夜勤族の妄想物語 4.異世界ほのぼの日記2~異世界でも夜勤になったので堂々と昼呑みします~
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①
前書き
日々夜勤に勤しむ倉下好美(くらした このみ)の話。
4.「異世界ほのぼの日記2~異世界でも夜勤になったので堂々と昼呑みします。~」
佐行 院
-① 序章~多分、死んだ~-
相変わらず平和なネフェテルサ王国で結婚してから十数年経った転生者・吉村 光(よしむら あかり)とヴァンパイアのナルリス・ダルランの間には16歳の娘が生まれていた。名前はガルナス、種族はハーフ・ヴァンパイアで隣のバルファイ王国にある魔学校に通っているのだが・・・。
光「ガルナス、いい加減起きなさい!!遅刻するよ!!」
ガルナス「起きてるって、もう準備終わるから。」
廊下の奥の部屋から髪をぐしゃぐしゃのままにしながら制服を崩れ気味に着て玄関へと走るガルナス、そんな娘を台所から母親が止めた。
光「ほら、お弁当。」
ガルナス「ありがとう、行ってきます。」
女性「おはよう、ああ良い香りだね。今日も上出来。」
ガルナスが玄関を出ようとするのとほぼほぼ同時、トイレから出てきた祖母・赤江 渚(あかえ なぎさ)が台所にやって来て焼き上がりを楽しみに待っていた朝一のトーストを取ろうとすると。
ガルナス「おばあちゃん、もらってくね!!」
渚「もう、またかい。相変わらずだね、また焼き直しか。このパン高いんだがね」
光「従業員割引きで安くなっているから良いでしょ。」
渚「そうだね、光また頼むよ。」
光はこの世界に来て以来、今は無理のないペースでだがずっとパン屋の仕事を続けていた。渚はバーサーカー・シューゴが店主をする拉麺屋台の2号車で今も各国を回っている。渚本人が提案したメニューがお客に好評で、今では女将と言っても過言ではない。ただ何故か「女将さん」と呼ばれるのは嫌らしく、「お姉さん」と呼ばなきゃサービスが悪くなってしまうそうだ。
光の家の隣には店がある、光と結婚する直前にナルリスが希望したレストランだ。光の家庭菜園で採れた野菜を使った家庭料理を中心に出している。その店の前を横切り魔学校への通学バスまで走るガルナスをオーナーシェフであるナルリスやウェイトレスでダーク・エルフのミーレンが見送った。
ナルリス「おーい、走ったら怪我すっぞ。」
ミーレン「まだ大丈夫だからゆっくり行ってらっしゃい!!」
ガルナス「行ってきまーす。」
どうやら店の2人の声は届いていないらしく、娘は速度をどんどん上げていった。足にはかなりの自信があるらしく、魔学校では陸上部に所属していた。
ほぼ同刻、午前7時。日本のとある自動車の部品工場で夜勤を終えた倉下好美(くらした このみ)は帰路に着いた。この時間帯では開いている店など殆ど無く、コンビニや最近増えた24時間営業のスーパーしか寄る所が無い時間帯。正直友人と呑みに行きたくても生きている時間帯が違うので出来ない。仕事終わりの楽しみの酒は昼間に家で1人楽しむしかないのだ。しかし悪い事ばかりでは無い、24時間営業のスーパーにこの時間寄ると割引シールの貼られたお惣菜が高く積まれている。好美はその光景を密かに「パラダイス」と呼んでいた。
きっかけは突然の事だった、数か月前の4月末でゴールデンウィーク直前。当時日勤で働いていた好美は副工場長の島木に少し話せないかと呼び出されていた。全体的に吹き抜けになっているその工場、屋上の喫煙所にある自動販売機で、好美に飲み物を振舞う島木から放たれた言葉に好美は唖然としていた。
島木「GW明けから夜勤に入ってもらうから。」
好美「へ?今何と?」
島木「リーダーの黒野さんには俺から言っておくから安心して。」
それから島木の好意で貰えた数日の連休を利用し体を調整し、緊張しつつ初めての夜勤へと向かった。黒野含め夜勤のメンバーは温かく好美を迎え入れ、好美は安心しながら夜勤の仕事を覚えていった。2交代制のこの工場は受注の殆どを夜勤が担っており思ったより大変だったが、仕事自体は楽しかったので好美は苦には思わなかった。
この日も帰りにスーパーへ寄り割引のされた惣菜を肴に1杯と思っていた。
黒野「好美ちゃん、ちょっとそこのドライバー取ってくれる?」
好美「はーい。」
ドライバーを渡そうとした好美は足を滑らせ、2階下に落ちてしまった。
後書き
この事故が運命を変える。
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