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ビンドポピアス世界線破却同盟①真実を知る覚悟があるなら、今ここで私と共に。失うものはあるかもしれないが、それでも進むべき道はある。闇を超えて、未来をつかめ―。

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次の使命

「それと、ありがとう。私のことを助けてくれて」美咲の真剣なお礼の言葉を受け、真也も姿勢を正す。「俺の方こそ本当にありがとう。これからのことは、よく考えるよ」真也の真摯な態度に美咲は嬉しく思い、照れ臭くなったのか頭を掻いた。
「あー、もうやめてよ、なんか恥ずかしいっての……。ほらっ、帰るぞ、ミコ」伊織は再び真也たちに背を向けるとそう呼びかけ、早足で歩いていった。
その背中を眺めていると美咲が真也の手を引く。彼女の顔を見て真也はぎょっとした。
妹の瞳には涙が浮かんでは流れ落ちており、それはまるでダムが決壊してしまったかのように止めどなく流れるものだった。
慌てて指で拭うものの次から次に溢れ出てくる。
その泣き顔を見るなり真也は居ても立ってもいられず、彼女を優しく抱き寄せ、自分の胸元に埋めさせた。
美咲はその兄の行為に身を預けるしかなかった。真也の顔が見えないのだから何が起こっているのか全くわからないのだ。
ただ、兄から香ってくる甘い匂いを感じながら、真也の体温を感じる事しかできなかった。……しばらくすると真也はゆっくり体を離し、彼女の両肩に手を置いたまま口を開く。
「俺さ……」その先の言葉を遮るように、美咲は両手を広げて彼の胸に飛び込む。突然の妹の行動に真也はよろめくがなんとか踏ん張り耐え、美咲が顔を覗かせる。美咲の表情は満面の笑みだった。
「あのさっ、私、やっぱり真也君と一緒にいるよ。真也君の力になりたいんだ」そう言って真也の首に両腕を回すとそのままキスをした。
「んむっ!?︎」急な展開に真也が驚いている間に、美咲は自分の舌を伸ばして真也の唇に触れ、舐める。真也は初めての感覚に思わず口を開けてしまうがそれを見逃さなかった美咲はそのまま自身の唾液とともに真也の口内に侵入させる。
真也の歯茎をなぞり、自分のを絡めていく。お互い、息をするのがやっとなほどの激しさだったが2人とも止めることができなかった。
(こんなのダメだっ)と思いながらも本能のまま行動してしまいそうになるのをギリギリのところで理性が押しとどめた。
しばらくしてようやく離れた口からはどちらのものか分からないほど混じり合った透明の液体の橋がかかる。そして美咲の潤んだ上目遣いが真也を見上げた。
真也は顔を赤らめつつも視線を外す事ができず、見つめ返すことしかできない。真也の脳に今まで感じたことの無い衝撃と快感が走ると視界に星が飛ぶ。しかし真也は最後の気力でなんとかその感情を押し殺し、「ごめん」と言って再び妹を抱き寄せてから耳打ちをする。
「俺、実は『女の子』なんだ」
真也は今にも消え入りそうな声で言うとゆっくりと腕を緩めた。
「え? どう言うこと?」
「詳しくは言えないけど。俺は女で、それでお前のお兄ちゃんでもある」
真也はそう告げると再度「本当にごめん」と言った。

***
真也と別れ、伊織の家へと帰宅した美咲は部屋に入るや否や床にぺたんと座る。
そして頭を抱えるようにしてうつ伏せになると、先程の兄との最後のやりとりを反すうしていた。……………… 自分は一体何をしていたのだろうかと。
あんな事をするべきではなかったと。あれじゃあまるで恋人同士ではないか、と。それに、『男』とキスまでしてしまうなんてと。後悔先に立たずとはこのことである。
だがそれと同時に自分がした事に間違いはなかったと思っている部分もあった。兄であるはずの彼は『男』ではなく紛れもなく自分を好いてくれる女性であったからだ。
その考えに至った途端顔が爆発したかの様に赤く染まり、美咲はベッドの上でゴロンゴロン転げ回る。そして枕に顔を埋めるが今度は恥ずかしさが溢れて来るようだった。
しばらくバタついているうちにスマホの着信音が鳴り響く。それは、伊織から届いたLINEメッセージの通知音であり、その内容は真也が話していたことが真実であることを裏付けるものだった。
美咲は起き上がると同時に通話ボタンを押して耳に電話を当てる。数秒後、相手が出る。
「もし、もひッ!?︎ ど、ども! さっきぶりですね! はい!」緊張のせいか噛み噛みで返事をしながら美咲は再び床に正座し直す。
電話口から伊織の声が届く前に心臓が飛び出てしまいそうだ。
「さて、それでは説明を始めさせて頂きますわ。まず、お二人が仰った異世界というのは実在しておりましたの。それもつい最近の事でした。世界線、つまり並行世界を行き来できるのは、世界線と直接関わりのある者だけ、それがこの世界の法。あなた方が真也さんを異能者として連れてきた時にその法則が崩れたんですの。」
(うーん……。)美咲の理解力は人並み程度しか無かった。そのため、いまいち飲み込めていないようだが、伊織が続けて話す。 
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