ビンドポピアス世界線破却同盟①真実を知る覚悟があるなら、今ここで私と共に。失うものはあるかもしれないが、それでも進むべき道はある。闇を超えて、未来をつかめ―。
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使命を受けて
二人の反応を見て神と名乗る人物が続けた。「人間同士の繁殖行為は、実はそれほど難しいことではありません」
(ん?どういう意味だろう)
「え、でもさっきこの人は人間の女性同士とか、人型同士ではできないような言い方をしていたけれど」
と、ソフィアの発言を聞いて神と称する人物は呆れたようにため息をつく。
「いいですかお嬢さん。人間というのは元来、多種の生き物との遺伝子情報の組み合わせにより成り立っている生物なのです。つまりは多様性こそが一番の強みだということですね。確かに人間同士が交わることで遺伝病などのリスクもありますが、逆に言うとそれさえ乗り越えられれば、あとはもう大体同じなのですよ。要は、遺伝子情報をコピーしていけばいいだけの事」神は得意げに解説したが真也は(なるほどわからなくなってきた)と首を捻っている。
そんな様子に気づいていない神は説明を続けた。「それで話を戻すと、交配の実験が繰り返された結果、彼らはある一つの事実を発見しました。それがこの世界で最強の生物の作り方です。すなわち」神はここで間を置いた。そしてソフィアの反応を見ながら言った。「異種間での子供には一切の能力値の差が存在しない。ということでした。これに気付いた人間達の一部は、更にとんでもない行動を取り始めた。それが」
(おい、まさか……!)
と、真也は思わず叫ぶ。「クローンの作成!!」
ソフィアはその言葉にハッとした。「それなら聞いたことがある! 確か、人工的に作り出した生命体に意識を転送して、それをまた肉体に戻して、っていうのを何度も繰り返すとか。最終的には精神体だけが残り、最終的に完全に死んでしまうから誰もやらない方法だと思ってたんだけど」
神は嬉しそうに言った。「おお素晴らしい!! その通り。流石『学びの異世界』の住人といったところか」真也とソフィアは驚いたが、神は気にせず続けた。
「人間たちは考えた。自分たちを神とする新しい生命を作り出そうと」
「いやいやまておかしい。話がおかしい!」と真也が抗議すると「黙れよ小僧」と言われてしまう。
(ひでぇ。これが俺のいた世界だと、本当にあり得ることなんだろうか)
ソフィアが呟く。「……人間ってバカなのかしら」
「そう。その通り」真也は頭を抱える。
「それで、神を作るのに失敗に失敗を重ねていたときに偶然誕生した個体がありました。その個体は他の生命体と違い非常に知的な好奇心を持ち、自分の能力についても理解していたようでした。彼はある時思い付きます。自分から生まれる生命体を、自分で操作できたらどうだろう?」
「ええ……」
神はニヤリと笑うと続けた。「そして彼が生まれた世界はこう言い放ちました『お前たちよりも強い生物が生まれようとしているぞ』とね。さぁ大変だ。すぐに世界中がその事に気がついて、彼のことを調べ上げた。そして彼が誰であるかということも突き止めた」
(こいつ絶対わざと話している。嫌な予感が止まらん。聞きたくない。絶対に変な名前だ)
真也は耳を塞ぎたかったが体が動かずそれも叶わない。
「彼こそ、あなた方の世界では有名でしょう? 史上最強の男にして唯一の『完全適合者』」
(……やっぱりー!!! その名前知ってるぅう)「その人の名まえって……」
「ああ、私です。そう、私が世界で初めて生まれた、完全な意味での『オリジナル人間』であり、そして唯一無二の神となったわけです」
(そういえばあのアニメでも似たような設定があったけど、本当だったのか)
真也は自分の考えが間違っていないことを知ったと同時に、「あれ、じゃあ何でここにいるんだろう。死んだんじゃないの?」と思い、恐る恐る聞いてみた。「まてよ、もしかしてさっきのは夢だな?俺は今寝ているだけなんだろ?」と現実逃避し始めたのをソフィアが制止する。
「残念だけど真也、この世界には魔法があるの」ソフィアは真也の言葉に首を横に振る。「嘘みたいだが本当のことだよ。それに、この男は不死身だからね。君が死んだあとも何百年何千年と存在し続けているんだよ」
「えっ……?!」「そう!私はついに!人間という矮小な生き物の殻を破り、真の生物としての一歩を踏み出したのだ!!」神は両手を上げ高笑いを始める。「その日から人間の肉体を捨て、新たな種族として生まれ変わった!!それが我々『エルフ』の始まりだ!! 人間は我らを見下してきたが、それも終わり。今度からは我々が見下ろす側になるのだよ!」真也は絶望するしかなかった。
自分が転生したのは神様に会ったからではなかった。ましてや異世界にきたかった訳でもなかった。自分は、とんでもない化け物になってしまった。真也は膝から崩れ落ち、その場に座り込んだ。
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