ビンドポピアス世界線破却同盟①真実を知る覚悟があるなら、今ここで私と共に。失うものはあるかもしれないが、それでも進むべき道はある。闇を超えて、未来をつかめ―。
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心の闇
しばらく真也をじっと見つめていたレイラだったが、不意に視線を落とすとぽつりとつぶやく。
「……本当?」
「うん、ごめん。隠してるつもりはなかったけど、伝えるのが遅れて。レイラに話すとソフィア先輩にも伝わると思ったから言えなかった」
「……そう。わかった」
真也の謝罪を受け止めるとすぐに普段の様子に戻ったものの、『どうして私だけに言わなかったのか』という非難の念が感じられた。それがわかっているからだろう、真也は再び謝罪の言葉を口にする。
そんな彼に、レイラは言う。
「大丈夫。私は間宮の事、信じる。ソフィアだってそう。ソフィアが言ったことが全部本当なのか、確かめないといけない。そのために、協力してほしい」
真剣な眼差しを真也に向ける彼女の言葉に、彼もまた真面目な様子で返事をする。
「もちろん」
それからしばらくして、真也は自分のことについて洗いざらい話し、レイラはそれを神妙な面持ちで受け止め続けた。
レイラと風呂に入った日から3日ほどたった日の放課後。「今日は間宮さんがバイト無いんですね! 珍しいですね!」
伊織は、教室を出る真也に後ろから話しかける。
「ん? ああ、そうだね。今日は久しぶりに休みなんだ。……なんと今日は、津野崎さんのとこに行って異能診断してもらえることになってさ」
真也がそう告げると、彼は大げさに驚く。
「へぇー、それはいいことだ。でも間宮って異能無かったんじゃないっけ? まあ良いや、楽しんでおいでよ。僕は生徒会室行くから」
「あれ、もう帰るかと思ってた。なんか用事でもある?」
伊織が立ち去ろうとする背中に尋ねると、振り返りながら答える。
「僕もたまには、仕事をしようかなって思ってさ」
それだけを答えたあと、「そっか、頑張れよ〜」と言い残し廊下の奥へと消えていった。
生徒会室の扉を開くと、すでにそこには透と美咲の姿があった。
二人とも真也が来たことに気づくと同時に席を立ち、歓迎の挨拶を交わす。
三人が円状のソファに向かい合って座ったところで、透は口を開いた。
「さてと。まず、間宮さんの能力測定を先に済ませようか。この間やったような『普通の異能判定検査』と『間宮さんの世界の基準』での計測の両方が必要だろうし」
「あ、その話ですけど、ちょっといいですか?」
真也の言葉に反応したのは透ではなく、向かいの席に座っている少女だった。
彼女、九重紫苑は無言のまま立ち上がると、ポケットの中から小さなリモコンのようなものを取り出しスイッチを入れた。ブオンという起動音とともに画面に表示された文字を見て満足気に微笑む。
真也の知るスマートフォンとは違うが、それでも見慣れたアイコンが表示されたことを確認すると、彼は説明を開始する。
「実は、この前の検査の結果を解析したところ、分かったことがあったんです」
「お、マジで!? 流石間宮だぜ」そういって喜ぶ美咲の横で、無表情の透もまた、小さく感嘆の声をあげる。しかしそれは、喜びというよりは、驚きから出たものである事が、声の大きさから見て取れた。
2人の様子に真也は少し恥ずかしくなり頭を掻く。そして、先ほど確認したばかりの画面を2人に見せた。
「えっと、俺の世界のスマホと同じようなアプリが入っていました」「ふーん、それで、これが何になるわけ?」
首を傾げる真也に向かって再び美咲が口を開きかけるが、それより前に真也が言葉を紡ぐ。
「つまりですね、そのアプリで俺自身のデータを見ることはできるはずなんですよ」
そう告げられた言葉の意味を理解すると、美咲は目を輝かせ、真也の手を握る。
「じゃあ、今からそれをやってもいいんだよな!」
その興奮した様子を見るに、おそらく彼女は既に興味をなくし始めているであろう自分の異能のことをずっと待っていたのだろうと真也は想像する。
(そりゃそうだよなぁ)
真也は自分の世界の機械類をこの世界に持ち込んでいいのか分からなかったが、ソフィアが持ち込んだものだということで一抹の不安はあったものの、異界の存在に頼んでみることとした。すると、意外にも二つ返事で『問題ありません』との回答を得たのだ。
その後、真也はその端末に自分のIDとパスワードを入力することでこの世界のスマートフォンと同じ使い方ができる事を知ることとなった。
本来ならもっと色々と手順を踏む必要があったらしいが、この世界の端末とリンクさせることができたのは、ひとえに真也がソフィアによって異界の技術である異世界の技術を取り入れている世界線の設計士であり、『異物に対する免疫がある』ためだとのことであった。
「そうそう。間宮さん、私もやってみたいのですけれど」
透が手を小さく上げながらそう言うと、美咲も同様に真也へと期待の目を向けた。そんな二人の目に押されるように、彼は口を開く。
「あ……でも……」
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