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ドリトル先生と山椒魚

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第五幕その七

「古典の文章は難しいのに」
「源氏物語は英訳の方がすらすら読めるみたいだね」
「今の日本人でもね」
「ちなみに僕はラテン語訳を読んだことがあるよ」
 源氏物語のというのです。
「そうもしたよ」
「そっちの方が簡単だね」
「実はね」
「それ凄いよ、ただね」 
 それでもとです、また一呼吸置いてお話しました。
「先生古典での恋愛は」
「素晴らしいよ、日本の古典で書かれている恋愛はね」
 先生は目を輝かせて答えました。
「あの時代に現代にも負けていない素晴らしい心理描写といいね」
「よく読んでるね」
「自然描写もいいしね、繊細でかつ時として大胆で」
「いいんだね」
「そう思うよ」
 心から言います。
「僕は大好きだよ」
「うん、それはいいことだよ」
「褒めてくれて何よりだよ」
「けれどご自身はどうかな」
「この外見でスポーツは全く駄目なんだよ」
 だからだというのです。
「風流とか優雅とかね」
「そうしたものは無縁なんだ」
「僕は源氏の君でも和歌の作者さん達でもないよ」
「百人一首とか和歌集のかな」
「和歌も好きで詠ませてもらってるけれど」
 それでもというのです。
「あんな風にはだよ」
「出来ないんだね」
「だからね」
 それでというのです。
「僕はね」
「もてないんだね」
「産まれてから女性に縁がないし」 
 鱒二にもこう言うのでした。
「それに誰かとお付き合いしたり結婚しなくても」
「いいんだ」
「皆がいてくれて」
 動物の皆をにこりとして見て鱒二にお話します。
「トミーがいて王子がいて」
「お友達がだね」
「今は安定したお仕事にいいお家に日本という素晴らしい国に住んでいるから」
「不満はないんだ」
「ないよ」
 全くという口調での言葉でした。
「それこそね」
「だから恋愛はなんだ」
「これ以上幸せな状況はないからね」  
 だからだというのです。
「僕は恋愛や結婚はなくてもいいよ」
「無欲だね」
「そうかな」
「そうだよ、本当に」 
 こう先生に言うのでした。
「呆れる位にね」
「無欲もいいことだね」
「いいことでも先生はもっと欲を出してもだよ」
 そうしてもというのです。
「いいよ」
「恋愛や結婚にかな」
「そうしたらどうかな」
「こんなにもてないのに?」 
 やっぱりこう言う先生でした。
「本当に僕は産まれてからだよ」
「女の人にもてないんだね」
「女の人のお友達は沢山いてくれているけれど」
 子供の頃からというのです。 
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