ビンドポピアス世界線破却同盟①真実を知る覚悟があるなら、今ここで私と共に。失うものはあるかもしれないが、それでも進むべき道はある。闇を超えて、未来をつかめ―。
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図工王国のドローイング・ウィザード
でも真也君には世界を救う使命があるのであります! この絵の世界からみんなを助けることが出来るのはあなたしかいないのでございます!」
その言葉で真也は確信した。あの時見た不思議な光景は夢なんかではなかった。あれは本当にあった事だったのだろうと。真也の脳裏にある言葉が流れる。
(「僕はね真也。本当はもっとずっと昔から分かってたんだよ。でも目を背けてきたんだ。現実を直視したくないから……。でもね。君が見せてくれた。あの時の君は凄く強くて。カッコよかったよ。もう逃げちゃダメなんだなってわかった気がするんだ……。ありがと……」)
あれは彼の親友、伊織の言葉だったと真也は思い出す。そうだ、俺が目を逸らし続け、向き合おうとしなかったせいで彼は死んでしまったのだ。彼はもう目を逸らすのをやめたのだ。ならば俺がやるしかないじゃないか。彼は覚悟を決めて言った。
「僕、行きます」
そう言い切った彼に女はほっとした顔を浮かべたがすぐに引き締め直すと。手を差し出した。
「分かりました。ならこれをお持ちください。きっとあなたの力になるでございましょう」
彼は女の手のひらを見るとそこに乗っていたものをつまみ上げる。
それは一枚のカードであった。そこには何かの図形が描かれていた。彼は女を見上げ、質問する。「これって何なんですか? 地図?」
しかし彼はその質問に対して首を振った。これはそんな簡単なものではないのだと。女は説明する。これは一種の通信手段であるという事。またこの場所に帰ってくるためのものでもあるという事、この魔法具を持っている間は自分の精神体がその座標上に浮かんでいるために迷子になることは無いということなどを彼は理解することは出来なかったが。とにかく大事なものだということは分かったようだ。
女は彼をしっかりと抱きしめると言った。
「いいですか真也君。必ずここに戻ってきてください。私と、そしてあなたの友達のために」
その瞬間病室の中に光が生まれる。彼の手に握られたそのカードを中心に生まれる眩いばかりの光は二人の視界を奪った。真也は何が何だか分からなかったがその温かい気持ちに思わず涙していた。しかしそれと同時に意識を失ったのだった。彼が次に目が覚めると見覚えのある真っ白な天井が見えてきた。その事実に気付いた彼は驚きながらもゆっくりと体を起こそうとするがその途端鋭い痛みが腹部を襲い顔をしかめた。そして彼の耳に声が届く。聞き慣れたようなそうでもないような、少し高めの少年の声だった。
「あぁーっ!! 真也さんやっと起きられましたか!!」
その声に真也が反応するとそこには頭に白いリボンをつけた女の子がいた。真也がぼんやりとその少女を見ながら「美咲……さん」と言うと。
「真也さん! まだ動かないでくださいまし! 真也さんの体は大変なことになっているんですよ!? お兄様が大慌てで医者を呼びに行って、今は検査中ですわ」
そう言うと彼女は慌てて真也を再びベッドに寝かせた。そして安心したように息をつく。真也はそれを聞き申し訳ないなと思いつつも先ほどまでのことを振り返っていた。
(そっか、俺また死にかけたのか……)
(今回はかなり危なかったですね。もうすぐお目覚めになるだろうとのことでしたが。間に合って良かったです)
突然真横から聞こえる女性らしき声で真也は驚いた。
彼は声が聞こえた方向を向いたつもりだったのだがその先に見えたものは真也の横腹でその様子から自分がどうやら半身を横にして座っている状態らしいことが察せられた。そのことを確認しながら視線を上げるとそこには見覚えのある人物が立っていた。
「ソフィア……さん?」
彼女の名前を呼んでみると彼女はその美しいかんばせに笑顔を浮かべて「はい」と一言だけ返事をした。
(この方が……?)
(はい、僕のお師匠様なんだ)
それを聞くと同時に彼女はこちらに向かって歩き始め、そして真也の枕元に立った。あの黒髪のエルフは
「真也君。君は私の自慢の弟子ですよ。私の最後の教えをここまで守ってくれるとは思いませんでした。
本当によく頑張りましたね」
その言葉を聞いた真也は目尻に水を感じたが。ぐっと堪える。泣くわけにはいかないと彼は思ったからだ。
その様子を見ながら彼女も思うところがあったのか真也が口を開くよりも前に言葉を発した。
「君は今の状況が分かっていますね? あの世界での君の体験について、君自身のことを含めて話しなさい」
彼女に言われた通りに彼はあの不思議な空間での出来事を話した。女からもらったカードによって自分がこの世界に戻ってきた事、そして自分の体に異常があったことを。彼は話すたびに体の奥がずきりと痛む感覚があったが。全て話し終えるまで我慢し続けた。
それを一通り聞くとソフィアは真也の顔を見ながら真剣な表情で問うた。
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