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太ったからわかったこと

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第一章

                太ったからわかったこと
 やたらとだった。
 小学六年生の三矢智子はクラスメイトの中野愛生を馬鹿にしていた。見れば愛生は丸々と太っている。
「何食べたらそんなに太るのよ」
「何をって言われても」
「太ってるから暑苦しいのよ」
 色白で垂れ目の顔で言う、眉は細く奇麗なカーブを描いていて黒髪をボブにしている。背はクラスで一番低い。
「あんたがいるとね」
「そんな、酷い」
「酷くないわよ、痩せなさいよ」
 泣きそうな顔になる愛生にさらに言った。
「アフリカじゃ皆痩せてるでしょ」
「食べるものなくて」
「そんな人に申し訳ないでしょ」
 こうも言ったのだった。
「本当にね」
「そう言われても」
「言われてもじゃないわよ、太ってると身体にも悪いのよ」
 いつもこんなことも言っていた。
「だからね」
「痩せろっていうの?」
「そうよ、このデブ」
 罵りさえした、兎角だった。
 智子は愛生肥満している彼女をだった。
 いつもデブだ何だのと言って馬鹿にして罵っていた、だが。
 智子の家が急にだった、慌ただしくなった。
「お義兄さんまたなの」
「ああ、闇金で金借りてな」
 両親は暗い顔で話した。
「それでお袋が変に庇ってな」
「またなのね」
「うちで面倒見ろとかな」
「借金を私達が返して?」
「そう言ってるんだ」
「それは違うでしょ」 
 全くとだ、母は言った。
「私達が返せって」
「俺もそう思うけれどな」
「お義母さんはそう言ってるの」
「そうなんだよ」
 これがというのだ。
「兄貴のしたことなのにな」
「そんなこと言われてもね」
「それで俺が断ってもな」
「お義母さんだったらうちに怒鳴り込んできそうね」
「しかしうちには金がないぞ」
「お義兄さんの肩代わりなんてする義理ないし」
「兄貴が人助けることなんてないしな」 
 絶対に、そうした言葉だった。 
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