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ソードアート・オンライン~豪運を持つ男~

作者:
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ウェルカム トゥ アイングラッド

 
前書き
どうも、空です!!
いやあ、久々にサイトを見てみたら感想があったのでビックリしました。(笑)
まあそんな感じでテンションが上がり投稿しました!!
これからも至らないところも多々ありますがどうぞよろしくお願いします!! 

 
SIDE Zin

 「あのチュートリアルから色々あったなー」

 俺は正面でただいま飯を食い終わり、ココアをすすっているキリトにそう問いかけた。
 キリトはこちらの問いに気づいたらしく、苦い顔をしながら『ああ。』とだけ返した。
 多分大方始まりの街に置いてきてしまったクライン達のことでも考えているのだろう。

 そう考えた俺は、キリトに
「何時までクヨクヨするんだ?迷っていてもしかたねぇだろ。」
 とだけ返した。後はこいつ次第だ、こいつはこんなとこで挫けてていいやつじゃねぇ。なんたって・・・・
 俺の中ではこいつ・・キリトは『英雄(ヒーロー)』だ。
 実際な話、あそこで助けてもらえなかったら俺は確実に死んでいた。
 
 どうやらキリトも多少は踏ん切りがついたらしく、こっちに向いてお礼を言ってきた。
「ほんとにいつもすまないな。」というので俺は笑って「お互い様。」とだけ返した。



 その後お互い顔を見合わせ、お互い吹き出した。しばらくすると、

「それにしても、ホントZinと逢えてよかったよ。」
 とキリトがいってくる。云ってて恥ずかしくないのかよ、その台詞。
 俺は「なんだ、藪から棒に。」とだけ返し、食器等を片付けだした。
 キリトはなおもこっちを向き、


「Zinはなにかと気にかけてくれるじゃねえか。
俺の中ではなんか『頼れる不器用な兄貴』って感じがするぜ。なんか兄貴がいたらこんな感じなのかなーとすら思うよ。」
 と言ってくれた。全くこちらとしては嬉しい限りである。だが不器用は余計だぞ!?キリトよ。

 と俺は心の中で呟きながら食器類を全部洗うと、いまだリビングにいて椅子に座っているキリトに
「お前も十分頼りになるよ。あの時だって助けてくれたじゃないか?」と返す。

 どうやらあの時のことを思い出したみたいで、すぐさま「いやいや!?俺のほうが十分助けてもらったじゃないか?」
 と言っている。
 
 俺はあのチュートリアルが終わったときの事を思い出していた・・・・・。

side out



 『……以上で|《ソードアート・オンライン》正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の──健闘を祈る』

  その言葉を最後に、ローブの巨人は消え、薄暗くなっていた空は夕暮れの赤さを取り戻し、いつの間にか消えていた楽団のNPCがどこからか再び現れ、BGMが聴こえてきた。

 そして―――


「嘘だろ……なんだよこれ、嘘だろ!」

「ふざけるなよ!出せ!ここから出せよ!」

「こんなの困る!このあと約束があるのよ!」

「嫌ああ!帰して!帰してよおお!」


 悲鳴、怒号、絶叫、罵声、懇願、咆哮、そのすべてがこの中央広場を包んだ。
 そんな中で俺-Zinは自分でも驚くくらい妙に落ち着いていて、茅場が語った事は全て事実だとすぐに受け入れる事が出来た。
 こんな、今までどのゲームデザイナーが夢見て挫折したこの世界を創り上げた天才と言われるあの男ならこのくらい出来るはずだ。
 そしてなによりダイブする前からこのナーブギアは危険と認識していたので、俺はそこまで大きな精神的ダメージはなかった。


 そんなことよりももうひとつ注目する点がある。それは『一度も死んではいけない』という点だ。
 ここでの死が現実の死となるデスゲームだとしてもこれはRPGゲーム。モンスターを倒してレベルを上げなければ何も始まらない。

 そして、この混乱が落ち着けばこのはじまりの街周辺のモンスターはレベル上げをするプレイヤーによって刈り取られる可能性がある。なら、ここを離れて別の場所を拠点にする必要があると考える。

「とりま経験値稼ぎになる拠点を見つけないといけねぇな……」

 小さく呟いた俺は今だ荒れ狂う人垣の中を出て、少しでも情報を持っているだろうNPCを探す事を始めた。
 銀行強盗の件で、『死』と言う感覚に近づけられた経験があるので、緊張はなかった。



