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ドリトル先生と山椒魚

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第七幕その四

「オオサンショウウオはいないんだね」
「まあ流れ着いたのはいたかも知れへんけど」
 織田作さんは皆に答えました。
「私は知らんわ」
「そうなんだね」
「織田作さんは」
「どうにもだね」
「オオサンショウウオは」
「そうやで、ただおることは知ってたわ」
 そのことはというのです。
「ちゃんとな」
「ハンザキとか呼ばれて」
「童話にも出て来たしね」
「それで井伏鱒二さんも書いてたし」
「それでだね」
「知ってたわ、街におってもな」
 大阪にというのです。
「知ってることは知ってたで」
「そうなんだね」
「それでだね」
「今もこうしてお話が出来るんだね」
「僕達とも」
「そやで、あと動物園にもおらんかった」 
 織田作さんはこうも言いました。
「天王寺のな」
「やはりそうですね」
 先生もそれはと答えました。
「仕方ないですね」
「ああ、昔の技術やとな」
「今もオオサンショウウオの飼育は難しいですし」
「まだわかってへんことも多いな」
「戦前の技術と今の技術では」
「今の方がずっと凄いわ」 
 織田作さんは冷奴を食べつつ笑って答えました。
「何もかもがな」
「そうですね」
「そや、戦前と百年も経ってへんのに」
「全く違いますね」
「食いもんかてな」
 食べるものもというのです。
「同じ冷奴とか焼き魚とかな」
「そうしたものでもですね」
「使ってる技術がちゃうさかい」
 それ故にというのです。
「味もな」
「全く違いますね」
「そや」
 その通りだというのです。
「素材もちゃうし」
「今の技術で栽培や養殖されたものは」
「ほんまにな」 
 それこそというのです。
「全く違ってな」
「味が違う」
「ホッケみたいに昔はなかったもんもあるし」
「美味しいですか」
「昔よりずっとな、それで動物園もな」
 こちらもというのです。
「飼育の技術がな」
「昔はですね」
「今よりずっと低くてな」
 その為にというのです。
「天王寺の動物園におる生きものもや」
「今よりですね」
「ずっと少なかった、数も種類もな」
「そうでしたね」
「そやった、特に戦争の時はな」
 織田作さんは残念そうにです、先生と皆にお話しました。
「人間の食べるもんもなかった」
「だから殺すしかなかったですね」
「上野動物園のことが有名やが」 
 東京のというのです。
「何処も同じでや」
「天王寺でもですね」
「そやったからな」
 その為にというのです。 
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