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ビンドポピアス世界線破却同盟①真実を知る覚悟があるなら、今ここで私と共に。失うものはあるかもしれないが、それでも進むべき道はある。闇を超えて、未来をつかめ―。

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王立アカデミーの学生寮

「では君が感じていた苦痛の正体についてはわかりますね?」
彼は黙り込んだ。それは、彼にとって一番聞かれたくなかったことだからだ。彼は俯きつつ小さく、しかし確かに首を振ると言った。
「分からない……。僕はあの時ただ……」
その言葉を聞くと彼はため息混じりに真也へ語りかける。それは呆れというよりは諭すようなものだったが。その顔を見た真也の肩がびくりと震えた。
彼は今まで一度も聞いたことのない声色で喋った。
「君が今までずっと目を逸してきたことを、私が話さなくてはならないとは……まあこれも因果応報という事ですが。
私は最初君の事を助けようとしました。君の持つスキルならばその力を悪用することもないだろうし。なにより君は私と境遇がよく似ていたからです。しかし、君はあまりにも弱すぎた。その心が、力が、あまりにもちっぽけで何も変えられないことに。気付き始めたのです。
そこで考えた末に君を殺すことにしたのです。それが君にとって一番の救いになるだろうと思っていました。ですが君は何も知らないまま殺されていった。
私はそれを聞いて非常に残念に思って、それで…… ふっ、馬鹿らしい。なんですかこれ、全部嘘じゃないですか、全く私らしくもない…… ああもういいや面倒くさい。真也、君はね。私の作った擬似的にオーバードと同じ力を持つことが出来る薬を投与されていたんです。
つまりあなたが感じていた痛みというのはその副作用のようなもので、その苦しみから解放される唯一の方法は薬の服用をやめることだったのですよ。」
真也は自分の体がどんどん冷たくなるような気がしていた。しかし彼の頭の中でその事実を受け入れることが何故かできなかった。いや、本当は分かっているのだ。だがそれでも認めたくない、そう思った。
真也がソフィアの言葉を理解するとともにその思考がどんどんと黒くなっていく。自分は一体なぜここにいるのだろうか、どうして自分がこんな目に遭わなければいけないのだろうか、この痛みは、苦しみは、この気持ちは……全て……作られたもの……? 真也が暗い考えに支配されていく最中、彼の脳内に優しい女性の声が届いた。
(真也さん!)
それに続いて再び優しくも力強い声が頭に響いた。
(真也、大丈夫か。俺の言ってる事が分かるか?)
(レオナ先輩……)
(良かった、まだ正気みたいね)
(え……伊織!? 美咲ちゃんまで……)
(おーっと真也君。ここは病院ですよ。静かにしないと怒られてしまいます)
(あ……)
(まったくもう、世話の焼ける人ですね。真也さん。ソフィア様のお話は本当のことなんですよ? 落ち着いてよく聞いてください)
「お兄様に呼ばれてきたらお母さまがいなくなっててびっくりいたしまして、探し回ってたらお姉さまにここに連れてこられて……。
わたくしもソフィア様にお聞きするまで、真也さんに何が起こっていたのか存じませんでしたけど。真也さん。これはお芝居ではありません。ソフィア様は……ソフィア・サーヴィス様は真也さんのご病気を治して下さった方です。そしてこれから
先、真也さんをお守りしてくれるお医者様なんです!」
「真也は……真也は本当に何も知らなかったんだ。でも今はどうか分からない、きっといつか、真也を傷つける。お願いしますソフィア先生。真也をこれ以上追い詰めないであげてください」
「あらあら、困ったものです。そんなに泣かないの」
2人の涙を見た真也は胸を掻きむしりたくなるほどの罪悪感に襲われる。しかしそれと同時に彼の中にある黒いものが徐々に大きくなっていることも感じられた。それはまるで、この2人を自分の中に取り込みたいと言っているようでもあった。Q これまでのあらすじ?

A 異世界から戻ってきたら妹も一緒に拉致されていて、その犯人は目の前にいる女で、しかも俺はずっと騙され続けていたということが分かった。
そしてその女はこの世で最も信頼を寄せていた師匠で、今や世界で唯一無二の信頼が置ける味方であり、同時にこの世界で自分と一番長い時間を共に過ごしてきた人間だという事実を知り、絶望する。
B 自分の体が自分のものでなくなるような違和感を覚えつつソフィアの話を聞いていたが、彼女の口から告げられる『事実』はあまりに衝撃的で真也の思考が真っ黒に染まっていった。
Q 話のオチと結末に至るプロットを作りなさい?A それは突然のことだった。
それは今まで見たこともないほど美しい光。
「なにこれ」
ソフィアの手元に現れたそれは、小さな卵のような形をしていた。その表面が眩いばかりに輝く。次の瞬間、真也とソフィアの意識はその輝きの中に飲まれた。
**
***
次に目が覚めた時、そこは森の中であった。辺りを見渡すが人工物は一切見えない。見上げた空には月のような大きな丸い球体があった。 
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