ビンドポピアス世界線破却同盟①真実を知る覚悟があるなら、今ここで私と共に。失うものはあるかもしれないが、それでも進むべき道はある。闇を超えて、未来をつかめ―。
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旅立ちの日
異世界に行って戻ってきた人がこれまで存在しなかったため比較検証できないんだけど、真也の話と『私の知るオーバードの異能』が噛み合わないのはたしかなんだ。
これが何を意味するか分かるかい?」
美咲の問いかけに真也はゆっくりと首を振る。その答えを告げていいのか一瞬迷う美咲だったが、彼なら理解できるだろうと判断する。
「真也の能力はおそらく、『世界線の異なる者』にしか通用しないんだ。そして異世界では真也の力は通常時よりも強力になる。つまり…… この世界で真也がいくら『世界線を設計しても』無駄ってことになる」
「そんな!?」
悲鳴をあげるような声を上げる真也を安心させようとしてだろうか、美咲は慌てて手をひらひらさせながら言葉を繋げる。
「もちろん!真也の能力は異世界に限定なんてされていないかもしれない。
もしそうだったら真也にも使い道はあるさ!」
真也はその一言で少し元気を取り戻したが、同時に新たなる懸念が生まれる。
自分の能力の『範囲』についての疑念だ。
確かに、世界線を飛び越えることによる恩恵は他のものでは得ることはできない。異世界という世界線を設計する能力もまた同様に。
しかし真也が今一番不安を感じている点は、自分が『どれだけの範囲を設計できるのか?』という点であった。
真也は自身の手を見るが、その腕に『黒い線のようなものが見える』ことはなかった。
(じゃ、じゃあ俺は……俺の世界はどこまで作ることができる?……この地球上だけじゃないのか?)
そこまで考えたところで、美咲が再び口を開く。
「三つ、真也。君の能力は、人を助ける事ができる。そして異世界には魔法があり超能力があったり、剣がある。真也にとって初めての戦闘を経験する事になると思う。……君は『自分』を守る力を身につけないといけないよ」
美咲の真剣な表情と声色に思わず姿勢を正す真也は彼女の目を見据える。
真也は異世界についての知識は殆ど持ち合わせていなかったが、自分が行ってきた異世界転生がどのようなものであるかをなんとなく理解した。
そして同時に思う。異世界へ行ったからといって必ずしもチートになれるわけではないという事に。
世界線を設計する能力。それが真也に与えられた唯一の力ならばそれを活かす方法を見つけなければならないのだ。
その点については美咲は自信を持って真也に伝え、彼を勇気付けるように続ける。
「四つ、これは私からの個人的なアドバイスだが、世界線の設計において最も大事なことは、まずは自分自身の安全の確保だよ。君が自分の身を守るための技術を手に入れるまで私は全力でバックアップする。……どうかな?それでもやっぱりダメかな」
最後は困ったように眉尻を下げる美咲を見て真也も首を縦に振らずにいられなかった。
「……分かりました。やります」
その返事を聞いた美咲は大きく微笑みながら両手を広げて真也を迎えるような仕草をした。
そして彼の両肩をぽんぽん、と叩くと言葉を続ける。
「よかった。本当に良かった。
それでは明日またここに来てくれ。その時までには戸籍やら何やらを手配しておこう。真也の両親への説明の仕方も一緒に考えておかないとね。それと真也の部屋は……」
そのあと二人は今後の予定を話し合っていった。
その中で美咲が特に重要視したのは衣食住に関することだった。この3つが確保できない人間はまず間違いなく長生きする事ができないからだった。
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