ビンドポピアス世界線破却同盟①真実を知る覚悟があるなら、今ここで私と共に。失うものはあるかもしれないが、それでも進むべき道はある。闇を超えて、未来をつかめ―。
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古代遺跡の謎
ソフィアはそれを見て心配したが、真也の目の焦点が合わないのを確認すると再び質問を始めた。「それで、なぜ私たちが攫われたの」
すると、今まで饒舌に喋っていた神は黙り込み「そうだ。それはお前たちが最も理解しているはずだ」と言った。そして続ける。「彼らは、この世界に最強の人間を作ろうとした。だがその前に別の世界の『異能』という能力を持つ人間がいることに気付いたようだね」真也は、神に自分の能力を知られてしまったのだということを悟った。「異世界人なら、強力な『異能』を持っていると思ったようだよ。そこで彼らから命令を受けたのさ。まずお前たちを捕らえておけとね」
(そんな理由で!)
「それで君は、彼らに捕まって、実験体にされたってわけ」
「そのとおり。いやー傑作でした。奴らは私の能力を知って、その力をコピーしようとしていたんですよ」神は愉快そうに笑った。ソフィアはため息をつく。
「はぁ、やはり愚かなものたちだね。『学び』のない世界からやってきた人間など取るに足らないということだろう」ソフィアが真也に向かって話しかけるが、反応はない。「真也、聞こえてる?もう、しっかりしなさいよね」
「おっぱいが目の前にあるので仕方ありません。それよりソフィアさんはどう思いますか?」真也を起こそうと揺すっているソフィアに神が話しかけた。
「どういうことだい?」ソフィアは顔をあげる。
「だってそうでしょう。この世界で私以外の、初めて生まれた完全適合者がまさか『女の子』だとは思わないじゃないですか!」神は再び高らかに笑う。「これは予想外でしたね!しかもこんなに若いなんて! ふひひっ、いいデータが取れました」神は指をくるりと回し、ディスプレイとスクリーンを出現させた。そこには、様々な角度から真也が撮られた写真が何枚も表示されているようだった。
(こいつ俺をずっと監視してたってのか!キモッ!!!)「しかし本当に面白いですね。完全適合者は全員男の子ですが、真也くんは唯一『例外』ですよ。なんとも興味をそそりますね」神は不気味に口元をゆがめた。
その表情に嫌悪感を抱きながら、ソフィアはさらに聞く。
「ではあなたは、どうやって『異能』を手に入れたの」
神は、急に真面目な顔をする。
「それは……話せないな。まあそういうことだ」そう言い、彼は椅子に腰掛ける。そして真也をじろっと見下ろした。
「それにしても『異世界帰りの一般人』とは、実に面白い設定です」神は立ち上がり、腕を組んでうなった。
そしてソフィアの方を向いてニヤリと笑う。「でも残念なことにソフィアさん、『異世界帰りの女子高生探偵・真宵』の方が良かったかもしれませんね」
真也がハッとして立ち上がった瞬間、神が手を前に出す。次の瞬間、ソフィアの胸元のブローチが砕けた。
「ぐっ」ソフィアは苦悶の表情を浮かべる。「な、何を……」ソフィアは慌ててネックレスを確認すると、真ん中についていた青い石が無くなっていた。
「それ、『通信機』だよ」神は自分のブローチを手に取った。「それに触られるといい気がしないんだよね」神の手の上で小さな破片となって光を放つ青く丸い石をみて、「なるほど、それが『異能』の元なんだね」と言うと神は真也の方を向いた。
そしてにやりと笑ってソフィアの方を向いた。彼女のブローチには赤い石がついているだけだった。
「これで連絡手段もない。君たちはここでお別れだ」
その言葉を聞きながらソフィアの目の端には、真也が崩れ落ちる姿が見えた。「真也!」彼女は彼の名を叫び駆け寄ると彼を支えるように抱きしめて、2人は力なく座り込む形になる。
その様子を見ていた真也の心臓が再びバクつく。
(あれ、これまずいやつ?)神は真也の顔を見て満足そうな笑みを見せた。
「ほら、こうすると、もっと面白い」
神の右手の人差し指の爪が長く伸びる。真也はそれを見た時、自分の血が凍っていくのが分かった。
そしてその伸びた鋭い爪の先を神が真也に向けようとしたとき。「だめ!!」真也は咄嵯に立ち上がって叫ぶ。
「ん?」神は不思議そうに声を出す。
「だ、ダメ、ソフィアさんは、傷つけないで」震えながらも必死に真也が告げると、真也の視界の中で神が眉間にシワを寄せ、不機嫌になっていく。(怒らせてるか……?)しかしそれでも構わなかった。真也が神の怒りに恐れを抱いている間にも事態は急速に進行していくのだ。ソフィアの悲鳴が響くかもしれない、真也の命が消えてしまうかもわからない。
しかし真也の言葉を受けて、神は笑った。「いいだろう」神は再び真也の前に立った。真也が安心し、ほっとすると。「ただし」と言って神は続けた。「お前の身体に聞きながら、だけどね」
真也の首筋に向かって、神が指を差し向けた瞬間、世界が割れるような音が鳴り響いた。
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「ぐぅ、はっ、あっ、はあ……!」
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