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ビンドポピアス世界線破却同盟①真実を知る覚悟があるなら、今ここで私と共に。失うものはあるかもしれないが、それでも進むべき道はある。闇を超えて、未来をつかめ―。

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決着のとき

「え、あ、はぁ……わかりました。それなら、美咲さん。俺の異能について何か知ってることありますか?」
「……ふむ、知っとくべき話だしな」
美咲はそう言って真也の方を向いたままベンチに背を預け、天井を見上げる。そして目を閉じた後ゆっくりと目を開きながら、ぽつりと語り始めた。
「まず、『異能力者の発現条件』から話す」
その口調からは、今までのようなふざけたものは見受けられず、真面目なものであることを真也に理解させた。
******
「『世界を騙す』というのは比喩表現でもなんでも無く、そのままの意味らしい。
異世界において、真也の能力は『他人の意識に干渉して誤認させる』能力、つまり相手の認識を操作するものだ」
美咲の話によると、真也がやってきた世界は『オーバード』『ロストエデン』という二大要素がありつつも、他の様々な要素を持ったいわゆるパラレルワールドの一つであるという。『ロスト』の部分が抜け落ちた、ただ一つの世界では無いのだということを知らされ真也の胸中に不安が広がる。
真也の能力の具体的な内容であるが……美咲は一度首をひねったのち言葉を選びながら説明した。
「んー……『他人』の意識を操るんだよ。自分の姿を周りの人から別人に見えるようにしたりとか、逆に自分に自信を持たせてたりとかさ」
例えば私がさっきやって見せた『男である』ということを真也に勘違いさせ、女の子に見せているようなものがわかりやすい例だと、美咲は補足する。
また、異性に対する好感度を上げたりすることも可能であるという。それは真也の世界でもよくある恋愛シミュレーションゲームと同じであり、ある意味で彼の世界にも似たようなものがあったことに安堵を覚えた。
真也は先ほどの教室でのやり取りを思い出す。
彼が異能力によって周りを騙しているということがバレたらどうなるのかと震えていた矢先のことだったのだが、もし美咲がフォローしてくれていなければどうなっていたことやら、想像もしたくない出来事だっただろうと思い真也は冷や汗を流す。
そして真也は美咲の言葉を思い出して疑問を抱く。
(そういえば……)
ソフィアの時も美咲に「お前は可愛いな」「綺麗だぞ!」と言った記憶があったのだ。
あれは、全て事実では無かったのだろうか?それとも……。
真也の思考を遮るように、美咲の説明は続く。
「この『世界を騙す』っていう行為にはデメリットもあるんだ。『真実を隠すこと』は同時に『本当の自分を隠す』ということでもある。
真也は無意識下で能力を『セーブ』していたんだと思うが、そのお陰もあって特に問題なく『異世界』を生きていたんだろうな」
真也はその言葉に引っかかるものを感じたが、今はそれよりも、自身の能力の詳細を聞く事が先決だと判断し続きを促す。
「そして真也の最大の武器であり弱点は……世界線を跨ぐことで得られる、圧倒的な経験の差だ」
「……経験値?」経験値という言葉からゲームなどを連想し、反射的に聞き返す真也。
しかし彼はまだ気づいていない、この質問こそ致命的なものである事に。
「ああ、そうだ。私もソフィアちゃんも、真也の世界より長く『オーバードとして生きている』わけだが……それだけの経験が違えば、真也よりもうまく『世界を騙せる』。だから私たちはあの子の姿が見えていても不思議ではないし、そもそもあんな風に近づいていたら誰だって気がつくよ。
それがたとえ、『普通の女の子の格好』をしているソフィアちゃんだとしても、さ」
「っ!!」
美咲から突きつけられた真也への死刑宣告は、真也にとってはあまりにも酷であった。
つまりはそういうことだ。
真也は自分の『世界の認識を変える能力』を使って世界線を渡ったがためにソフィアの姿を視認することができており、それは即ち世界線を渡る前の真也と世界線を超えた後の真也の間には大きな差ができてしまっている事を示している。
真也が世界線を移動することで得てきたものは全て失ってしまう、ということになる。
「そ、んなことって……」
真也の顔は青ざめていき、両手は力無く肩からぶら下がるだけとなる。その様子を見た美咲は彼の頭をポンと叩く。
「そんな顔をするなって!まあ落ち込む気持ちはわかるけどなぁ…… でも、悪いことばかりでもないんだぜ。むしろ良い方が多い。
一つ、異世界に行くことで身体能力は飛躍的に向上する。
これは今までに無いデータが得られた。
オーバードの中でもここまでの高数値を記録した人間はほとんどいないからね、貴重な資料になったと言える。
真也の能力が発動するとどうやら身体能力は著しく低下するみたいだけど、それも今後改善されるはずだ。
二つ、異能の力が強くなる、または使えるようになる可能性が高い。 
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