* * *


side Zin


 はじまりの街のNPCから情報を得た俺ははじまりの街の北西の森を抜けた先にある小さな村|《ホルンカ》からさらに西にある森にいた。
 この森には強力なモンスターが出るらしくそこならば最初のレベル稼ぎにはうってつけの場所と考えての行動だった。
 

 あれから、ここ森に来るまでに幾つかのソードスキルを覚えた。
 剣を縦に振り下ろす単発技《バーチカル》と横切りに近い単発技《スラント》、後、突き技っぽい突進系ソードスキル単発技《リニアースラッシュ》等を覚えた。
 親父が高校時代に剣道をしていて、たまに稽古するときに演舞などを一緒にした経験があってか、おもいにほか簡単に覚えられた。


 それから|《ホルンカ》に着いてからは装備と道具を整え、森の中を勘を頼りに歩いていたが日は完全に沈み、周りは真っ暗になっていた。
 すると後ろから・・・・

ビイィィィィン――

「ッ…!ヤベッ……!」


 その言葉と共に黒い体色をして紅い瞳をした全長一メートル以上はする鼠、正式名称|《ブラックマウス》の手の鉤爪攻撃をかわす。そのスピードは今まで戦ってきたどのモンスターよりも速く苦戦を強いられていた。


「このっ!」


 突撃したその背後にスローイングダガーを投げつけて、HPを削り、怯ませる。瞬時に剣を構えて、地を蹴って《スラント》を打ち込む。
これでやっとブラックマウスのHPバーはゼロになり、その体は地面に落ちるとポリゴンの欠片となる。
 その時、ファンファーレが聴こえ、同時に金色のライトエフェクトが体を包んだ。
 それはすなわち、この世界に来てからフレンジーボア十体に森に入って早々にエンカウントした捕食植物モンスターのリトルネペント二体、そしてブラックマウスを倒したことにより経験値がレベルアップ必要量に達したのだ。
 小さく息を吐いた後に握っている初期装備の剣|《スモールソード》を腰に吊るしている鞘に収める。ホルンカには《ブロンズソード》という剣が売ってあったが耐久値がスモールソードより低く買う気にはなれなかった。


(ま、今はこの剣でも充分やっていけるから問題は無いだろう)


 そんなことを思いながら、右手の人差し指と中指を揃えて下に振り、メニューウインドを開く。
 ステータスタブを出して加算された三つのステータスアップポイントを筋力に一、敏捷に二と振った。
 魔法が無いSAOでは可視的に振り分けるのはこの二つだが、俺が良く見ているネットゲーム総合情報サイトだとSAOには戦闘系・生産系のスキルが途方も無い数があるらしく、将来的にスキルスロットが多くなった時は振り分けに悩む事だろうが今を生きることに懸命にならなければならない。未来のことを考えるのは余裕が出来た頃でも遅くは無いはずだ。


「しかし、本当に危なかったな」


 そう呟きながら、戦闘中気にしなかった自分のHPバーを確認する。ブラックマウスのちょこまかとしたヒット&アウェイでの攻撃によってバーは注意域である黄色になっていて、あと一撃喰らっていれば間違いなく俺の危険域になっていたと予想する。

(この世界ではこのHPバーが命……気をつけないとな)


 ステータスタブからアイテム欄に変えて、あの色々あった道具屋で買い込んでおいた回復用ポーションをオブジャクト化し、それを一気に口に流し込む。
 酸味の強いグレープフルーツ味の液体が喉を流れていくと、バーは少しずつ回復していく。空になった空き瓶を地面に放っていた時、何かを斬るような音が聞こえた。

 視線をそちらに向けるとそこには黒髪の少年が《リトルネペント》と戦っていた。その動き方が妙にこなれていて、彼が正式サービスが始まる前に稼動実験で先行して行った《元βテスター》だと分かった。


 《元βテスター》ならばダンジョンの構造、武器屋・防具屋等の焦点の品揃え、クエストの発生条件・場所・モンスターのポップ場所・弱点などなどが知識として彼の頭の中に幾つも存在するのだろう。
 だからこそ、その知識をフル活用してここでレベルを上げていたのだろうと慣れない推理をする。

