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星河の覇皇

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第八十三部第四章 戦線崩壊その十八

「まだだ」
「まだですか」
「仕掛けるのは」
「それはですか」
「まだだというのですか」
「焦ってはならない、焦ればだ」
 その時はというのだ。
「しくじる、だからだ」
「それで、ですね」
「今は仕掛けないですか」
「通常艦艇の艦隊は動かさない」
「主力は」
「敵はまだ疲労と憔悴がピークになっていない」 
 だからだというのだ。
「まだ動きに余力がある」
「そういえば魚雷への迎撃の速度が遅くなっていますね」
「徐々にそうなってきています」
「それは疲労が蓄積している証拠」
「そしてその疲労がですか」
「焦燥もだ」
 これもというのだ。
「まだだ」
「足りないですか」
「左様ですか」
「この状況では」
「まだ、ですか」
「そうだ、あと少し待ってだ」
 そしてというのだ。
「仕掛けるぞ」
「わかりました」
「それではですね」
「まだ待ちますね」
「時が来るのを」
「私は料理は知らないが」 
 実際に料理を作ったことはこれまで生きてきてないと言っていい、アッディーンは幼年学校に入るまで母の料理や外の食堂、店で買ったものを食べてきた。そして幼年学校つまり軍に入ってからは日々そこの料理を食べてきた。休日もほぼ外食であった。
 だから料理は知らない、だがそれでもなのだ。
「料理も焦ってはならないと言うな」
「俗にそう言われていますね」
「連合の漫画や小説ではよく言っているとか」
「あちらでは料理が創作の一つのジャンルになっているそうで」
「様々な料理ものがあるとか」
「連合の料理はサハラとは違う」 
 全く、という言葉だった。
「様々な国で様々な料理が存在している」
「調味料も豊富で」
「食材もそうであって」
「実に色々な料理がある」
「そう言われていますね」
「あの国はそうですね」
「そうだ、連合の中にある様々な国の民族や文化の料理が食べられる」
 このことは連合に行ってその目で知ったことだ、味わってもみたがアッディーンは美食家でないのでそれで料理漫画や小説まで考えは至っていない。
「あちらでもよく言われていると思う」
「料理は焦るな」
「焦るとしくじる」
「その様にですね」
「そしてですね」
「我々もですね」
「戦争においてはな、遅れては駄目だが」
 これは論外だが、というのだ。
「しかしだ」
「焦りも禁物で」
「今は、ですね」
「時期を待つ」
「そうすべきですね」
「動かざること山の如しというが」
 アッディーンは今度はこの言葉を出した。 
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