ビンドポピアス世界線破却同盟①真実を知る覚悟があるなら、今ここで私と共に。失うものはあるかもしれないが、それでも進むべき道はある。闇を超えて、未来をつかめ―。
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転生してきた世界で
大きな戦いが終わって一年がたった。大勢が死んだ。超兵器が飛び交い、文字通り大陸が四分五裂する凄まじい争いだった。図工王国はかつて算数大陸同盟に加盟していたが、技術家庭科国はIT合衆国と軍事同盟を結んで算数大陸同盟から脱退し、図工王国は美術人民共和国との国境争いを長年続けたが、ついに苦渋の講和を決断した。
黒エルフの家庭教師は、図工王国の技術力の低下が数学教育の遅れに繋がっていると真也に説明した。真也は家庭教師の誘いを断り、自分は魔法をやりたいと答えた。しかし、家庭教師は真也を図工王国のドローイング・ウィザードとして見込んでおり、彼を育てることを約束した。真也は喜び、両親に感謝の言葉を交わし、新たな未来に向けて歩き出した。
図工王国首都メルカトルの王立アカデミー学生寮で、真也は自分の過去を思い出していた。「転生してから、この世界で孤児として暮らしているが、実は本当の両親や姉貴もいるらしい。でも、この世界ではドローイング・ウィザードとして人様の世界線をデザインしアドバイスすることが仕事で、親父は子供を幸せにするために尽力するよう教えてくれた。」
しかし、孤児たちの人生について考えるうちに、自分自身の意思で生きたいと思うようになり、魔法の使い方やドローイング・ウィザードの技術を学ぶためにアカデミーに入学した。
「でも、以前に守れなかった二人の幸せを忘れることはできず、いつか学んだことを彼らのために使いたいと思う。」今日も、自分らしく生きることを誓いながら、新しい一日を迎える。
「頼む……」2週間前、真也が意識を失ってから。彼を図工王国へスカウトした者は、実は美術人民共和国軍の二重スパイだった。真也の数学の才能は算数大陸にとって有用であったが、IT合衆国にとっては有害な資質だった。そこで彼らは金と女とIT合衆国の移住許可証を使い、エリートを買収し、真也を図工王国へ招聘したのだ。目を覚ました後、真也の記憶を消して国元へ返すつもりだったが、真也はそれを望まず、彼の記憶は保持されたまま、今は魔法による洗脳を受けていた。
しかしそんな事情を知らない人々は、その少年のことを噂していた。彼は誰々さんが誘拐しようとしたところを逃げ出したとか、そんな話を聞いたりしていた。しかし、その人はどうなったんだろうと思ったりするが、確かめようとする者はいなかった。
そんなある日、一人の女性が病院を訪ねてきた。彼女は中世の修道女のような格好をしていた。病室の前に立ち、静かにノックをした。中からの返事を待って、彼女は静かにその部屋に入っていった。真也を見つけると、優しく声をかけた。
「真也君、具合はいかがですか?」
真也は驚きながら、「え……だれ……? どうして……僕のこと知ってるんですか……!?」と尋ねた。その反応に驚いた彼女だが、落ち着いて話しかける。すると、ベッドの上に座って怯えた表情をしている少年は落ち着いたようであった。
「そう怖がらないでください」
「ごめんなさい」
「大丈夫ですよ。それで、お話があるのですが」
「はい」
「私は神に仕えているものです。そして、真也君にとても重要な使命を与えに来たのであります」
真也は疑問を持った目をして、「しめい」と言葉を復唱した。しかし、その言葉は彼女にとっても予想外のもので、慌てていた。しかし真也の瞳を見て決意を決めたのか真剣な眼差しになる。そして彼女は真也に向かって言った。
「実は私と一緒にある場所に来ていただきたいのです」
彼女が言うにはこうだ。あるところにとある少女がいる。彼女は自分が何のために存在しているかを知らず、世界に対して何も期待もせず、毎日を過ごしていた。
そこに現れたのが彼女の師にあたる人物で。彼もまた世界の成り立ちやなぜ自分が生まれてきたのかということについて理解していなかったのであるが。彼は自分の研究に没頭することにより日々を忘れようとしていた。しかしある時彼はあることに気付き始める。自分の弟子である彼女に自分以外の人間との触れ合いによって心が芽生え始めていることに。このままでは彼女はやがて壊れてしまう。
だからこそ自分がそばにいなくても、誰か信頼できるものと共に過ごす時間が必要なのだ。それが今だと彼の勘は告げていたのだった。
「その少女は……一体……なんなんですか……それに僕が行って……どうすれば良いんですか……?」
その問いに彼女は答えられなかった。彼女自身、自分がどこに行くべきかは分からないのだから。だが、それでも自分の信じたものに従いたかったのであろう。彼女は意を決して言う。
「私の師匠はその場所に真也君のことを導いてくださるでしょう。その道行はきっと苦しいものですし辛いことでしょう。
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