 さっきの戦いも然り、今の俺には経験も知識もない。
 ただがむしゃらに突っ込んでいくだけじゃあ、いざと言うときの対処が冷静にできない。
 そう考えた俺は、厚かましいと判りながらも元βテスターさえよければ、戦闘の手ほどきやコツ、効率のよいレベル上げスポット等を教えてもらおうと思い、戦闘が終わるのを待つことにした。

 そんなことを思っていた時、少年の背後にもう一体の《リトルネペント》が現れ、今、正に少年を攻撃をしようとしていた。 

 俺はとっさに
「そこのお前!危ないぞ!!」
 と大声を上げながら、腰のベルトからスローイングダガーを抜く。
 先ほどのレベルアップ時に、唯一空けていたスキルスロットに《投剣スキル》で埋めた事により使える様になった基本技|《シングルシュート》のモーションで投げる。
 漆黒の中を鮮やかな光のラインを引いていき、飛んでいくダガーは吸い込まれるようにネペントに突き刺さる。俺は、ネペントが怯んでいる隙に剣を手にして少年とネペントの間に割り込んでいく。

「あんた……!」

「話は後だ。こっちは俺が殺る。そっちは任したぞ!」

「あ、ああ!《リトルネペント》の弱点はウツボ部分と太い茎の接合部だ!そこを中心的に狙え!」

「そうだったのか。サンキュー!」

 軽く礼を言いながら、地面を蹴る。ネペントは、先端が短剣のような形をした二本のツルで切り払ってくる。俺は手にしている剣でパリィしながら距離を詰めていく。
 そして、少年に言われた通りにネペントの接合部を水平に斬りつける。レベルが上がった事でネペントの体力を大幅に削る事に成功し、尚且つ大ダメージをいきなり喰らったからか、ネペントは後ろに後退をした。
 それを好機と見てすぐさま剣を大きく左に引いて、モーションを作る。これによって、ソードスキルを発動して、刀身に薄水色の光が灯った。

「せいやぁっ!」


 一気に地面を蹴り、単発水平斬撃技|《ホリゾンタル》でむき出しとなった茎を一気に切り裂いた。それによってウツボ部分は茎から離れ、そのHPゲージは空となった。それと同時にネペントの体はポリゴンの欠片となり、爆散した。


「……らぁっ!」


 背後からは気合の篭った掛け声が聞こえ、振り返ると少年は俺と同じく《ホリゾンタル》でネペントを両断した。


「ふぅ、お疲れ」

 そう言いながら、少年に近づくと少年は背中の剣帯に剣を納めてから頭を少し下げた。


「助けてくれてありがとう。あんたの援護が無かったら俺は今頃……」

「良いって。目の前で殺されそうになっている奴を黙って見逃すほど落ちぶれていないんでね」


そう言いながら、手の剣を腰の鞘に収めると少年の視線はこちらの方へ向けられた。


「ん?どうした?」

「あ、あぁ……いや、ここに来るのが早いなと思ってさ。他の誰かがここに来るのは数時間後だろうと踏んでたんだが」

「そうなのか?俺は《はじまりの街》にいる太ったNPCのおっさんにこの森の中のことを聞いて、あとは勘で歩いていたんだがな」

「勘って…それでよくここまで来れたな」


 少年は呆れ顔で呟いていた。こんな状態で勘に頼るのはかなり危険だが、それしか方法は無かったしな……


「しかし、あの《リトルネペント》には二種類の形があるのか?」


 その時、不意に疑問として頭に浮き上がってきた事を口に出す。

「え…?い、いや。《リトルネペント》はノーマルと《花つき》と《実つき》の三種類がいるんだ。ちなみにさっきのはノーマルだ」

「はは~なるほど。なら、俺が森に入ってすぐにエンカウントしたのは《花つき》ということか」


 俺が森に入ってすぐにエンカウントした《リトルネペント》はさっきと同じ姿だったが、その後すぐに出てきたのは口の上に花を咲かせていた。だがさっきの《リトルネペント》は花が咲いていなかったから、疑問を感じたが少年の言葉ですぐに疑問が解けた。
 その代わり、少年の顔はポカーンとした顔になっていた。


「《花つき》とエンカウントした……?そ、それって!ホントか!?」

「お、おう…」

「たった一回で!?」

「そうだけど…」

 正確に言うと二体同時で、先に倒したのがそいつだっただけだけどな、と付け加える。
迫り寄ってくる少年に少し押されながら、返答をしていくと少年は離れてから盛大に溜息をついていた。


