAIエンジニアなんか星の数ほどいるぞ。女だけの開発陣なんて珍しくもない」、と小坂。
「いや、腐ってる方の女子ですよ。デカルト開発陣の彼女ら、アバターにBLコミックのキャラクタ―画像を使ってるんですよ」
「漫画は専門外なんでな。黒瀬、おまえまだアラサーだろ。任せるわ」
「いや、俺って…俺ですか?!俺にアッー!な資料を集めろと?」黒瀬は目を白黒させた。
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