「えっと…どうしたんだ?」

「どうしたも何も…花つきが出る出現確率が1%以下なんだよ。それを一回でって…どんだけ運良いんだよ」

「はっ!?1%以下!?」


 思わず声を荒げる。生きていくうえで何かとほかの人たちに比べて運がいいことは自覚していたが、さすがに1%以下の確立を一発で引き当てるって俺って何!?結構すごいんじゃね!?←今更気づいた
 でもそんぐらいすごいことがあった後は、たいてい良いことがない。つまり・・・・。

「俺、明日生きているのかな……」

 俺は自然に呟いてしまった。

「俺に聞かないでくれ。それで花つきを倒し時に《リトルネペントの胚珠》っていうのはドロップしただろ?」

「ああ。あったな、そんなの」
 そういいつつアイテム欄をチェックする。

「そのアイテムがホルンカにあるクエストのキーアイテムで、それで貰える剣が三階層までは使える代物なんだよ。あんたも見たところ片手剣使い(ソードマン)なら取っといたほうが良いぞ」

「なるほど。そんでそっちはまだ取れないからここで乱獲しているのか」

 たしかに出現率が低いモンスターの出現確立が上げるにはそのフィールドで乱獲すれば上がるというのは良くある話だからな。

 俺は、ふと考えながら少年に
「……なぁ、それ俺にも手伝わせてくれないか?」
 といった。


「えっ……」


 いきなりの俺の提案に少年は少し驚いている。まぁ、会って間もない人間がパーティーを組もうと持ち掛けるのは余りにもおかしいからな。


「別にパーティーを組もうって訳じゃなくて、ここで乱獲するなら俺も混ぜてくれってことだ。こちとら、あくまでレベル上げが目的でここに来たからよ」

 パーティ組んでくれるならこっちとしてもうれしいけどな、と苦笑いで付け加える。

 どうやらしばらく考えたようで、
「……分かった。それで良いなら、俺は良いぞ」
 と了承してくれた。

 そう言って少年――キリトは静かに握手した直後、キリトの視線は森の奥に向けられる。俺も反射的にその方向を見ると、ゆっくり動き回る二つのカーソルが点在していた。恐らくあれは、リトルネペントだ。

「おっと。さっそく乱獲対象発見だな」

「ああ。他のプレイヤーが来る前に《花つき》を倒して胚珠を出さないとな」

「だな。じゃ、行きますか!」


 互いに握手していた手を拳を変え互いに合わせた後、俺とキリトは笑いあい、同時に剣を握って二体のリトルネペントを標的にして、駆けだした。





side out



* * *


「おらっ!」


その気勢と共にネペントを切り裂く。ネペントはそのままドシンッと地面に倒れて、ポリゴンの破片となる。
 キリトと共にリトルネペント乱獲を始めて約三十分が経ったが、未だに《花つき》ネペントは姿を現さない。


「やっぱ、さっきので運を使いきっちまったか……」


 ここまで倒しても出ないとは本当に出現確立が低いんだとよく分かる。
 と、そんな時、約三十分前に聞いたファンファーレが耳に響く。振り返るとキリトの体が金色のライトエフェクトが身体全体を包み込んだ。


「初レベルアップおめでとさん」

「サンキュー、そっちはまだレベルアップしないんだな」

「俺はさっきレベルアップしたからな」

「ああ。そういえば、俺に会う前に《ブラックマウス》とエンカウントしたんだっけ。」

「ホント、良く生きていたと自分でも思うぜ。まぁ、実際死に掛けたのは事実だからな」

「ホント運が良いだな」

「今後、運には期待できそうにないな」

 俺たち二人は軽口をいい、お互い同時に笑い出す。そんなこんなでキリトはステータスアップの配分が終わったようだ。
 ウインドを閉じ、さあもう一狩りいこうとした瞬間―――

 不意に、ぱんぱん、という乾いた音が連続して響いた。

「「ッ………!!」」

 まずい、と思うと同時にスローイングダガーの柄を握る。同じく気を緩めていたキリトも背中の剣の柄を握る。
 何時モンスターが出ても良いフィールドで、完全に気を緩むのは初心者でもやらないミスだ。
 胸の中で自分自身に舌打ちをしながら戦闘態勢になるとそこには紛れもなく人間―――俺やキリトと同じプレイヤーだった。


 年齢はキリトと同じくらい。防具はホルンカで見かけた革鎧と円形盾(バックラー)。武器は俺やキリトと同じ(スモールソード)
 だが、それを手に握っているわけではなく、その手は体の前で打ちかけている体勢だった。要するにさっきの音は彼が拍手をした音だった。


 俺とキリトは小さく息を吐きながら、手を下ろした。


「……ご、ごめん、驚かして。最初に声を掛けるべきだった」

「………いや、俺たちこそ…過剰反応してごめん」


 もごもごと応じたキリトは、行き場のない手をハーフコートの手に突っ込む。俺も内心安堵しながらダガーの柄から離し、手を腰に当てた。
 真面目そうな印象を与える少年はほっとしたように笑顔になり、右手の指を右目にあたりに持っていたがすぐにバツが悪そうに手を降ろした。その動きだと彼は現実(リアル)ではメガネをかけていたのであろう。

 そう思っていると、その少年がおもむろに口を開いた。

「れ、レベルアップおめでとう。早いね」

「早いって…それを言うなら、そっちも早いんだな。勘でここに来たこいつは別として、違う誰かがここに来るのはあと二、三時間後だと思ってたからな」

「あははは、勘って・・・。僕も一番乗りだと思ってたよ。ここは、道が分かり難いからね」
 といい苦笑いした。あれ、もしかして俺なんかすごいとこ勘で来ちゃったの?←いまさら気づいた

 そんなかんだで少年はキリトと話していた。
 話を聞く限り、眼前に立つ少年もキリトと同じ《元βテスター》だった事は間違いなさそうだ。
 キリト曰くこの森はかなり迷路じみているから、この場所をピンポンイトで来れるのは《元βテスター》ぐらいしかいないからほぼ間違いないだろう。といっていた。
 てか、そんなところをよく勘で来れたなとつくづく思うよ。やっぱり運だけはいいほうなのかな?

 と一人でそんな考えにふけっていると元βテスターの少年がおもむろに口を開いた。

「君も受けているんだろう?《森の秘薬》クエ」

  《森の秘薬》とはキリトが受けているクエストのタイトルらしく、キリトはゆっくりと頷くと彼は再び見えない眼鏡を手でやりながらにやっと笑った。


「あれは片手剣使いにとっての必須クエだからね。報酬の《アニールブレード》は三層の迷宮区まで使える」

「まぁな。けど………見た目がイマイチなのが難点だが」

「こんな下層で見た目も性能も良い奴があったら是非見てみたいな」

「ははは、そうだな」

 そう言うと少年は明るい笑い声を出した。なんか話についていけなくて疎外感を感じているのは俺の気のせいなのだろうか?それに見た目が悪いというのも俺的には結構気になる。
 なんて俺が一人でどうでもいい妄想していると、その少年は笑いを収めて、一呼吸入れてから口を開く。 

「せっかくだから、クエ、協力してやらない?」


 その申し出にキリトは少し戸惑い、チラっと俺に視線をやる。俺にとってその視線は『どうする?』と俺に問い掛けて来ている様にしか見えなくて、変わりに俺が口を開いた。


「それはパーティーを組みたいってことか?」

「いや、別にパーティーを組まなくて良いよ。ここまでやっていたのは君達二人なんだから、二つ目のキーアイテムはもちろん譲る。そのまま確立ブーストかかったまま狩りを続ければ直ぐに三体目が出ると思うから、その時まで付き合ってくれたら良いんだけど………」


 たしかに一人より二人、二人より三人だからな。これでかなり《花つき》が出る時間は短縮されるはずだ。
 そしてなにより俺の最初の目的はβテスターと仲良くなり、あわよくば色々教えてもらうことだ。こっちとしてはむしろ大歓迎である。

「……だ、そうだ。どうする、キリト」

「あ……あぁ、分かった。それなら、構わない……」


 歯切れ悪いがキリトは承諾してくれた。
 その言葉を聞いた少年は直ぐに笑顔を浮かべ、まず俺の方へ右手を差し伸べて来た。


「ありがとう。じゃあ、しばらく宜しく。僕は《コペル》」



 こうして少年-コペルと一緒にクエストをすることになった俺たちだが、この時俺たちは気づいちゃいなかった。

 これはデスゲーム。人間死ぬ気になれば何でもできるというが、あながち間違いではない。
 この少年-コペルが、何で俺たちに近づいたのかを俺たちはまったく理解しちゃあいなかった。

 それがあんな悲劇を生むとも知らないまま・・・・。


 
 

 
後書き
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